第109話 孕み袋
商品名 ベンクト101cm 15kg 4歳6ヶ月
致命的なものがそこにありました。
本当に幼い頃、私は外にいた。青い空があって、白い太陽があって、緑の植物が茂る世界。
4歳でその世界は壊れたのです。
幼い私は目の前で母を犯され、そのまま消息を知ることもなく目の前から消えた。人であり人ではなくなる。奴隷でした。
泣いて、足掻いて、吐いて、騒いで、でも誰も助けてはくれません。
逃げ場などなく、首輪をつけられ、檻の中へと投獄されて、どうすればいいぼかわからず、とても辛かったんです。
労働くらいしか幼い私には奴隷がすることが思いつきませんでした。死ぬまで働き死ぬ。そんなのは嫌だとずっと考えていましたが....その程度ならまだマシなんて想像もできませんでしたから。
そしてしばらく数日、私は購入された。
大きめの牢獄で、石造の地面の部屋、だがそれ以上に気になるのは鼻を捻じ曲げそうな獣臭であった。
「なに......なんの......」
私が震えながら言う中で、それを跳ね除けるかのように残酷に、牢獄に化け物が混入しました。
「ひッ......ゴブリン......!?」
3匹ほどのゴブリンが牢獄に入ってきたんです。
ゴブリンは奇声をあげながら鼻をヒクヒクさせる。私は恐怖に慄きながらただ震えて黙っていると、ゴブリン達は一斉に私の元に走り出すのであった。
破瓜の痛み、幼い少女が知ってはいけない感覚で、穴という穴が性器として扱われることをベンクトは知らず、臭いで悶絶して、服を破られ、失禁にゴブリンは興奮し、そしてそれを見た主人は笑っている。
知らない、知りたくない、知ったらいけない。感覚は残酷にも過敏に触れるのだ。
”悪趣味“という言葉がこれほど似合うことはないだろう。
そしてゴブリンたちは犯すのに飽きると、持っていた棍棒でベンクトを殴り始める。
「ぎゃ...っ...やめ...ぁあ!! 痛....ぁ....きゃあぁ....ぁあ!!」
獲物を痛めつけ笑う。殴られたところは青く腫れ上がり、片目は潰れた。表皮を削り、そのまま殴られ続け数十分、ベンクトは悲鳴をあげようにも喉や肺を潰され、そのまま息絶える———
はずだった。
「え......ぁ......?」
目を開けた時、ベンクトの傷はすっかり治っていた。潰れたはずの視界が写り、腕も足も問題なく動く、何度もポンポンのと自身を叩き、生きていることを実感する。生き残って喜ぶ.....とはならなかった。それこそが、永遠に続く地獄の第一歩だったから。
その日から更に地獄は続いた。玩具のように犯され、飽きたら痛めつけられ、死ぬ直前に勝手に[超回復]してしまう。
ある時は尿をかけられ、またある時は排泄物を口に入れられ、またある時は爪を剥がされ。目玉をほじくられ。
ベンクトはゴブリンの玩具として非常に優秀であった。
何度も犯せる。何度も遊べる、壊しても直る。いろんな方法で、好きなように好きな時に使える。彼らにとってその牢獄は小さな天国で、彼女にとってその牢獄は巨大な地獄だった。
[超再生]をしていく中で身体が回復する影響で成長し始め、ベンクトは5歳にも関わらず成人した女性ほどの肉体年齢になっていた。
そしてある日、吐き気や胸痛、唾液が流れている。
悪阻である。
ゴブリンの子供を孕んだ。
お腹の中にいるのはベンクトを苦しめるもの達の子だ。その邪悪がいることを知ったのは、主人に言われてからだ。
その言葉を聞いた時、絶望と共に錯乱した。泣き叫んで、笑って、夢と信じて、見た目は大人なのに精神が子供だからだろうか? それが現実だと受け入れようとはしなかった、するわけにはいかなかった。
数ヶ月、腹の子供は蠢いている。もがいて、そして.....出産した。
ナイフで内側から突き刺され、骨を砕かれるかのような痛み。人間とは違いそれを5匹分、連続で体験することになった。
飽きて欲しい。もうやめてほしい。1年もすれば主人も飽きるだろう、売ってもいい。これ以上の地獄があるわけない。だからどうか.....殺してくれ。
悲鳴をあげればあげるほど主人は喜んだ。そこに意味はない。恨みがあるわけでもなく。ただ欲望に忠実だから。
出産をするたびにベンクトを玩具として使うゴブリンは増えていく。まるで膿み続ける蛆虫のように。ずっと体を蝕み続ける。
この一生は、きっと永遠に続く。そう思っていたある日、彼は救ってくれた。
「ほお? 実に悪趣味な空間だな、ドブのように腐ったものが染み付いているようです」
レルフェンス・オルスター、そこに彼はいた。
ゴブリン達は牢獄に入ったレルフェンスを襲うが、その瞬間、結晶の剣山がゴブリン達を血の霧へと変えた。
「貴方。喋れますか?」
「えと......ぁ.....はい.....」
ぼそっと呟くように静かな声でベンクトが答えると、レルフェンスは裸のベンクトに自身のコートを着せると後ろから声を荒げた主人が現れる。
「貴様貴様貴様あぁああああ!! タダで済むと思うなよ....絶対に殺す!! たとえどこに逃げても———っ」
その瞬間、主人はレルフェンスの剣で首を刺され絶命した。
「もう大丈夫ですよ、君を苦しめるものは皆死んだ、貴方は自由なのです」
レルフェンスはそう告げると銀貨の入った袋を置くとそのまま立ち去ろうとする。
「それでしばらくは生きていけます。近くの村を目指しなさい。よそ者にも優しく———」
その時、ベンクトはレルフェンスの袖を掴んでいた。それは寂しさ。自身を助けてくれたその人を、彼女は離したいと思えなかった。
「お願い.......します.......置い....て....かないで...」
その言葉を続けるとともに溢れそうになる涙と震える唇。口にするのがやっとで、それを見たレルフェンスは微笑む。
「私についていくのは地獄への道も同義です。それでも良いのですか?」
「いいです.....お願いします.....」
「おそらく救われない道です、君の人生を棒に振ることになるだろう」
「.....助けて....くだ.....さ....い.....」
ベンクトは必死に涙を抑え、なんとか口にする。それを見たレルフェンスはベンクトを軽く抱きしめると言う。
「今までよく、耐えましたね....辛かったでしょう。幾らでも泣いてください。私は貴方の味方ですから」
今まで抑えていた涙を堰き止めることなどできなかった。その涙はボロボロと自分自身で感じるほど暖かく、頬を伝い続けた。
私は確かに精神が幼い、幼い少女にすぎないです。だけどこの人にならどんな状況だろうと、私は信じられると。