第101話 運醒
すっかり秋の季節だ。
紅葉が落ちる山道、そこは人などいない。
人工物など似合わない風景の中に一つだけ、石造りの墓標が立っていた。
「......お前はここにいると思っていた.....レルフェンス」
マルクスの声かけに反応してレルフェンスはこちらを向くと不敵に笑う。
「逃げ出してきたのかと思いました、だがそれは違うようだ、それは人質というわけかい?」
「.....いや、事情があって同行している.....」
マルクスの言葉を聞いてレルフェンスは少し疑いつつもマルクスのその目をみると首を縦に振る。
「わかりました、マルクスが言うということはそういうことなのだろう? よろしくと言っておきましょう」
予想以上にあっさりと話が進み困惑しつつもリルートは話を進めようと話を聞く。
「状況は聞いています。貴方たちの目的は、何になるんですか? 魔族の殲滅なら冒険者としてでも良かったはずです、王都のことは確かに———」
「王都に蔓延っている魔族の残党、ヴォルガーもまた魔族の1人だ。魔族であったということくらい国の力で本来ならすぐにわかるはずだ、だがわからない理由を、君はどう考える?」
「......裏で魔族が操っていると?」
「まあ簡単に言えばそうなるだろう」
レルフェンスは数十枚の束になった紙をリルートに投げ渡し、リルートはそれを確認しようと開くと、驚愕する。
「魔族の......復活......?」
「そう、ルックスパーティにより魔族は絶滅直前まで持ち越した。だが魔族はいまだに生き残っている。その理由は、魔族を復活させることが目的だからだ」
レルフェンスの言葉には一切の淀みがなく、それが嘘を言っているわけではないことだとはわかる。しかし———
「流石に話が飛躍しすぎでは.....?」
リルートはその後のページも読み進めていくが頭を抱える。
「魔族を生物兵器として甦らせる....?確かに魔族の減った影響で人同士の争いが増えたとは聞きます.......でもそれが関連付いていたとして....方法もわからない、そんなことを信じろなんて.....」
「確かに信じられないだろう、だが、私達はこれを知ることになった、フォルトナのおかげでな」
「フォルトナ.....? どうして彼の名前が.....」
その名前が出たことにリルートは思わず口が出る。レルフェンスは少し微笑むと俯き、そして答える。
「あいつはスラム街の出身だった。日々を生きることすら難しいそこで、あいつは幸か不幸か似ていた」
「似ていた.....?」
「リアスタ国の王子にその姿がひどく似ていたそうだ。それで影武者としてだが拾われ、城で面倒をみられることになった、王子の数少ない親友でもあり、同時にいざという時に助ける存在になるはずだった。だが———」
「———知ってしまった。偶然にすぎないだろう。だが王や一部の貴族たちが話していることを知った。そしてその夜、影武者にフォルトナは.....魔族に襲われた.....はずだった」
「.......恩恵を考えると......まさか.....」
「そう、フォルトナではなく王子の方が命を落とした。[幸運]にも、だから彼は生き残った」
「彼はその時に城を抜け出した。そしてその時に私はその話を知ったんだ、彼がまだ10裁ごろで、国に私怨もあって、私は彼に協力し、冒険者の追跡もあったが、なんとか躱すことができた」
「それで.....あなた達は真相を知ったんですね......でも....どうして直接公表するなどしなかったんですか.....正面から堂々とやる方法だって....!」
「国相手に少人数で何ができる? せいぜい声を上げたところで意味がない。国自体に不平や不満があったならまだしも、そのような民衆がいるわけでもない、これが現実だからだ」
「......わかりました.....レルフェンスさんの話を....信じるか.....少し考えさせてください.....」
「それもそうだろう、いくらでも考えてもらおうか」
そうしてレルフェンス、マルクスは少し離れた野営地で、リルート達は馬車の中で話し合いが起きていた。
「確かにリルートの言ってたことと一致してるけど......それって本当に確証あるのよね?」
ラティナが疑問をリルートにぶつけるとリルートは悩んだ表情で答える。
「.....確かに理屈は通ってる.....だけど.....」
国全体を相手にすることも覚悟している。そして消えかけたあの記憶からして、この選択は間違ってはいないはずだ。問題は周りをどう納得させるかだろう。
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