表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/4

呪縛

 晴れた夏の日、見上げた空に雲がひとつふたつ、と泳いでいて、私が見上げるときにはいつも、お日様はその雲の陰に隠れていた。

 明るい舗装路に影は出来ず、沈澱した粉塵のような暑さがゆらゆらと揺れながら続き、やはり太陽は私に姿を見せようとはしない。


 空ばかりを見ていると、私は私の存在を忘れてしまいそうになる。いつも、何度も世界に私の姿を見失い、その度に此処に居る私が奇妙に虐げられる。

 何者にもなれぬと嘆いてみても、私はやはり何者でもない私であって、否が応でも存在し続ける居場所がきりきりと胸を締め付ける。

 いっそのこと私がいなければよかった。存在ごと無いものになり、ゆえに私の消失に誰も気が付かない。そんなひとひらの風になって、例えば一羽のさえずりに身を砕かれ、私の残した小さな水波や私の落としたしわがれた枯葉すらも、数多の他者に踏付けられ、いぬ者に私はなりたい。


 それでも私たちは出会ってしまった。

 もはや私は消え入ることがないし、あなたも朽ちることがない。二人で見た夜景は煌々としながら私にあなたを思い出させ、あなたはたった一枚のパーカーに私を感じるだろう。

 過呼吸のたびに吐いた言葉、それに応えてかけた言葉。思い出さずともすっかり積もり溜まって、もう消化されることはない。

 私たちは合わないもの同士。合わないのに深くまで絡み合ったから、後戻りしてもう、元には戻れない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ