意味が分かるとゾクッとする話:マンションで死。
「本当にこんだけ駅に近くて、部屋もこんなにあって、オートロック付きでこんなに安いんですか?」
「…はい」
「もしかして…"事故物件”ってヤツですか?」
「…はい、先日、一家全員がそこで首吊り自殺しまして」
怯える俺を見て、不動産屋が言った。
「一度、見に行ってみませんか?」
不動産屋の車に乗って、俺はそのマンションにやって来た。
不動産屋は管理人に話を交わすと、その部屋に通された。
部屋は申し分なく素晴らしい部屋だった。
これでこの値段は安い。
俺は思わず天を仰いだ。
「…⁉︎」
「どうしました?」
「…他の部屋、見させてもらっていいですか?」
その部屋の、ありとあらゆる場所を見させてもらった。
自殺があった部屋、キッチン、トイレ、風呂場。
「…他の空き部屋、見させてもらえませんか?」
無理を言ってるかもしれないが、どうしても確認したかった。
下の階にある部屋がOKという事だったので、不動産屋とその部屋を訪れた。
またその部屋の部屋という部屋をチェックして言った。
「…辞めておきます」
〈解説〉
屋内で首吊り自殺する場合、ロープ、飛び降りる高いテーブルや椅子の他にもう一つ、絶対に欠かせない物が一つある。
それはロープをかける場所だ。
皆さんも部屋の天井を見て欲しい。ロープを引っ掛ける物があるだろうか?
それは50キロ以上の人間がぶら下がっても平気な物だろうか?
この客がチェックした部屋、全部にロープを引っ掛けられるフックのような物が天井に取り付けてあった。
…つまり、このマンションは自殺してもいい…いや、自殺した死体を見たい人物が設計している、恐ろしいマンションなのである。
…むしろ事故物件として紹介されれば、恐怖に取り憑かれて自殺した死体が見られる…まさに呪いのマンション…なのかもしれません。