幕間 先輩女官の独りごと
一日後れましたが、出版記念のSSを投稿させていただきます。
現在Twitter「後宮の女官占い師は心を読んで謎を解く」公式アカウント(@koukyuunyokan)にて、抽選で作者である夢見里と絵師ボダックス様のサイン色紙があたる「感想ツイート投稿キャンペーン」を実施しています!
期間は9月10日までです!
こんな機会はめったにないので、よろしければチェックしてください!
うちの職場に易妙って、姑娘がいるんだけどさ。
ふつうの姑娘なんだけど、なんだかまわりがちょっとふつうじゃないのよね。
え、私はだれかって? やだな、私は黄黄よ。えっ、ほんとに誰か、わからないの? ああ、じゃあ、易妙の先輩女官っていえば、わかるかな。
なんだったけ。
そうそう、妙の話よ。
今年の春ごろ、後宮にきたばっかりの女官でね。
猫みたいな髪型で猫みたいな目をした姑娘で、なまえもほら、猫みたいでしょ?
ほんとによく働くんだけど、昼やすみになるといなくなるのよ。なにしてるんだろとおもってたら、後宮の大通りで占いなんかやってるらしくって。それがずいぶんと人気で、上級妃妾までずらりとならんでて、びっくりしちゃった。
でも、もっと、びっくりしたのは累神様と一緒に町を歩いてたことよ。
だって、あの第一皇子の累神様よ?
累神様って、ほんとうに素敵よね。線が細いというか、がっちりしているわけじゃないのに、男らしい格好よさがあって。モテるのわかるなぁ。女遊びが激しいとかいろいろいわれてるけど、あんだけ格好よかったらしょうがないわよね。私だって、累神様にだったら遊ばれたぁい。
そんなわけで、累神様の取りまきは、華やかな妃ばっかりなワケ。それなのに、妙と一緒にいるなんて……ねぇ?
だって、妙はふつうの姑娘よ?
元気いっぱいで、ずばずば物ごとをいって、あ、食欲だけはふつうじゃないケド。
まさかねぇとおもってたんだけど、そのあと、変なことがあってさ。おつかいにいってたときに錦珠様と逢ったの。
え、錦珠様、知らないの?
第二皇子よ。花魄みたいにきれいな男のひとでね。一緒の空気を吸ってるだけで、心がきれいになりそうな。そうそう、植物みたいなひとよ。
そんな錦珠様が妙に用事があるからって、連れていっちゃってさ。妙、そのとき、朝帰りだったのよね。
ね、気になるわよね?
もう、私、しばらく、なんにも手につかなくなっちゃってさ。
後になってから知ったんだけど、妙って累神様お抱えの占い師だったんだって。それで謎が解けたわ。累神様も錦珠様も、占い師としての妙に依頼があったのね。
そうよね。妙だもんね。
恋とか、愛とか。どうみても、縁遠いもんなぁ。
「花よりだんご」ってまさに妙のためにある諺だもんね。
あ、噂をすれば、妙だ。
屋台でなんか、食べてるみたい。
よし、声をかけていってやるか。先輩として、たまには奢ってあげようかな。って、……え? 妙のとなりにいるの、もしかしなくても累神様じゃない?
「ほら、落とさないように食えよ、妙」
「ふっふっ、そんなへまはしませんよ。海老チリ包子なんて、めったに食べられませんからね。これを落とすくらいだったら、死にます」
「いや、死ぬなよ」
ず、ずいぶんとなかよさそうね?
びっくりして、とっさに物陰に隠れちゃったじゃない。べ、べつに隠れることないんだけどね!
「うっまあっ! 辛さが程よくて、海老のあまみを絶妙にひきたててくれていますよ! こ、これはクセになっちゃいます!」
「はは、ほんとにあんたはうまそうに食ってくれるよな」
なんか、累神様の眼差しが熱っぽいっていうか。やけにやさしくない? 妃と一緒にいる時の累神様はなんどもみたことがあるけど、あんなに柔らかい眼はしてなかったような。
「だって、ほんとにおいしいんですから」
「そうか。それはよかったな」
わわっ、累神様が妙の頭をぽんぽん、ってなでてる! 占い師として仕事でつきあってるだけだったら、あんなこと、しなくない?
「妙、頬についてるぞ」
「えっ、どこですか?」
「そっちだよ。ほら、取ってやるから、じっとしてろよ」
え、えっ、えぇっ! 累神様が妙の頬についたパンくずをつまんで……舐めた。えっ、あれって! ちょっ、ちょっとした、キ、接吻じゃない?
…………。
……。
こ、これは……今後もしっかりと見張っておかないと!
それじゃあね!
お読みいただき、ありがとうございます。
読者様への感謝をこめて、ちょっと違った視点(先輩女官)からみた妙と累神の関係を書いてみました!お楽しみいただけたでしょうか?
今後とも後宮の女官占い師をよろしくお願いいたします!