ひまわりが攻めてきた
『急襲! 8時の方角から180体のひまわり、上陸してきます!』
「……どうする? 三上」
「ああ……冬木。ハムスターだ。迎撃用ハムスター、発進」
22XX年、人類はひまわりの脅威に侵されていた。
巨大化し、自律歩行が可能となったひまわりらがどこから来るのか、なぜそうなったのかを知る者はいない。
晴れた日にはいつも現れる。必ず西の海を越えて来る。
『だめです! ひまわりはまだ元気です!
タネがまだないためハムスターたちが急激に興味を失っています!』
「どうする、三上?」
「そうだな、冬木……。仕方がない」
『ああっ……! ハムスターの突進が破られました!』
「うろたえるな伊月。……どうする、三上?」
「そうだな、冬木……。仕方がない。どうしようもなくお手上げだ」
ひまわりたちは本土に上陸すると、行進を続けた。ビルを薙ぎ倒し、電線を引きちぎり。人類は自然の脅威には勝てないというのだろうか。
絶望し泣き叫ぶ子供を心配するように、ひよこのように小さなひまわりが、その頭を撫でて行った。
「うおっ……!? み、三上!」
「ああ……、ふ、冬木」
モニターを見つめる二人の司令官は絶望した。180体のひまわりの行列のさらに後ろから、超大型のひまわりがその姿を現したのだ。他のひまわりの10倍は大きさがある。しかし大きなのは花の部分だけで、茎は太いがとても短く、つまりはとても不格好であった。
超大型ひまわりの黄色い舌状花に囲まれたおおきな黒い部分がだんだんと赤く変わって行く。熱波でも放つのだろうかと思われた。しかしみんなに注目されて、ただ照れているだけのようであった。
日の出とともに出現したひまわりの群れは、正午になると揃って動きを止めた。すべてのひまわりが真上を向く。首がちぎれそうな角度で太陽を見つめている。
やがて太陽が西へ動き出すと、ひまわりたちも少しずつ、やって来たほうへと振り返り、戻りはじめる。
日が暮れはじめた。
日の沈む方角へ、海へと帰って行こうとするひまわりたちを、ハムスター4匹が追いかけた。
『ハムスター、暴走しました!』
「どう見る? 三上」
「ああ……。タネ、だな。タネがつき始めたんだ……!」
4匹のハムスターが襲いかかり、ひまわりの黄色い舌状花をむんずと掴み、次々と真ん中に産まれたタネを奪って行く。
それはさながら大型の草食獣を貪り喰らう、狂獣の晩餐のごとき光景であった。
「勝ったな、三上」
「ああ……。人類の勝利だ」
コリコリ……。