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第三話  どうしよう

「はい、紅茶」


「サンキュ」


 ペネロペはもくもくと湯気の漂う紅茶をオーレッドに差し出した。ついでにとテーブルにはクッキーも。公爵邸自慢のコックが作った世界に一つの逸品だ。


「で、本当に何の用よ」


 ペネロペはオーレッドの机を挟んで向こうにあるソファーにどさりと腰をかける。


「何もねーって。暇なんだよ」


「ふーん。あ、そう」


 ペネロペは本当に用がないんかいと内心でツッコミながら、バター味の大変美味しいクッキーを頬張った。対して、オーレッドは紅茶をズゾゾ・・・と行儀悪く吸っている。


「そういやお前さぁ、建国祭初日の皇帝陛下主催のパーティー、何着てくか決まったりしたのか?」


「建国祭?」


 ペネロペは首を傾げた。


「お前、皇太子殿下と踊るって言ってたじゃねーか。その時のドレスだよ。皇太子殿下とお揃いにするんだろ?」


 ペネロペは思わずフリーズした。オーレッドはその様子にキョトンとしている。が、ペネロペの目にはそんなことは映ってはいなかった。


ーーヤバい・・・、すっかり忘れてた・・・


 建国祭


 エルサティア帝国の建国記念日から一週間程開かれる帝国一のお祭りだ。他国からも多くの要人が訪れ、貴族は連日のパーティー、勿論市井の人々も各々に祝ったりと、帝国が一番盛り上がる日に違いない。


 そして、やはり一番盛り上がるのは先程オーレッドが言っていた初日に開かれる皇帝主催のパーティーだ。貴族なら誰でも入場が許されている。特に、高位貴族となってはパーティー参加は義務のようなものだ。


 つまり、名門フィードレッド公爵家の長女ペネロペには参加しない権利とやらが与えられていないのだ。それも、皇太子の婚約者となれば尚更だろう。


 しかし、ペネロペはどうしても参加したくない。


 何故かといえば、会場に皇帝が入場すると、パーティーの開始の合図として皇族や臣下から選ばれた二人の男女ペアがダンスを皆の前で踊るのだが、今回の男女ペアに選ばれたのは当然のようにペネロペとレイオン皇太子だったのだ。


ーーあぁぁ、最悪すぎるわ!!殿下とはなるべく関わりたくないのに!!


 ペネロペはループする度に十四歳で目を覚ますが、それが何月かは決まっていなかった。


 建国記念日は五月。五回目の人生まではだいたい七月頃に目を覚ましていたからレイオンと始めて会うというビッグバッドイベントをペネロペはやり直せずにいたのだ。


 一度目の人生の記憶が正しければ、ペネロペはその建国祭初日のパーティーで思いっきりダンスを失敗してしまった。それ以降、レイオンがペネロペに笑いかけたことは一度もない。


 つまり、建国祭初日のパーティーがペネロペの人生の歯車を音を立てて狂わせたその日ということになる。


ーーあら?


 つまり・・・これって・・・


ーーこれは・・・逆にチャンスよね?だって、そもそももう殿下に怯えて生きるのは嫌だし、どうにか仕返しぐらいはしてやりたいわ!こうなったらまずは殿下と縁を切る・・・婚約破棄するしかないわ!!私が死なないためにも!!


 ペネロペは内心でガッツポーズを決めると、どうした?と首を傾げているオーレッドにゼロ距離でグイッと詰め寄った。


 思い立ったら即行動!


「レッド、私は殿下と別れるわ!力を貸して!!」


「は?どうした突然」


「私はもううんざりなのよ。好きでも何でもない人との結婚勝手に決められて、家族に好かれたくて努力して・・・。こんな人生もうまっぴら!」


 ポカンとするオーレッドにガン無視決め、ペネロペは感情のままに怒鳴った。



 昔から我慢ばかりだ。


 本当は婚約者がいる以上、オーレッドのような男友達もいい顔をされない。


 必死に皇太子妃教育を頑張ったのに。やりたい事楽しい事、たくさん我慢したのに。


ーー私は呆気なく殺された。


「黙って力を貸して!レッド!」


 ペネロペはオーレッドから少し離れると、掌をはい。と差し出した。この手をとって、私に協力して、と。


 それは言わずともオーレッドに伝わっているのだろう。オーレッドはゆっくりとペネロペの手を握った。


「いいじゃねぇか。幼馴染み同盟だ。協力してやるよ」


「フフッ・・・そうこなくっちゃね!」


 ペネロペは始めての新たな仲間に、よろしく!と笑いかけ、その手を強く握り返した。

 

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