011 舞い込んだ試験2(コレット視点)
でも、今、メルヒオール様は不在だ。青藍騎士団にはディオさんが残っているから、相談したら稽古場を貸してもらえるかもしれない。
ただ、メルヒオール様は出かける間際に言っていたのだ。
「青藍騎士団へは出入りしないように、放っておくと屋敷に戻ってこないからな。俺が戻るまで出入り禁止だ」
そう言われたのは仕方ない。
メルヒオール様が訓練場にいない日も施設を借りて訓練していて、つい夢中になって何度か夕食に遅れてしまった私が悪いのだ。
メルヒオール様が監督しておかないと、訓練場に寝泊まりしてしまうのではないかと心配させてしまったから。
宮廷魔導師の試験があるので、しばらく長い訓練は無理だと思って了承したけれど、やはりもう少し粘って週に数日は施設を借りられるようにお願いすればよかった。
でも、フィリエルなら稽古場を借りる許可を取れるのではないかと思い、工房へ走ったのだけれど……。
「フィリエル!? あのねっ──。あ、えっと……」
工房の扉を開けると、レンリにミミさんが抱きついていた。
私が工房の扉を勢いよく開けてしまったから、驚いたミミさんがレンリに抱きついたようだ。
お互い顔は真っ赤で、ミミさんは目も赤くて頬に涙の跡がある。
これは……お取り込み中だったみたい。
「ご、ごめんなさい。驚かしてしまって」
謝罪すると、レンリが慌てて否定した。
「えっ、あ、違うんです。そうじゃなくて……その」
二人は見つめ合ったかと思うと、恥ずかしそうに目を泳がせている。
もしかして、告白の途中だったのかしら。
私、ものすごくお邪魔虫なのでは……。
「わ、わたし、失礼します」
「ま、待ってください」
レンリは私を引き止めると、ミミさんと並んで立ち、改まった様子で言った。
「し、紹介したいんです。こちら、僕の婚約者のミミ・フローレスさんです」
「こ、こここ婚約者っ!?」
「はい。その……数週間前に父から婚約者が出来たと手紙を受け取ったのですが、相手のことが何も書かれていなくて……。ですが、まあ、その色々ありまして──」
レンリの話を要約すると、ミミさんと親しくなり、一緒に卒業パーティーに出席するために、お相手不明の婚約を断ろうとしたら、なんとその婚約相手がミミさんだった。ということのようだ。
ミミさんもその事は全く知らなかったけれど、お兄さんから嬉しい知らせがあるとだけ聞いていて、もしかしたらレンリとの婚約についてのことを言っていたのかもしれない、と思ったそうだ。
「私、家でずっと兄にレンリ先輩のことばかり話していたから……。父が勝手にすみません」
「いえ、僕の父の方が本当にいい加減で抜けていることが多くて」
なぜか二人は手紙を挟んで互いにペコペコと謝り合っている。なんだか微笑ましくて可愛らしい状況に心がホッコリした。
「コレット、気を使わせてしまいすみませんでした。えっと、宮廷魔導師の二次試験合格おめでとうございます。今後とも同僚としてよろしくお願いします」
「ふふっ。そんなに畏まらないで、これからも同僚とし……」
私はレンリと同僚になれるのだろうか。
私は近衛騎士になりたい。城で働くことは同じだけれど……。
「どうかしましたか?」
「あ、私……。そう、フィリエルを探していたの。相談したいことがあって。レンリにも、今度話すわ。二人とも……」
あれ。こういう時ってなんて声をかけたらいいのだろう。
「お、お幸せに! 失礼しました~」
真っ赤な顔の二人を見ていたら私まで恥ずかしくなって、私は逃げるようにして工房を後にした。
フィリエルは二人の様子を察して工房に入らなかったのかもしれない。だとしたら、どこへ行くだろう。
普通学科の教室、そして図書館を探して、それからまたこっそり工房を覗いてみたけれど、工房ではレンリとミミさんが、テーブルの上にヴェルネル先生お手製の魔法道具を並べて何やら楽しそうに会話している姿が見えた。
初々しい。また二人を見てホッコリしてしまった。
近衛騎士の試験は三日後なのに、こんなところで私は何をしているのだろう。
そうだ、ヴェルネル先生に聞いてみよう。
フィリエルをどこかで見かけたかもしれない。
そしてヴェルネル先生のところへ行き、フィリエルに会えたのだ。
「それで、私を探していたのね。私からディオに話してみるわ。きっと、コレットに訓練場を貸さないように兄から厳しく言われていると思うから、私が訓練に付き合うわ」
「ありがとう。フィリエルに相談してよかった」
「ふふっ。私もコレットに相談されて嬉しいわ。あっ、さっきヴェルネル先生が言いかけていたのは、このことだったのですね?」
フィリエルが尋ねると、ヴェルネル先生はうなずいて答えた。
「ああ。学部は違うし護衛という任務中ではあるが、コレットも同じ学園に通う可能性が高い。期間は半年だが」
「半年なのね。でもそれなら良かったわ。また一年待って、だなんて言われたらお兄様が鉄仮面に戻ってしまうかもしれないもの」
「はははっ。魔法学科は、通うことができるからな。半年会えないわけでもないのだから、大丈夫だろう」
「そうだといいのだけれど……さぁ、話はここまで、早く屋敷に戻って訓練場を借りましょう。コレット、行きましょう?」
「ええ。ヴェルネル先生、それでは失礼いたします」
「ああ、応援しているよ」
ラシュレ家に戻り、私たちはまずディオさんを訪ね、フィリエルの交渉でなんとか訓練場を借りることが出来た。
それに、フィリエルのお陰でディオさんも試験の練習に付き合ってくれることになった。
いつからだろう。たまにフィリエルとメルヒオール様が重なって見える時がある。
表情に圧があるというかなんというか……。
「コレット! 帰ってきたら、お兄様を驚かせてやりましょうね。あ、エミルもきっと驚くわ」
エミルの母国にも立ち寄ることから、勉強のためといって、今回の使節団には、エミルも連れて行ってもらっている。
二人とも、喜んでくれるだろうか。
「ええ、頑張るわ」
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