004 卒業パーティーへのお誘い(レンリ視点)
まったく、フィリエルはいったい何を言わせたいのだか。
コレットのことが好きか? 嫌いなはずがない。
しかし、僕が抱くこの感情は、恋愛ではないのだと思う。
コレットの事は好きだけれど、それは尊敬に近いもので、相手の感情を無視してまで心を奪いたいとか、僕だけを見て欲しいなんて、熱のこもった感情が湧いてくるほどではないのだから。
「やっぱり、まだ気持ちがあるわよね……」
フィリエルは窓へ視線を向け、遠くへと目をやった。
もう会えない誰かを愛おしむように。
多分、フィリエルは、まだガスパルのことが好きなのだろう。
ガスパルはフィリエルの幼馴染だと聞いている。裏切られても、一度許したことがあるそうだし、そう簡単に忘れられる相手ではないのだろう。
「別に、僕はフィリエルとは違いますよ」
「違うって?」
「元々、コレットへと抱く感情は尊敬が大きいですから。友人として、大切だというだけです。その点ではフィリエルと同じかもしれませんが」
「そっか。私と同じで、コレットを友人として大切に思っている、ということね。……でも、じゃあ何が私とは違うの?」
「それは……分からないならいいです」
フィリエルは首を傾げながら考えているが、まだガスパルの事を想っていることに、自覚はないのかもしれない。
でも、自覚させた方がよいことなのかは、僕には分からない。
「そう。だったら、ほかに好きな人は──」
「いませんよ。あの、僕は恋バナとか好きじゃないですからね。コレットとしてください」
「ごめんなさい。その……卒業式の夜、パーティーがあるでしょう? パートナーがいない同士、一緒に行けたらって思ったの。婚約者以外の方と参加する人だっているでしょう?」
それで聞いてきたのか。僕に好きな人がいないのなら、パートナーに誘おうと考えていたってことかな。
確かに、必ず婚約者と参加しなくてもよいパーティーだと聞いているけれど、それはお相手が多忙で都合がつかないとか、それなりの理由がある人がほとんどだ。
今、婚約者がいないフィリエルと、僕が一緒に参加したら、ただの勉強相手から、また格上げされてしまう。
それは避けたい。
僕には、名前も知らないけれど婚約者がいる。あれからまだ父から連絡が来ていないから謎だけど、多分、婚約者はいるのだから。
「…………嫌ですよ。目立ちたくないですし、僕はフィリエルのパートナーにはなりません。それに、宮廷魔導師の試験があるので、出席するつもりもありませんでした」
「出席するつもりがなかったって、本気なの? 二次試験に受かったのだから、もう確定なのでしょう? それに、最終試験の結果だって卒業の前日に分かるのに。人生一度きりの卒業パーティーなのよ」
「そうですけど、宮廷魔導師になったら終わりじゃないんです。なってからが大切なんですよ。なるべく早く認められたいんです。その為に、時間がある今のうちに沢山勉強しておかないと」
いずれ補佐官になってヴェルネル先生を支えるのが僕の夢だ。
きっとゲオルグ宮廷魔導師長の跡を継ぐのはヴェルネル先生だろう。
魔導師長は補佐官から選ばれるから。
今の補佐官達の顔触れを見ても、ヴェルネル先生が最有力なのだ。
ヴェルネル先生と一緒に仕事をするには、早く認められて役職に就くしかない。
「やっぱりレンリって、すごいわ。自分の先の人生まで、ちゃんと考えてるのね……。でも、こんなこと頼めるの、レンリしか……」
学部の後輩や先輩と参加するという人も聞くけれど、パートナーなしで参加する人はほとんどいないとも聞く。
それにフィリエルを一人でパーティーに行かせたらパートナーがいないとアピールしているようなもので、自分のパートナーそっちのけで、フィリエルにアピールしまくる男性に囲まれ、女性陣からも陰口をたたかれてしまうかもしれない。
適当に誰かに頼んだとしても、その相手は自分が選ばれたのだと勘違いするだろうし、婚約者がいる令息に頼んだとしても、その人が今の婚約を破棄してフィリエルに乗り換えようとする可能性だってある。
うーん。やはり、僕が受けることが最善なのかもしれない。
しかし、受けるならば、まだ相手は分からないけれど、フィリエルには婚約者が出来たことを言っておかなくては。
「分かりました。いいですよ。ただ、僕には──」
「ま、まままま待ってください!」
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