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【コミック版配信中】妹の召使いから解放された私は公爵家の家庭教師になりまして  作者: 春乃紅葉@コミック版『妹の~』配信中
第三章 公爵家の家庭教師になりまして、平和な日常に笑顔が溢れてしまいます
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018 必要とされること

 久し振りに見たヒルベルタは、外でもあんなに我が儘放題だったと分かってショックだった。サリアさんの力で、少しは矯正されることを願うことしか私には出来ないけれど。

 それに、ガスパルは反省していないし、フィリエルは元気がなくて心配だけれど、謹慎の言葉の理解すらしていない二人を見て、もう踏ん切りがついたと言っていた。

 豊穣祭の日に、はっきりガスパルとの関係に終わりを告げると決めたようだった。


 もう少しフィリエルと話したかったけれど、エミルの落胆ぶりに私もレンリもフィリエルも心苦しくなってしまい、それどころではなくなってしまった。

 ガスパルがお祭りに行くので、私とレンリは鉢合わせを避けるために祭りに行くことを取り止めようとしたから。



 夜、本を読みに部屋へ行くと、怒り疲れたのかエミルはもう寝ていたけれど、メルヒオール様にソファーへ座るようにと指示された。


「それで、行かないつもりか?」


 向かいのソファーに腰を下ろしたメルヒオール様も不機嫌で、さっきまでのエミルとそっくりだった。

 でも、レンリが色々考えてくれて、お祭りの問題は解決している。


「レンリが、お兄さんに相談してくださるそうです。近くにいる人にしか認識できなくなるローブを作ってもらうそうです」

「それでは……はぐれてしまうのではないか?」

「すぐに見つけられるように、互いに引き合う指輪も頼んだと言ってました」


 メルヒオール様は納得したように頷くと、いつもの笑顔を溢した。いつの間にか、笑いかけてくれるのが当たり前で自然になってきて、その笑顔に釣られて私も微笑んでしまった。


「魔法とは便利だな。今日の武器も良くできていた。皆喜んでいたぞ。明日は筋肉痛で苦しむだろうがな」

「筋肉が喜んでいる証拠ですね!」

「ふっ。そうだな。――また頼む。新団員達は各々癖があるが、君は彼らの特徴を把握し的確な指摘をしてくれたそうだな。ディオも感心していた。基礎が大切だ。これからも面倒を見てやってくれ」

「私でいいのですか?」


 メルヒオール様は深く頷き、私を真っ直ぐに見つめ返した。


「君に頼みたい。苦労をかけるが、問題があれば相談してくれ」

「はい。お役に立てて光栄です!」


 ここに来て良かった。誰かに必要とされることが、こんなに嬉しいことだなんて知らなかったから。


 ◇◇


 それから私はエミルと一日置きに訓練所へ足を運ぶことになった。

 新米団員達は意欲的だしエミルみたいに純粋で可愛らしいのだけれど、彼らは私とエミルが来ることになってからある不満を漏らしていた。

 どうやら、メルヒオール様もこちらへ顔を出すようになったことが気がかりらしい。


 メルヒオール様は精鋭部隊の指揮を取ってるので、普段はここへは立ち寄らないそうなのだ。訓練所の門を潜ると、メルヒオール様は戦闘モードに入るから、皆が引くのはよく分かる。

 でも、ディオさんの意見は違った。

 彼は平民の出で、前ラシュレ公爵に拾われメルヒオール様とは昔からの馴染みだそうだ。

 ディオさんは、最近のメルヒオール様が姉のラミエル様がいた時のように明るくなったと言う。

 その言葉に他の団員達は驚いていたけれど、私はディオさんと同じ見解だった。最近のメルヒオール様は、子供の頃の彼が見え隠れしているから。



 訓練の後、四人の若い団員達が私とエミルの前に現れた。


「コレットさん。明日は豊穣祭ですよ。ご一緒しませんか?」

「私は……」

「コレット先生はボクと行くんだよ!」

「エミル一人じゃコレットさんを守れないだろ?」

「そうだ。そうだ。俺たちが一緒なら安心だぞ」

「コレットちゃんならお前達より強いよな」


 エミルと張り合う団員達を見て、ディオさんは面白がって口を出してきた。


「そ、そうでしょうか……。私なんて、口だけで、筋力も弱いですし……」

「やっぱ俺たちが――」

「なんの話だ?」


 団員達が固まってしまったと思ったら、やはりうしろにメルヒオール様がいた。メルヒオール様って気配がないのよね。見れば分かるんだけれど。


「ぁ。副団長……」

「メルヒオールさんも一緒だから、最強だよ」

「えぇっ。副団長は行かないですよね!?」


 驚いて声を上げた団員は、メルヒオール様の眼力に負けて口を閉ざし、メルヒオール様は何も言わずその場から去ろうとした時、執事のブレオさんが慌てて駆けてきた。


「メルヒオール様っ! 屋敷にイリヤ=サウザン様がお見えです」



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