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005 幼馴染みの婚約者

「お邪魔しております。ヒルベルタさん」

「ごきげんよう。フィリエル様。……お、お姉様に、私のドレスを選んで欲しかったのに、どうしましょう?」


 ヒルベルタはフィリエルの前では猫を被る。

 外でもこうなのだろうか。


 フィリエルは笑顔のままヒルベルタに言葉を返した。


「あら。そうだったのですね。ですが、今日はコレットが主役ですから、ご自分の事はご自分でなさったらいかがですか?」

「……ふん。分かってますわ。フィリエル様こそ、ご自分のお仕度はまだですの?」

「そうね。私もそろそろ行かなくてはなりません。ですから、コレットをお借りしますね」

「は?」

「コレットと私はもうすぐ義理の姉妹になりますから、今まで以上に仲良くなりたいのですわ」


 フィリエルの婚約者は、ヴェルネル様の弟、ガスパル。フィリエルは昔からガスパルの事が好きで、その婚約は二年前から決まっていた。


「義理の姉妹ね……。まぁいいわ。今夜の主役をどうぞご自由にお使いくださいませ。では、私は忙しいので失礼しますわっ」


 ヒルベルタは不満そうに言い捨てると、礼すらせずに踵を返し部屋を出て行った。


「フィリエル、ごめんなさい。ヒルベルタが失礼な態度で」

「コレットが謝ることではないわ。でも私、コレットに相談したいことがあるの。ガスパルのことで……」


 ◇◇◇◇


 予定の時間より少し早めに、ダヴィア侯爵家へラシュレ公爵家の馬車で向かった。


 ヴェルネル様はダヴィア家の家紋入りの濃い紅色の服を着ていて、笑顔で私を出迎えてくれた。

 素敵すぎて眩暈がした。

 でものぼせている場合ではない。

 フィリエルから、ガスパルについて相談を受けたのだから。


 ヴェルネル様とフィリエルはダヴィア侯爵に呼ばれ、私はガスパルと二人で客室で待つことになった。


 向い合わせでソファーに腰を下ろし、ガスパルは私をチラッと見ると、すぐに視線を外した。怪しい。


 ガスパルも私の兄と同じく、ラシュレ公爵家へ稽古に行っていたので、幼い頃からの知り合いだ。

 フィリエルは昔から活発で優しいガスパルにぞっこんだった。見た目はヴェルネル様に似ていて綺麗ではあるし、フィリエルの事を大切にしているけれど、私はガスパルは嫌いだ。


「コレット。睨むなよ。俺と二人がそんなに嫌か? 兄様にはヘラヘラしてるくせに」

「そんなことないわ。ガスパル、聞きたいことがあるのだけれど?」

「えっ。何の話だ?」


 あからさまに目を逸らした。

 隠し事をしていることは確実だ。


「最近、稽古で忙しいらしいわね。フィリエルが寂しがっているわよ」


 最近の彼は急に剣の稽古で忙しいらしい。

 ガスパルは剣のセンスは良いけれど、やる気はない。

 近衛騎士団に入るのが夢だけれど、それは城の警護の方が危険が少なく楽だと思っているからだ。


「ああ。忙しいのだから仕方ないだろ。近衛騎士団に入れるチャンスが俺にも回ってきたんだよ」

「フィリエルは、稽古ではないと思っているわよ。女性と過ごしているのではないかと疑っているわ。私もですけれど」


 近衛騎士団に入る為に努力し始めたのかとも思ったけれど、多分また浮気ではないかとフィリエルは考えていた。

 ガスパルには前科がある。

 彼は押しに弱く惚れやすい。ついでに女好き。

 前回、年下の女の子と遊びまくっていたガスパルに、二度目はないと忠告したのに。


「は? コレット。また俺の邪魔するのか? 俺から好きになった訳じゃないのに、何がいけないんだ?」

「な、なに開き直っているのよっ」

「別に? あー。ムカつく。お前なんかが兄様と婚約するなんて俺は絶対認めない。――だからさ。大人しく俺に襲われろ」

「え?」


 ガスパルは腰の剣に手を伸ばし、ソファーから勢い良く立ち上がった。







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