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【コミック版配信中】妹の召使いから解放された私は公爵家の家庭教師になりまして  作者: 春乃紅葉@コミック版『妹の~』配信中
第三章 公爵家の家庭教師になりまして、平和な日常に笑顔が溢れてしまいます
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幕間(フィリエル)

 レンリ=ベルトットと二人で本館へ向かうことになって、私はここぞとばかりに気になっていた事を尋ねた。


「ねぇ。コレットとは、本当のところ……どんな関係なのですか?」

「へ? 今は……同僚ですかね」


 レンリは少し驚いた後口ごもり、当たり障りのない答えを言った。でも、私から見たら、二人の距離感が恋人同士にしか見えなかった。ここは聞き方を変えてみよう。


「では、エミルと出会った時は?」

「その頃は、弟という設定でしたよ」

「設定? ねぇ。レンリはどうしてコレットについて行ったの?」

「……仕事ですよ。僕はコレットの執事でしたから」


 またしても、はぐらかされた。

 コレットはその気は無いみたいだったけれど、レンリは違うと思ったのに。


「コレットの、ではなくキールス家の執事ですわ。どうして――」

「あの家に、コレット以外に執事として仕えたい人間はいませんでしたよ」


 レンリの瞳は淡く怒りと憂いを帯び、それを取り繕うかのように切ない笑顔を付け足した。

 コレットと兄や両親の間に確執があることは気づいていた。でも、コレットはそれを隠したがっているように感じたから、私はずっと見て見ぬふりをしてきた。


「ねぇ。コレットは、どんな扱いを――」

「僕から言えることはありません」


 レンリはキッパリとそう答えた。

 彼はとても誠実な人だ。雇い主を貶めるようなことは決して言わない人なのだろう。


 確か同級で魔法学科だけれど、実家の都合で働かなければならないと聞いた。こんなところで執事なんかしていないで、ちゃんと卒業して、もっと彼を必要とする場で働けたらいいのに。


「そうだわ。レンリは魔法学科なのでしょう? ここで執事をしながらでもいいから、復学したらどうかしら。あ、でも駆け落ちしたことにされているのでしたっけ? 破局したってことにして戻ってしまったらどう?」


 レンリは急に足を止めて振り向き、迷惑そうに小さく溜め息をついた。


「僕の事はお気になさらず。――着きましたよ。葉の種類はいかがいたしますか?」

「あ。ダージリンにしようかと。後、お気に入りのティーセットがあるの。ガラスの素材のものです」

「はい。かしこまりました。お嬢様」


 丁寧にお辞儀すると、レンリは厨房へ入っていった。

 またはぐらかされた。というより、拒絶された気がする。少々お節介が過ぎただろうか。


 コレットと仲が良いから、つい私も友人のように接していたけれど、彼は執事であって私の友人ではないのだ。


 厨房の裏口で待っていたけれど、少々戻りが遅いので中を覗くと、調理人のおじさんに頼んだもの以外までたくさん持たされていた。


「悪いねぇ。メルヒオール様が朝食を向こうで召し上がるそうだから、必要なものが増えたんだよ」

「大丈夫ですよ。一度には運べませんが、まとめて出しておいてくだされば運んでおきますので」

「おお。助かるよ」


 どうやら兄のせいで仕事を増やしてしまったみたい。


「私も手伝うわ」

「はい? ご遠慮ください。これは僕の仕事ですから」


 レンリは至極迷惑そうに私を避けて後退った。

 二人でやれば二往復くらいで終わりそうなのに。


「少しくらい良いでしょう? それに、元々私と貴方は同級で学友じゃない」

「今は休学中ですから」

「……頑固ね。なら、コレットみたいに私と友人になりましょう? それなら良いでしょう?」

「僕は今、ラシュレ家の執事として働いています。ここをクビになる訳にはいかないので、ご遠慮させていただきます」

「そう。そんなにコレットの傍にいたいのですね」

「はい。ご想像にお任せ致します」


 レンリは呆れたように踵を返すと、足早に東館へ向けて歩き出し、振り返らずに言った。


「コレットを信じてくれてありがとうございます。これからも、良いご友人でいてあげてくださいね」

「そ、そんな事……言われなくても当たり前ですっ。私も持つわ」

「へっ? ちょっ……」


 私が強引にティーセットの鞄を持とうとしたから、ガシャンと音を立てて地面に落ちてしまった。


 みるみる青ざめていくレンリは、恨めしそうに私を睨んでいた。


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