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004 私の婚約者

 婚約者であるヴェルネル様は、ダヴィア侯爵家の嫡男。

 透き通った銀髪と落ち着いたダークグレーの瞳を持ち、儚げで美しく聡明な彼は、兄のライアスと昔から仲が良く、屋敷へ度々遊びに来ては私へも挨拶をしてくれた。


 先月、彼はライアスの妹と婚約したいと父へ申し出た。家族みんなが妹のヒルベルタに視線を伸ばす中、彼が見据える先にいたのは、私だった。


「コレット。気品と慈愛に満ちた君と婚約を結びたい。私でよいだろうか?」


 ヴェルネル様と目が合って、私の心臓は大きく跳ねた。

 こんなに嬉しくて高揚した気持ちになるのはいつ振りだろう。


 でも、勿論、両親も兄も私ではなくヒルベルタを薦めた。


「ヴェルネル。コレットは身体が弱く学園にも通わせていない。ダヴィア侯爵家を継ぐ君には釣り合わないぞ」


 父が言うように、私は学園にも通わせて貰えなかった。でも、使用人と同じ様に扱われてきたから、体力はヒルベルタよりもある。身体が弱いなんて嘘なのだから。


「そうだぞ、ヴェルネル。コレットは役に立たん。恥ずかしい話だが、裁縫は出来ても刺繍は出来ない。使用人の真似事ばかりする変わり者なのだ」

 

 兄も追い討ちをかけるように私の不平を述べると、ヴェルネル様は困ったように微笑んだ。


「私も身体は丈夫な方ではありませんので、気にしません。それに、コレットを見れば分かります。彼女は思慮深く、教養のある女性だと言うことが。ですからあまり心配なさらないでください」


 そう言って私に微笑みかけるヴェルネル様。いつも挨拶してくれる時と変わらぬ笑顔にホッと心が安らいでいく。


 ヴェルネル様は小さい頃から身体が弱く、騎士の家系に産まれたのに剣を扱うことが出来ずに苦労してきた方だ。

 しかし、剣は扱えなかったが、彼には魔法の才があり、今や宮廷魔導師長の一番のお気に入りと言われ、次期魔導師長とさえ囁かれる存在である。


「ヴェルネル。君の考えはよく分かった。私からダヴィア侯爵と話しておこう」

「はい。よろしくお願いいたします」


 それから程なくして、ヴェルネル様から桃色のドレスをいただいた。

 でも、私にこんな可愛いドレスが似合うのか不安で、今日まで遠目に眺めることしかできなかった。

 フィリエルのお陰で、私は――。


 その時、ノックもなく部屋の扉が豪快に開け放たれた。


「お姉様っ!? 私のドレスはっ――あら。フィリエル様……」





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