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002 幼馴染みの公爵令嬢

 私は兄の剣を一本一本心を込めて磨き上げた。

 祭事用の近衛騎士の剣は特に念入りに磨いた。

 柄の部分の鷹のレリーフは王家の紋章だ。

 これは近衛騎士のみ手にすることが出来る、王から賜った大切な剣。


 兄は凄い方なのだ。

 小さい頃から青藍騎士団の団長であるラシュレ公爵に剣を習い、歴代最年少で近衛騎士に抜擢され、学業も優秀で私の憧れの兄。


 こうして兄の役に立てていれば、いつか昔のように笑いかけてくれる日がくるだろうと信じてきた。

 でも、そうなる前に家を出ることになりそうだ。


 半分ほど作業を終えた頃、扉がノックされ執事の声が聞こえた。


「コレット様。よろしいですか?」

「ええ。レンリ、どうかしたの?」


 彼は半年ほど前に入った執事見習いのレンリ=ベルトット。まだ仕事に慣れずあたふたしている姿をよく見かけるけれど、真面目で実直な子だ。


「あの、ラシュレ公爵令嬢様がお見えです」

「フィリエルが? 急に来るなんて珍しいわ」

「はい。コレット様にサプライズプレゼントがあるそうです」

「あっ、そうなの? それは……楽しみだわ」


 言ってしまったらサプライズにならないのに。

 私の顔を見て何か感じ取ったのか、レンリは違うんですっ、と慌てて否定した。

 この程度の事で顔面蒼白になっていて可哀想だけれど、きっとヒルベルタなら花瓶を投げつけているだろうから、こうなってしまうのも仕方がない。


「気にしないで。フィリエルには秘密にしましょうね」

「はい。……申し訳ございません」


 ◇◇


 フィリエル=ラシュレは私の幼馴染み。

 昔、私も兄の稽古の度にラシュレ公爵家について行っていて、友人となった。


 私が稽古に行かなくなってからは、こうしてフィリエルが遊びに来るようになっていた。一緒に本を読んだり、花で髪飾りを作ったり、学園の課題を手伝ってあげたりすることもある。

 私が唯一、心を許せる友人だ。


 部屋に通されるなり、フィリエルは水色の澄んだ瞳を輝かせて、私の胸に飛び込んできた。


「コレット。婚約おめでとうございます!」

「フィリエル。まだ婚約式は迎えていないわよ」

「そうですね。ですが、今日は学園をお休みして遊びに来ちゃいました。婚約式のお仕度がありますでしょう。私もお手伝いしたくて」


 フィリエルは、私が病気で家に隠っていると思っている。彼女自身も、あまり身体が強い方ではなく、穏やかで大人しい性格だ。しかし、今日のように、ときどき大胆な行動にでることも。

 でも、彼女は薄々勘づいているのだろう。

 私が家族にどんな扱いを受けているのか。

 だから、学園を休んでまで来てくれたのだ。


 フィリエルの来訪により、私は婚約式の仕度をメイドに手伝ってもらえることになった。


 でも、母が宛がったメイドは、まだここへ来て二ヶ月の新米メイドだった。妹の我が儘で、若いメイドはすぐに辞めてしまうから、我が家の使用人は入れ替わりが激しい。


 フィリエルは若いメイドを見ると穏やかに微笑んで言った。


「今日はコレットに特別な贈り物を連れて来ましたわ」

「……連れて?」





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