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014 ガスパルの剣

 戻ってきたレンリと一緒に、私はリンデル王国行きの行商の馬車に乗せてもらった。


 当たり前のように隣に座っているレンリは、ベーコンのエピを頬張っている。街のベーカリーで買ってきてくれたのだ。ベーコンがカリカリで美味しい。


「気に入っていただけましたか?」

「ええ。ありがとう。でも、何故レンリが付いてくるの?」

「コレット様お一人じゃ心配ですし。荷物をまとめて飛び出してきちゃいました。――そうそう。さっき面白かったですね。ガスパルの剣を……ははっ」

「み、見ていたの?」

「はい。見てましたよ。でも、良かったのですか? 柄も全部バッキバキにしてしまえば、近衛騎士を免職まで追い込めたのではないでしょうか?」

「ふふっ。それじゃ駄目なのよ。お兄様に気づかれてしまったら、きっと職人にお金を積んで新しい剣を作らせる筈よ。だから、あれ位が丁度良いのよ」


 私は腰の剣を抜いて天に掲げ、胸に当てる動きをレンリに見せた。


「ん? 何ですか、今の動きは?」

「新人が入った式典の時だけ、近衛騎士達がする挨拶よ。兄もよく練習していたの。これはね、見て覚えるんですって。式典の前に、前列の上官に習って礼をするようにって教えられるだけだそうよ。一目見ただけで、一糸乱れぬ騎士団の動きについていける人は早々いないから、大抵の新人は遅れてしまうの。新人が入ったことを王族の方に知ってもらう為でもあるそうよ」


 王族の中に悪戯好きの人がいると兄は漏らしていた。

 レンリは眉をひそめて不思議そうに首を傾げる。


「へぇ。まどろっこしい事をされるんですね。……ということは、ガスパルは最初の式典の時に折れた剣を晒すことになるんですね。あの性格では、コレット様に剣を折られたなんて誰にも言わないでしょうし、あれでやり過ごせると思っていそうですから」

「そうね。式典の時に焦るでしょうね。剣を抜けず、周りに詮索されて折れていることがバレるか。それとも、ガスパルの事だから、折れたことも忘れて気前よく剣を抜くかもしれないわね」

「うわぁ。式典に参加したくなってきました。次は何の祭事がありましたっけ?」

「確か、二週間後ね。建国記念日だわ」

「ああ。これは派手な舞台ですね。見てみたいな」

「でも、近衛騎士が見られるような場所へ行けるのは貴族だけよ。一般市民は塀の外よ」

「あ、これでも一応、僕も貴族の端くれなんですよ?」

「へ? じゃあ、どうして執事見習いなんてしているの? それに……」


 普通に話していたけれど、やっぱり何で隣にいるのか分からないままだった。

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