表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【コミック版配信中】妹の召使いから解放された私は公爵家の家庭教師になりまして  作者: 春乃紅葉@コミック版『妹の~』配信中
後日談 それぞれの歩む道

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

106/110

018 ヴェルネルと王女(ヴェルネル/ルーティ視点)

 フィリエルとコレットは、色違いのお揃いのドレスを着ていた。本当に仲が良いのだと微笑ましく思う。


 先日私は、フィリエルに卒業パーティーのパートナー役を買って出た。

 正直、フィリエルはレンリと参加するのかと思っていたけれど、そうではないようだし、一人で参加させるのは心配だった。


 フィリエルは、ガスパルを大切に想ってくれていた。

 その気持ちを手放すことを選ばせてしまったのは、私にも責任がある。彼女が快く友人とパーティーを楽しめるよう、見守りたかったのだ。


 学園に到着し、本来ならフィリエルを手を取りエスコートする予定であったが、コレットのパートナーであるメルヒオールの到着が遅れているため、馬車を降りてから、二人は会話を楽しみながら、私の後ろをついてきている。


 あまり心配し過ぎなくてもよかったのかもしれない。

 フィリエルにはコレットがいるのだから。


「ヴェルネル様?」


 名前を呼ばれ振り向くとルーティ王女が受付に立っていた。後ろばかり気にして歩いていたら、いつの間にか会場前の受付に来ていたようだ。

 しかし、なぜルーティ王女が受付をしているのだろう。

 今、彼女と顔を合わせるのは、とても気まずいのに。


「こんばんは。受付をしているのですか?」

「はい。お世話になった先輩方をお祝いしたくて。ヴェルネル様は、もしかしてコレット様のパートナーですか? すみません。私の兄がメルヒオール様を連れ回したせいですよね」

「違いますよ。ルーティ様。メルヒオール様はお仕事なのでしかたないことですから。それと、ヴェルネル先生は、フィリエルのパートナーとしていらしてくれているんですよ」


 コレットが説明すると、ルーティ様の表情から笑みが消え、驚きの表情へと変わった。


「えっ……? フィリエル様の……」

「ち、違いますよ。私の元婚約者がヴェルネル先生の弟だったので、義理で」

「義理で、婚約者に……すみません」


 フィリエルの言葉を反芻すると、ルーティ王女は隣の受付の子に謝罪し、校舎の方へ走っていってしまった。今にも泣きそうな顔で。

 でも、これでよかったのかもしれない。

 国王陛下が、ただの宮廷魔導師と王女の結婚など、簡単に認めるはずもない。

 それなのに──。


「フィリエル。コレットと二人で会場へ行っていてもらえますか?」

「えっ? も、もちろんです」

「すみません」


 どうしても放っておけなくて、私はルーティ王女を追いかけていた。


 ****


 フィリエル様は、美人で気品があって、学内でも人気が高い。そして、婚約者がいないのに、新しく婚約者を据える様子もなく、男性を避けていると聞いていた。


 ヴェルネル様をお慕いしていたからだったんだ。

 あの二人ならお似合いだ。


 紫で揃えたドレスがとても似合っていて、涙が溢れそうになった。


「ヴェルネル様みたいになりたくて、頑張ったんだけどな……」


 小さい頃から、不思議な力が使えた。

 ろうそくに火を灯すのも簡単だし、少し離れた場所にあるものも簡単に動かせた。


 だけど、それは認められない力だった。


 お母様はお父様から責められ距離を置かれ、私は城中の人に後ろ指をさされながら過ごした。

 ゲオルグ様が助けてくれるまでは、毎日苦しかった。


 ゲオルグ様は私に王女の称号を戻してくれた。

 そして、ヴェルネル様のことを教えてくれた。

 私と同じように、魔力が高くてとても苦労されていたことを。


 ヴェルネル様の存在を知って、辛いのは私だけじゃなかったってわかって、ホッとした。

 でも、宮廷魔導師として城で見かけたヴェルネル様は、そんなことを少しも感じさせないくらい立派で優しくて、初めて見たその瞬間から憧れの人になった。


 でも、私はゲオルグ様が手を焼いてしまうほど、魔力の制御ができなかった。

 そして、そんな私が魔法学科に入学すると同時に、ヴェルネル様を講師として学園に招くことが決まった。

 嬉しかった。王女ではなくて、生徒としてヴェルネル様に師事できるなんて。


 でも、私は魔力の制御だけじゃなくて、勉学も苦手だった。

 だから、お父様と約束したの。


「ルーティ様っ!」

「えっ、えええっ!? ヴェルネル様っ、どうしてこんなところに。フィリエル様はどうされたのですか!?」

「コレットと二人で先に会場へ行っていただきました」


 どうして、追いかけてきてくれたのだろう。

 息を切らして、必死に私を追いかけてきてくれたように見える。

 私のために?

 はぁ、期待してしまう自分が情けない。


「ヴェルネル様、駄目ですよ。誰にでも優しくしては」

「自分でもわからないのですが、どうしても放っておけませんでした。このまま嫌われてしまえばいいと思ったのに、おかしいですね」

「そうですよ。フィリエル様みたいに……素敵な女性になんて、私はなれませんから」 

「フィリエルとはそういう関係ではありません。私は……保護者みたいな立場ですから」


 保護者ということは、私の兄のせいでメルヒオール様がいないから、代わりにエスコートしていた、というような意味だろうか。

 私としたことが勘違いで、なんと恥ずかしい姿を見せてしまったのだろうか。どうしても、ヴェルネル様関連のことになると、冷静さに欠けてしまう。


「そうなのですか? では、フィリエル様は婚約者ではないのですね」

「はい、ですが」

「婚約者は今、いらっしゃらないのですよね!?」

「そうですね。ただ、ルーティ様と私は不釣り合いですよ。せっかく陛下とのすれ違いも消え、王女と認められたのに、一介の宮廷魔導師などを婚約者にしたいなどと発言すれば、陛下の心証を悪くさせてしまいます。ですから、私のことを忘れてください。これからもっと見聞を広め、素敵な方と出会えることを願っています。勝手ながらその事をお伝えしたく、追いかけて参りました」


 真っ直ぐに私の目を見て、ヴェルネル様はとても残酷な言葉を口にした。

 私は子どものころ、もっと聞きたくない言葉をたくさん聞かされてきた。その人たちの目は、とても人間を見るような目ではなくて、おぞましい獣を見るような目をしていた。

 でも、ヴェルネル様の目は違う。優しくて温かくて……。やっぱり私は、貴方に見つめられることを、諦めることが出来ない。


「願わないでください。ヴェルネル様より素敵な方なんて絶対にいません。断言します」

「買いかぶり過ぎですよ。それに、貴女は王女なのですから、婚約者は」

「お父様は私が、ヴェルネル様に憧れていることを全て存じていらっしゃいます」

「えっ?」

「だから、私が苦手な勉強を頑張れるように、お父様は約束してくれました。私の留学が決まれば、なんでも一つ望みを叶えてくれるって。私は自分の伴侶は自分で決めたいと思っています。だから、このことを父にお願いしようと思っています。でも……私は私を想ってくれる方がいいんです。無理に婚約を結びたくはないんです。憧れの方には、幸せになってほしいから……」


 だから、私を見てほしくて気持ちを伝えたけど、もしヴェルネル様が私のことを少しも好きになれなかったら、その時は諦めなくちゃいけないということは決めている。

 でも、それは今じゃなくて、まだ先であってほしい。


「それって──」

「い、今は何も言わないでください! 私が留学している間にいっぱい私のこと、考えてほしいんです。ヴェルネル様は、私のことを女性として見ていないってわかってます。だから、」

「女性として見ていますよ。いつも一生懸命で、苦手なことも諦めない。私は、ルーティ様を一人の素敵な女性として見ています」

「そ、そそそんなに褒めても諦めませんからっ。半年後、もっと素敵な女性になってヴェルネル様のところに戻ってきます。そしたら、お返事をお聞かせ願います!!」


 私は勢いよく礼をしてその場を立ち去った。


 でも、あれれ?

 今すぐお断りされるのかと思ったけど、私のことを褒めてくれたような……。

 それって、どういうこと!? 

 ヴェルネル様は私のことを……。


 いえ、期待してはダメ。

 アーロンお兄様が言っていたもの。

 ヴェルネル様は理想が高いから、今の私なんかじゃ駄目だって。一度引いて、心身ともに磨き上げて帰ってこなくちゃ、女性として認識されないって。


 好きなだけ言って逃げてしまったけれど、ヴェルネル様の気を悪くさせてしまったのではと、ふと不安になった。

 足を止め振り返ると、ヴェルネル様はまだその場に立ったまま、こちらを見ていた。

 そして私と目が合うと、ふわりと笑顔になった。


「お帰りをお待ちしています。留学、楽しんできてくださいね」

「は、はい! 失礼しますっ」


 何その笑顔、反則です。

 心臓が痛いくらいに騒がしい。留学中に心臓も鍛えなきゃ。

 そうだ、コレット様にご教授願おう。




お読みいたたきありがとうございます。

評価☆☆☆☆☆など、していただけると励みになります。

よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ