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9匹目

「さあ、楽しくお話ししましょう?」



カフェの予定が教会になり。

庶民むけのお茶は高級茶葉に変更になった。


ニコニコ笑うボクちゃんと、申し訳なさそうに俯いているヒラリちゃんの後頭部を見ながら、また面倒臭いことになったな、と手首の毛玉を撫でた。







珍しく帰りのお迎えが銀髪じゃなく違う神官だった日、ヒラリちゃんが暴挙に出た。



「ジュカさん!今日こそ一緒にお茶しましょう!!」

「えー、是非とも拒否したい」


ぎゅむりと掴まれた腕を無理矢理ほどくのは流石にアレなので、ズルズル引き摺られながら連れられていく。慌ててないで止めたまえよ、神官君。



「最近気になってたカフェがあるんです!そこでお茶しましょう!」

「あのね、私、外出届け出してないからね。街にでても門限までに必ず帰らないと不味いんだよね」

「わかってます!でも、学園じゃ例の話はできないし、どうしても2人で話したいんです!!」



・・・・話すこと自体不味いんじゃないのかね



オロオロするばかりの神官君の姿がいなくなったな、と思ったら教会に報告に行ってたらしい。


ここです!と案内された、真新しいカフェの前で待ってたのは、エプロンを着けた店員さんではなく、キラキラしい神官服を身に纏った少年だった。



「こんにちは、ヒラリ。それとジュカさん、かな?」

「マ、マリオン様」

「・・・どちら様で」


「神官長の孫です、と言ったほうがわかりますか?」


にこり、と嘘臭さ半端ない笑顔を振り撒いている。


「ボクもぜひジュカさんとお話したいと思っていたのです。御迷惑でなければまぜてください」

「御迷惑ですが?」


ふふ、ジュカさんは面白いですねと、私の言葉をまるっとスルーして、ここじゃなんですからと背中を押されて馬車に押し込まれる。

押すな、痛いっての。



着いた先は案の定教会で、奥へ奥へと恭しく通されたのは、ムダに金掛かってんなって内装の部屋だった。


茶だの菓子だの用意させるとヒラヒラ手を振って人払いしたボクちゃんは、俯いたままのヒラリちゃんをチラリと一瞥しただけで、嘘臭い笑顔を私に向けた。



「単刀直入に伺いますが、ジュカさんは転生者だそうですね。元日本人、で合ってますか?」

「単刀直入に聞くけど、あんたがヒラリちゃんを召喚したの?」


どうせ私の事はヒラリちゃんから聞き出してんだろうに、無駄な質問すんな。

私も負けじとにっこり笑って質問で返してやると、ボクちゃんは鼻白んだようだ。



「・・・ヒラリが話したんですか?」

「いんや。ゲーム云々の話はしたけどね」


びくっと肩を震わせたヒラリちゃんから察するに、やっぱり話しちゃダメだったんだな。まったく。


「そこまで知ってるなら話が早いや。ジュカさん、ヒラリに協力してあげてくれませんか?あなた元々、ヒロインのサポートキャラでしょう?」

「知ってるからこそお断り。大体、ゲームとは相違点が多すぎるし、私に何のメリットもないもん」

「メリットって、そんな、ジュカさん・・・」



ヒラリちゃんはショックを受けてるようだけど、なんで私が無償奉仕しなきゃなんないのさ。


「私が元日本人だから?ヒロインが困ってるから?元々の友達でも知り合いでもないのに、やなこった」

「・・・それがあんたの役割だろ」


お、化けの皮はがれてきたな


「勝手に召喚したのはあんたでしょう?ここに残るって決めたのは彼女でしょう?ここは夢でも物語でもリセットできるゲームでもなく現実だよ。設定だの役割だの、私の知ったことか」

「ボクが召喚しなければ、ストーリーは始まらなかったんだぞ!」

「あんたが何もしなくても、私は元気に生きて生活してるよ。・・・ヒラリちゃん」


返ってきた返事は蚊がなくような声だ。



「随分早い段階でこの世界に残る事をきめたって聞いてる。どうして?」

「・・・・・」

「向こうで何があったのか、私にゃわかんないけどさ。選んで決めたのが自分なら、その責任も自分にあるんだよ」

「でも、こんなはずじゃ!」

「見通しの甘さも自己責任だよ」



手首の毛玉がイライラしてきたのがわかったので、もうお暇するか。


と、立ち上がろうとした足がふらつく。



・・・やられた。

お茶には口つけないでおいたのにな



「そろそろ効いてきました?馬車で背中に触れたときに遅効性の術を忍ばせたんです。ボク、魔力が人より多いので、高度な術も使えるんですよ。ヒラリを喚ぶための召喚陣だってわざわざ作ったんです、凄くないですか」

「ふんっ、額にでも入れて飾ってあるんじゃない?」

「失礼だな!ちゃんと本にまとめてあるさ!」



テーブルについた手が滑って茶器がガチャンと割れる音が響く。そのまま堪えられずに横倒しに倒れると、ヒラリちゃんが悲鳴をあげた。



「ジュカさん!!!!」

「貴方にはまだ聞きたいことがたくさんあるんだ。とりあえず毛玉の従魔は邪魔だから封じさせてもらうよ」


倒れた私の手首から毛玉を取ると、透明な箱にいれ、上から呪符を貼った。


「か、返して・・・」

「マリオン様!!ジュカさんに危害は加えないって言ってたじゃないですか!!」

「やだなヒラリ。痺れて怠くなるだけで、毒じゃないし。ボクはもう少しだけお話したいだけだよ」



・・・・クソガキめ



「あれ、もう気を失っちゃったかな?あははは」










----------------------- 夢を見た



まるで光と闇のような白と黒。

大柄で逞しい体で見目麗しい彼らは、それぞれ左と右に胸から腕にかけて不思議な紋様があった。



泰然と佇む、ただそれだけでその場を圧倒していた。




私が喚ぶ声に姿を現した2人は、ボロ雑巾のように倒れ伏し呆然と見上げる私を一瞥すると、ぐるりと周囲を見渡し溜め息をついた。



息を止めて見ていたローブの人たちが歓声をあげる。


上出来だ、屑でも役にたったなと近付いてくるローブの人たちをまるで無視して、黒髪のほうが倒れたままの私を、猫の子のように襟首をもって吊り上げた。


「喚んだのはキミだね?」

ビリ、と何の遠慮もなく服を破られる。


「印もちゃんとあるね。キミ、名前は」

「・・・・ジュカ」


「ジュカ。我等の名を喚び何を求める」



白髪のほうが感情のない目を向ける。


2対の金と銀の瞳の圧に、ぶら下げられたまま体がガクガクと震えた。



「ち、力を貸して」

「対価は」



何を話している、と彼らにローブの腕が伸ばされる。



「・・・私を。私自身を」


「契約完了だ」





周りの一切が消え失せた。









ゴホゴホと咳き込んで体を起こす。


「いててて、あのガキ。絶対許さん」


痺れて怠くなるどころじゃなく、壮絶に気持ち悪い。


先程までの金ピカの部屋ではなく、椅子が何脚か置かれただけの白い部屋に、足首の枷から伸びる鎖。


「私のトラウマ擽るわー。ないわー」


まぁ、檻の中じゃないだけましか。



体のあちこちを検分しておく。

一応女子だからね、何かされてたらイヤだし。

でも取られたものはなくて、ポケットの中のキャンディもそのまま残っていた。


姉ちゃんが「ゲンキになるお薬よ」と怪しいうたい文句で持たせてくれたキャンディは、恐ろしく酸っぱくて、恐ろしく高性能だ。


気持ち悪さがぶっ飛んだ、聖女作のキャンディに悶えていると、がっこんと鍵を壊したらしい音のあと、ドアが空いた。



「・・・・意外と元気じゃないですか」

「ジュカさん、よかった!気がついたんですね!!」


銀髪を連れて駆け寄ってきたヒラリちゃんは、足の枷に気がつくと途端にしおしおと小さくなった。


「本当にごめんなさい。マリオン様がこんな事するなんて。私が、言われるがままに動いて、人に任せっぱなしで、なんにも考えてなかったから・・」

「あー。反省はあとでしてね。とりあえず現状確認させて。ヒュースさん、今の刻は?」

「夕の鐘2つ目です。なかなかこの部屋を見付けられなくて手間取りましたので。因みにあなたの門限はとうに過ぎていますね」



まじか、こりゃ急がねば。



「ヒラリちゃん、あのガキに指示されたのは私との接触だけ?」

「・・・・はい。ジュカさんを起点にシナリオがずれてるって言われて。正しい未来に導くために、ジュカさんを探れって・・・・聞かれるがままに色んな事、話しちゃいました、ごめんさない」


正しい未来ねぇ。誰にとっての正しさなのやら


「ヒュースさん、未来を視る力ってのを王家に推したのは、神官長?それとも、孫?」

「・・・・神官長です。ですが、マリオン様がその力の重要性を説き、王家に食い付く手掛かりとして利用すべきだと誘導したのですよ。それまでは召喚されたばかりのヒラリ様を厄介払い、と旅に出すようなお考えの方ですから」

「やっぱそうなんだ。バカが権力ふるえるところにいると、ろくなことないね」




「ジュカ、本が見つかったぞ」


突如、私の背後に現れためえさんの姿に、ばっと銀髪がヒラリちゃんを背後にかばう。


・・・そのヒラリちゃんは頬を赤くして、めえさん見てるけどね



「な、だ、だ、誰だ!どこからっ」

「めえさん、ありがと。じゃ、そろそろ帰るか」

「その枷と鎖は趣味か?ジュカ」


んなわけあるか。


めえさんは私に本を手渡すと、パキリと片手で粉々に枷を砕いた。


「かた、片手・・・」

「え、あれ?ジュカさん。めえさんって従魔の羊さんの名前ですよね?その毛玉をさっきマリオン様に取られちゃってませんでした??」

「そうだねぇ、黒いのは渡したよ」



ヒラリちゃんに学園から連れ出された直後から、めえさんの毛玉をただの毛玉とすり替え済みだ。


ただし偽物とバレないように、取られた黒毛玉ことべえさんは本物だ。

ヒラリちゃんを召喚した陣を探すため、反撃せずに大人しくしてたとはいえ、2人と引き離されれば私は命に関わるのだから、保険はいくらでもかける。




「ポケットの中まで探られなくてよかったよ」


まぁ実際、探られてバレた時点でめえさんが毛玉のままでいるわけないんだけど。



めえさんは、私のピアスの色を確認するように髪をかきあげると、ついでとばかりに首筋に唇をよせた。


・・・すっごいヒラリちゃんに凝視されてるんだけど



「いった!噛むな!跡つけないでよっ」

「少し離れてた分だ」

「もう。さて、べえさんが我慢の限界になる前に回収しなくっちゃね」


「先程から扉のすぐ外にいるぞ」



赤く染めた頬が一気に青褪めたヒラリちゃんが、ひゅっ、と息を飲む。



出来ればあまり大事になる前に帰りたいんだけどな。



なんでかヤル気満々なめえさんがドアに目を向け

「少し仕置きをしてやろう」と不穏に笑った。



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