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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

信じてくれるのなら、また逢いに来て

作者: 小花

初投稿作品です。頑張ってみました。

最後まで読んで頂けたら嬉しいです。






処刑台の上、膝をつく。



「罪人よ、最後に言うことはあるか?」



そう、私に問うのは元婚約者であり、この国の第一王子である。


「いいえ…ございませんわ。」




「己が犯した罪の懺悔もないとはな」




「私はしていないと言ってますでしょう?してもいない罪を認めるぐらいならば、死ぬほうがいいですわ。…でも、そうですわね。最後に何か言わないといけないのであれば、殿下に伝えたいことがありますわ」




「…聞いてやろう」




数え切れぬ程の拷問を受けた。片目は腫れて開かない。それでも私は彼に視線を向けた。



「ありがとうございます。…私はずっと、ずっと…殿下のこと、ヴィル様のことを愛しておりました。あの日からずっと、ヴィル様しか見えませんの。ですから、どうか幸せになって下さい。どうか末永く生きてください。それだけです。」



愛の告白をする時はとびきり綺麗な私で伝えたかったのだけれど、これで最期だもの。どうしても伝えたかったのよ。




「戯言を。もういい、刑を執行せよ!」





戯言だなんて、酷い人。

でもあなただから許してあげるわ。






ヴィル様の合図がかかるその瞬間

私以外の時が全て進みを止めた。





「愛し子よ、もういいだろう?」






天から光が指し、光の中から神々達が降りてくる。




「神様たち、お久しぶりですね。お迎えにこられたのですね…」




一人の神は、私に繋がれた手錠を外し

一人の神は、私の傷を癒し

一人の神は、私の姿を元の姿に戻した。




「さすがにもうよかろうと思ってな。もう我らの所に戻っておいで」




「あら、死なせてはくれないの?」



そう問うと、神様たちが騒ぎ出した。



「これ以上愛し子(ミオ)が苦しむ姿は見たくないのよ!」


「本当は愛し子(ミオ)が罪に問われたあの時に迎えに行きたかったぐらいだぜ?」


「僕はあの人間と会った時に、呪いは愛し子(ミオ)に移されたんだからもういいと思ってたよ」



神様たちは相変わらず私の事が好きなのですね…




「心配かけて、ごめんなさい。一緒に帰りましょう」




そう言えば、神様たちはみんな笑ってくれた。





私は、この国の建国時に召喚された異世界の愛し子。

それが本当の私。




「…あ、でも少しだけ待ってもらえるかしら?お別れをしたいの」



「…少しだけだぞ」




「ありがとう」




魔法の力でヴィル様の元に飛び向かう。



目の前に降り立てば、怖い顔したままのヴィル様にふふって少し笑えた。




「アベル、リザ、ルイ、ドミニク…名前を言い出したらキリがないわ。あなたと過した時間を私は忘れないわ。もしも、もしもよ?あなたが私の事を愛しく思ってくれる日が来たら、二人の思い出のあの場所に行ってね。そこにある木の下に手紙を隠しておくわ。あなたが私を愛しく思ってくれた時にそれが分かるように魔法をかけるわ。あなたは優しいからきっと苦しんでしまうと思うの。だから全部手紙に認めるわ。あの子と幸せになるのよ。さよなら、ヴィル様」



ヴィル様を優しく抱きしめながら魔法をかける。




あなたが愛しいと思ってくれる日はくるのかしら?




ーーー時が止まった世界なんかじゃなく、あなたの胸の鼓動が聞こえる時に抱きしめたかった。





神様たちの元に戻り、声をかける。




「お待たせしました!帰りましょう!」




ほらっと差し出された神様たちの手を、

私はただ、笑顔で握るだけ。





神様たちと一緒に、またずっと永い時間を天界で。









ーーーーー







時が進み始めた下界では、罪人が消えたと騒がれた。


法により、罪人が消えたとしても、罪人の代わりとして罪人の家族を罪に問うことはできない。


故に指名手配犯として、世に晒されたが、それも数年で取り下げられた。民には理由は分からぬまま。


人々の記憶に残るのは、消えた罪人としてだったが、

それも時間と共に消えた。






ヴィルは、その後沢山の功績を残し、民に慕われたが、

王にはならなかった。


一部王家の人間はその理由を知っている。


罪人として立たされた彼女は冤罪だったと、またそれを企てたのはヴィルが愛した少女であったと。

それを知ったヴィルは、王にならず、生涯を独り身で過し、死ぬ間際まで大事に一通の手紙を繰り返し読んでいた。


また愛し子についてよく調べていたのも有名であった。


手紙は魔法が施された手紙で、ヴィルにしか読めない事から、死後、亡骸と共に燃やされた。









ーーーー愛しいヴィル様へ


この手紙を読んでいるのなら、

私のことを少しでも愛しく思って頂けたのですね。


すごく嬉しいです。


私があの日姿を消してびっくりしましたよね?

ごめんなさい。


これからその理由を書き綴ります。

信じてもらえるか分からないけれど。





この国の建国時に、異世界から召喚された愛し子がいた事を覚えていますか?


それが私、ヴァイオレットであり、

また愛し子として名を語り継がれたミオでした。



愛し子が、神様たちに愛され神の世界へ行ったと、

歴史の最後はそこで終わっていますが、

神の世界に時間の括りはなく、

私はずっともう何百年と生きているのです。



何百年も上からこの国の様子を見ていました。

そこであなたを見つけたのです。




あなたはどんな境遇でも強く生きていました。

周りと手を取り合い、支え合っていく、

疎まれようと、捨てられようと、いつも前向きで

我慢強く、愛情深い、そんな人でした。




魂は、神様から消滅を言い渡されない限り、

何回も何十回も生きる姿だけを変え、

魂はそのままで生まれ変わります。



あなたは何度生まれ変わっても、

強く正しく、光り輝いていました。



でも…いつも若くして死んでしまう。

あなたは呪われた魂を持っていたのです。




それに気付いた時にはもう、

私はあなたを愛していた。



だから神様にお願いをしたのです。呪いを解いて欲しいと。

ですが、それはできないと言われました。

人間のためにそこまでする意味がわからないと

理解して貰えませんでした。



ならば、私に呪いを移してくださいとお願いしました。


神様たちもそれならばと、

私の願いを叶えてくださいました。

呪いを移すために、魂同士が接触しないといけないため、

下界に行きたいという我儘も聞いてくれました。


何よりもあなたの瞳に一度で構わないから

私自身を映して欲しかった。



あなたの事だから、なんで俺のためにそこまでって思ってしまったかしら。


でもそこは本当に気にしないでほしいのです。

私は神様が飽きるまで、

まだまだ永い時間を過ごします。


その間に生まれ変わりはないですし、

私がいつか死ぬ時がきたら、

魂の消滅をお願いするつもりでした。



だからね、ヴィル、気にしないで。





あなたと過ごした18年間は本当に幸せでした。

ヴィル様は、私の初恋だったんです。

異世界でも、こちらに召喚されてからも

私は恋を知らずに生きてきたのです。

私に恋を教えてくれたヴィル様には感謝しかありません。



そして私が死ぬ運命だったのも、呪いのせいです。

あなた含め周りが私を信じられなかったのも、

また呪いのせいです。


だからあなたは悪くはないのです。



こんなに言ってもまだあなたの事だから、

自分が悪いと責めてらっしゃるでしょう?



なら、私はあなたを救ったヒーローだと思ってください。

悪いと責めるのではなく、感謝してくださいな。



私は愛し子になって良かった!って思えましたのよ。

神様たちに愛される魂で良かった。

永い時間を生きてきた意味がありました。




だから私は幸せです。




これが全てです。きっと信じ難い話だと思います。

だから信じるか信じないかはヴィル様に任せます。



でも、もしも私を信じてくれるのなら、

時が来たら、逢いに来てくださいね。




ーーーーーヴァイオレットより















ーーーー数十年後






愛し子(ミオ)様に、逢いたいとおっしゃっている魂がおります。どうされますか?」


「……その魂の名前を聞いてもよろしいかしら?」



「はい、名前はーー








これは私の初恋の話。

最後まで読んで頂きありがとうございます!

誤字脱字、またはストーリー上の矛盾や違和感等

ありましたら、申し訳ありません。

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― 新着の感想 ―
[一言] 面白かったですが、王子に壮絶ざまぁがないのが残念でした( ;´・ω・`)
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