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全力少年時代  作者: 野神真琴
第一次峰が丘合戦
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チェーホフ

「石でも拾って投げた方が良さそうやな」と僕は言った。ムラサキは持っていた輪ゴムと水鉄砲を放り出して「そのピストル、貸しなさいよ」と言い、あっくんのズボンに挟まれたベティに手を伸ばす。

 あっくんはムラサキの手をかわして、素早くベティを抜き取ってスライドを引き、銃口をムラサキの頭に向けた。これから手を交わして協力するというのに、この2人は未だに険悪だ。


 あっくんの早業に成す術を無くしたかの様に思えたが、ムラサキは隣に居たヤーさんのエアガン(トカレフ)を素早く奪って、銃口をあっくんの横に向けると、意図してか意図せずか、引き金を引いた。爆音と共にトカレフのスライドが動き、薬莢が横へ飛び出す。弾丸は真っすぐ飛んでいき、あっくんの後ろに在った木には穴が開いた。どうやらエアガンでは無いらしい。


「エアガンってこんなにも威力あるの?」と、ムラサキは素っ頓狂な事を言った。九死に一生を得たあっくんは、腰を抜かして地面にへたり込む。


「ヤーさん、これ本物のチャカとちゃうんけ?」


 ケイ君が問いかけてもヤーさんは何も言わないが、ヤーさんは大量に発汗している。


「えっ? これって本物?」とムラサキが僕に尋ねたので、僕は「みたいやな」と返した。ムラサキは「きゃぁあ」と叫んでトカレフを放り投げた。トカレフはあっくんの横に落ちて、あっくんも「うぁああ」と叫んだ。


「暴発したらどないするねん」

「ぁあ、ごめんなさい」

「ごめんですむかいな。危うく巨人に殺される所やわ」

「だって、本物のピストルだなんて思わないじゃないの。だいたいこんなの何処から持ってきたのよ?」


 ムラサキの問いかけにヤーさんは「家にあった」と小さく返した。


「とりあえず、こんなんあったらシャレならんで」と言って、僕は地面に落ちたトカレフを拾った。エアガンの様なちゃちなオモチャとは違う、そこには本物の重さを感じる。弾倉を抜き取るとそこには弾が入っていて、1発1発が死の匂いを漂わせている。薬室からも弾薬を取り出し、僕はトカレフ片手に「どうするよ?」と皆に尋ねた。


「ヤーさんが持って帰るか、とりあえず何処かに隠すかやな」とケイ君が言うと、ヤーさんは「隠す」と返事した。僕は「いや、持って帰れよ」と言ったが、ヤーさんは何も言わなかった。


 ケイ君が「とりあえず……」と、何かを言おうとしたタイミングで、後ろから「チリン、チリン」と甲高い音がして、皆の肩がビクついた。後ろには自転車に乗ったアランがいた。


 ムラサキが「びっくりさせないでよ」と言ったが、アランは首を傾げながら微笑んでいた。僕は一瞬、どうしてアランが居るのだろうと思ったが、そういえば今から小林を泣かしに行くのだったと思い出した。アランが乗っている自転車の前カゴには野球の木製バットと、グローブとボールが2個入っている。もしかすると、アランは今から皆で野球をすると勘違いしているのかもしれない。


 小林への復讐やミズゴロウの奪還作戦どころでは無いし、アランに野球をするのではないと説明している場合でも無い。今はトカレフをどうするかの問題だ。


「このチャカは持って帰られへんのけ?」とケイ君が訪ねると、ヤーさんは黙って頷いた。ヤーさんがこの拳銃は本物だと知ってて持ってきたのか、そして、どうして持って帰らないのかは謎だ。きっと、ヤーさんに聞いても何も答えないだろう。ケイ君は「解った、一旦俺の家で預かる」と言った。これから始まる小林軍団との死闘に、本物の拳銃は過剰戦力だ。



 僕達は自転車に乗って一度ケイ君の家へ向かった。それから自転車で北川住宅の近くまで行き、コインパーキングの奥に自転車を隠した。ちゃっかりとアランもついて来た。


 ケイ君は自転車の前かごに入っていた緑の鞄から、オモチャのサングラスを人数分取り出し、みんなに渡しながら「これで目は守れるやろ」と言った。


 僕達は北川住宅へ歩いて向かいながらサングラスをかけた。ケイ君はタバコを吸いながら歩き、アランはニコニコしている。あっくんはしかめっ面のままだし、ムラサキは妙にサングラスが似合っている。安物のオモチャサングラスでも、彼女がかければジャッキー・オーの様に見えた。僕もサングラスをかけて、手に汗とスリングショットを握っている。


 映画「レザボア・ドッグス」のオープニングみたいだ。頭の中ではリトル・グリーン・バッグが流れた。軽快なベースラインとは裏腹に、僕の足取りは重い。


 北川住宅に着くと凹んで穴が開いた空き缶や、アルミホイルの切れ端がポイ捨てされていた。落ちている空き缶はガスガンの犠牲になったのか、バッグに入ったグリーンを吸う為に使われたのかは解らないけど、いまさらバックは出来ない。


 僕達が足を踏み入れて直ぐに、アランが「アウチッ」と言って、持っていたバッドとグローブを投げ捨てた。


「アランが狙撃されたぁ」とあっくんが叫ぶ。


 斯くして、第一次峰が丘合戦が始まった。




§〜○☞☆★†◇●◇†★☆☜○〜§




 トカレフはケイ君が預かるべきじゃなかったんだ。全てがトカレフのせいって訳じゃあないけれど、とんでもない事件を起こしてしまう要因になったのは確かだ。その話はもっと後に語る事に成るだろう。


 読者諸君だって解ってるだろ?

 チェーホフの銃ってやつだ。

 チェーホフのトカレフってやつなんだ。

※フィクションです。


間に合ったぁああああ

危ない所です( ;∀;)


添削出来てないからミスが多いかもです

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