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妖縁奇縁  作者: T&E
70/76

最終話 奇縁 その3

(ん・・・、おっと、

いつの間にかわしも寝ておったようじゃ・・・)


(史陽、は・・・、まだ起きておらんようじゃな)



それからいくらか時間が経った後、

真狐が静かに目を覚ます


膝元を見ると少年はまだ眠っており、

外へ目をやると既に日が傾き始めていた



(むう・・・、どうやらわしもそれなりに

眠ってしもうたようじゃな・・・)


折角史陽と二人きりじゃったのに、

この時間を機会も逃してしもうたか・・・)


(寝顔を眺めたり、頭を撫でてみたりと、

したいことはいくつもあったのじゃがな・・・、

まあ済んでしもうたものは仕方がない)


(そういえば、つかの間に夢を見たような気もするが・・・、

はて、どんな内容だったやら・・・)



貴重な時間を消費してしまったことを残念がりつつ

自分が少しだけ見た夢について考えようとする真狐


しかし、覚えていないものについて思考を働かせても

どうにかなることはなかったため、

それも長く続くことはなかった


そこへ少年が身じろぎをし始めたため、

真狐は夢のことなど完全に忘れてしまう



「おっと・・・、史陽よ、起きたかの?♪

目が覚め切ってないとしても、

もう少しすれば夕餉じゃろうから起きた方が良いぞ?♪」



優しい声をかけられたこともあり、

少年は意識が急速に覚醒し始めため

ゆっくりと目を開ける


そして、目の前にあるたわわな双丘へ焦点が合ったところで、

自分がどこにいるかを認識し、慌てて飛び起きた



「おはよう史陽♪ 随分元気の良い起床じゃったな?♪

そんなに食事が楽しみかの?♪」



意図が分かりやすい行動に楽しそうな笑みを浮かべつつ

からかうような言葉をかける真狐


少年は、頬を掻きつつ恥ずかしそうな笑顔を見せ、

改めて起床の挨拶をした



「ふふ・・・♪ わしの膝枕は良く眠れたようじゃな?♪

お主にやってあげたのはあの時以来じゃが・・・、

あの時と変わらぬ反応はなかなか可愛いかったぞ?♪」


「とはいえ、この恰好では少々刺激が強いのも

やむなしかのう?♪ ふふ・・・♪

お主に全てを曝け出せる日はまだまだ先ということか♪」


「とはいえ、それを待つのもまた

一つの楽しみであることは確かじゃな♪」



少年の相も変わらない顔を見れたためか、

はてまた膝枕中に眠っていた時間を取り戻すつもりなのか、

真狐は饒舌にあれこれと言葉をかける


返答に困った少年は、話を逸らすつもりなのか

海狸と玲香はどこへいるかを尋ねていた



「ああ、あの二人ならばわしらを残して外出したが、

夕食の準備もすると言うておったな」


「呼びに来るとは言うておったがもう良い時間じゃろう、

わしらの方から行くとするか♪

お主も夕食が気になることは確かじゃろうからの♪」



そう言うと、真狐は立ち上がって背筋を伸ばし

気持ち良さそうに一つ息を吐く


その動作で弾む豊満な乳房から顔を背けつつ、

話題が変わったことに胸を撫でおろしながら

少年は真狐と共に部屋を出た



真狐と少年が二人を探して外へ出たところで、

すぐ近くにいた海狸と玲香の存在に気付き近付いていく


少年たちの存在に気が付いた二人は、

作業の手を止めて話しかけてきた



「あっ、二人とも起きたんだ♪ 良く眠れた?♪」


「こちらの準備も大体終わりましたので、

そろそろ呼びに行こうと思っていたところでした♪」


「おお、それはちょうど良かったのう♪

それで・・・、これが今日の夕餉か?」


「うん、と言ってもまだ材料の段階だけど・・・、

史くんは当然これが何か分かるよね?♪」



用意された器具や食材を見せながら、

海狸が少年に問いかける


そこにあったのは、切り分けられた肉や野菜と

食材を指すことに適していそうな金串、

そして炭が入れられ網も乗せられた焚き火台


紛れもないバーベキューの準備がされており、

少年は思わず顔を綻ばせながら

海狸の問いかけに答えた



「そ、正解♪ 今日のディナーは

豪華なバーベキューだよ♪」


「ばーべきゅー、とな? 聞いたことが

あるようなないような・・・、

それは一体どういう料理じゃ?」


「簡単に申し上げますと、こちらの串に食材を刺して、

網の上に置いて炭火で焼くのです♪」


「ほほう、そういう食べ方をする料理か♪

火にかけるとは古き趣のある手法じゃな♪」


「その言い方はおしゃれじゃないな~、まあいいけど♪」


「では、全員集まったことですので、

そろそろ火を入れましょうか?」


「あ、それじゃあお願いしよっか♪

玲香ちゃん、頼んだよ♪」


「はい、では皆さま少し離れていてくださいね?

・・・よいしょっと」



火を点けると告げた玲香は

置いてあったバーナーを手に取ると、

台の横側から中へ火を入れた


すると、火はすぐに木炭へ移り、

段々と煙が上がり始める



「おお!? 一瞬で火が点いたぞ?

一体どういう絡繰りじゃ?」


「そうですね、詳しい説明は省きますが、

つまりはこの炭に燃えやすくなる仕掛けが

施されているのです♪」


「なるほど、そういうものか・・・、

っと、こほっ、煙が・・・」


「あ、あんまり近付くと煙たいよ?

真狐ちゃんこっちに・・・」



バーベキューコンロを近くで覗き込んでいた真狐だが、

風にあおられた煙が顔へ来たため咳き込んでしまう


それを見た海狸が真狐を煙から遠ざけようとしたが、

言い終えるよりも早く少年が真狐の手を取り

風上へと誘導した



「けほっ・・・、お、おお・・・、

史陽、すまんな・・・」



涙目になりながらも、少年にお礼を言いつつ

軽く握られた手へ意識を向ける真狐


しかし、少年は真狐を移動させることしか

考えていなかったらしく、目的を果たすと共に

その手は何の葛藤もなく放されてしまった


反射的に名残惜しい表情を見せる真狐だが、

少年から不思議そうな目で見られたために

慌てて取り繕う言葉を口にする



「う、うむ・・・、ばーべきゅーとは

煙の出やすい料理のようじゃから、

あまり近付くのは良くないのじゃな」


「そ、そうだね真狐ちゃん、

それじゃあ網が温まってきたころだろうし

焼き始めようか?」


「そうですね、では皆様、この串に

好きな食べ物を刺して網へ置いてください♪



真狐の言葉へ続くように海狸と玲香が口を開き、

全員の意識を料理へと向ける


少年は率先して串を取り、自分の好きなものを、

主に肉類を串刺しにしていた・・・


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