最終話 奇縁 その2
「「「ごちそうさまでした♪」」」
建物に戻った四人は、用意してあった弁当を食べ終え
一息ついていた
「や~、かなり美味しかったね~♪
こんなお弁当食べたの久しぶりだよ♪」
「ふぅむ・・・、持ち運びできるように作られてなお
これだけの質を保てるとは恐れ入ったわい♪」
やはりと言うべきか、出されたものは
かなり高級な品だったらしく、
それぞれ満足そうな顔を見せる真狐と海狸
少年も、充分堪能できたらしく
玲香に自然とお礼の言葉を告げていた
「まあ、ありがとうございます♪
皆さまがお気に召していたださったようで何よりですわ♪」
「うん、ほんと美味しかったよ♪
ところで、ご飯の後すぐに聞くのもなんだけど、
夕食は「あれ」をするんだよね?」
「ええ♪ 夕食までは時間がありますので、
頃合いを見て用意させていただきます♪」
「む、なんじゃ? 夕餉には大層なものを
用意してあると言うのか?」
「そゆこと♪ まあ楽しみに待っててちょうだい♪
それじゃ、みんなでたっぷり遊んだことだし、
夕食までは自由行動ってことにしようか?」
「そうですね、この建物内には色々ありますので
自由に過ごしてもらって構いませんが、
外出される際はあまり遠くへ行かれないように」
「ふむ・・・、では言われた通り
夕食は楽しみに待っておくとして・・・、
それまではどうするかの、史陽?」
自由に過ごしていいと言われ、
少年は建物内を探検しようと考える
しかし、それを真狐へ伝えようとしたその時、
大きなあくびが勝手に出てしまった
「おや・・・、ふふ♪ どうやら史陽は
少々眠くなってしもうたようじゃな?♪
今日はわしと一緒に昼寝をするか?♪」
「あらら・・・♪ ま、あれだけ遊んで
お腹いっぱいに食べたんじゃ
眠くなって当然だよね♪」
「それでは、夕食までひと眠りされても構いませんよ?♪
何か体にかけるものでも用意しましょうか?♪」
「そうだ♪ お昼寝するなら、いっそのこと真狐ちゃんが
膝枕でもしてあげればいいんじゃない?♪」
「それは・・・、無論わしはいいが
史陽が恥ずかしがるのではないかの・・・?
何分今はこの恰好じゃし・・・」
膝枕、という提案に頬を赤らめつつ
現在の姿を鑑みて海狸の提案に疑問を呈する真狐
少年も、水着の真狐に膝枕されることが
少し恥ずかしいと思ったらしく、
その提案をやんわり拒もうとする
しかし、口を開けた瞬間再びあくびが出てしまい、
あまりのんびりと会話をしていられないことに気が付いた
更に、眠くなったことを意識してしまったためか
段々と瞼も重くなり、それに伴い考える力もなくなっていく
とにかくひと眠りしたいと考え、
少年は素直に真狐たちの提案へ乗ることとした
少年が目をこすり、頷く動作を取りながら
昼寝したいことを告げると、
真狐が驚きながら照れたような笑顔を浮かべる
「え・・・、なんじゃ、膝枕で良いのか・・・?
いや、まあ、わしはさっき告げた通り構わんが
お主が恥ずかしくは・・・」
「もう、真狐ちゃんったら♪ 史くんが
膝枕して欲しいって言ってるんだから
素直にしてあげなよ♪」
「そうですわ、真狐様♪ 私たちのことは気にせず
どうぞお二人でゆっくりなさってください♪」
「むぅ・・・、ん・・・、で、では、
お言葉に甘えようかの・・・♪
よ、よし・・・、史陽、こっちへおいで・・・♪」
二人に背中を押されて一応は決心したのか、
真狐はどこかぎこちない動作で迎え入れるように
手を広げつつ少年の名前を呼ぶ
とはいえ、その頬は非常に緩んでおり、
嬉しさを感じていることは傍から見て丸分かりだった
少年は、静かな言葉で返事をすると、
膝立ちでゆっくりと歩み寄り、真狐の膝へ頭を乗せる
そのままほどなくして、静かな寝息を立て始めた
「寝ちゃったね・・・♪ 史くんったら
随分寝つきがいいじゃん♪」
「真狐様がお側におられるのです、
安心なさっておられるのでしょう♪」
「それにしても、水着の真狐ちゃんに
膝枕してもらおうだなんて今日だけで随分大胆になったね~♪
遊び始めたころはおっぱいが揺れる度に目を逸らしてたのに♪」
「少しは見慣れた、ということなのでしょうか?♪
とはいえ恐らくは単純に眠かっただけというのが正しいかと♪」
「こ、これ、二人とも・・・、
もうちっと声を落としておくれよ・・・?♪」
「おっとごめんね?♪ じゃ、私たちは
夕食の準備とかも兼ねて外に行ってるから、
真狐ちゃんも休んでていいよ?♪」
「良い時間になればこちらからお呼びしますので、
気にせず休憩なさっててくださいね♪」
「う、うむ・・・、ではお言葉に甘えるとするか・・・♪」
海狸と玲香の好意へ受け取ることにした真狐は、
静かに部屋を出ていく二人へ小さく手を振ると
改めて少年へ視線を向ける
少年は相変わらず静かな寝息を立てており、
真狐の膝へ頭を乗せたまま幸せそうに眠っていた
(良く眠っておるな・・・、
本当にとても安心しておるようじゃ・・・♪)
(二人の言う通り、わしの膝があるから
このように眠れておるのかのう・・・、
もしそうならば、とても嬉しいぞ・・・♪)
(こうしてお主に膝を貸すのはあの時以来じゃが・・・、
やはりあの時と変わらぬ純粋さを持ったままじゃのう)
(そして、あの時よりもずっと距離は縮まったはず・・・、
だというのに、なぜ呪いは最後まで解けておらんのじゃ)
(いや、その原因は分かっておる・・・、
史陽がこうして心を開いてくれている以上、
わしからの歩み寄りが足りないとしか言いようがない)
(一体何が足りないのか・・・、
やはり幾度となく考えてみても
答えなんぞそうやすやすと浮かばぬものじゃな・・・)
(じゃが、ひとまずは・・・、
この久方ぶりに訪れた二人きりの時間を
楽しむことにしようではないか・・・♪)
(それに、答えを見つける手掛かりに
なるやもしれんからのう・・・♪)
あれこれと考えていた真狐だが、
最終的には思考を放棄し、少年の頭を
優しく撫でながら慈しみの笑みを見せる
そして、習慣からか習性からか、
自分もそのまま寝入っていた・・・




