最終話 奇縁 その1
最終話 奇縁
それからというもの、
四人は色々なことをして遊び尽くしていた
ボールなどの道具を使った動く遊びや、
砂浜に山を築きあげる静かな遊び、
そして海で軽く泳いだり
それぞれがやりたいことに全員で取り掛かり、
この場所を堪能し続けていた
最初こそ少しぎこちなかった史陽と真狐だが
次第に何も気にすることなく
心の底から遊びを楽しんでいる
「ほれ史陽♪ 球がそっちへ行ったぞ♪」
「よっし♪ 史くんこっちにパス♪
それっ♪ 玲香ちゃん行くよっ♪」
「はいっ♪ ではまた真狐様へ♪」
用意してあったビーチボールを使い、
パス回しをするという簡単な遊びを続ける真狐たち
ごくごく単純なものではあるが、足元が砂浜なうえ、
ボールが風で動くことも何度かあり、史陽や玲香はもちろん
運動が得意な真狐や海狸でも時折ボールを落としていた
もちろん全力でボールを追う気がないことは事実だろうが、
何がどうなるか最後まで分からないこの遊びを
誰もかれもが思い切り楽しんでいる
「・・・おっと、ありゃ、思わず掴んでしもうたわ、
それにしても、鞠遊びなぞ久しぶりじゃのう♪」
「あの頃に比べると、こういう球一つでも
色々な遊びができちゃうんだよ♪
たまにテレビとかでやってるでしょう?♪」
「あるにはあったが、やり方がよく分からず
すぐに興味が移ってしもうとったな、
しかしやってみると随分楽しいものじゃ♪」
「楽しんでもらえているようで何よりです♪
遊具を用意しておいた甲斐がありました♪」
遊びが一度中断されたところで自然に会話が始まり、
真狐たちは何気なく嬉しそうな顔を見せた
少年は、自分も充分楽しめていたことを伝えつつ
玲香に改めてお礼を告げる
「まあ♪ 史陽様にそう言ってもらえると
とても嬉しいですわ♪」
「ボクからもお礼を言っておこうかな?♪
こういうの、随分久しぶりだったし♪」
「うむ、ではわしも改めてお礼を言わねばのう♪」
「うふふ♪ 皆様ありがとうございます♪
私こそ、随分楽しませていただいておりますのに♪」
この貴重な時間を提供してくれた玲香に
真狐と海狸もお礼を言う
その言葉に玲香が思わず頬を綻ばせたところで、
不意に小さな音が鳴った
「あれ? 今ひょっとして誰かのお腹が鳴った?」
「わしも聞こえたが・・・、今のは多分、
史陽ではないか?」
耳の良い二人が音に気付き、
真狐が少年の名前を口にしたため
三人が一斉に少年の方へ視線を向ける
少年は、思わずお腹を押さえながら
顔を赤らめて自分の腹から出た音であることを伝えた
「あらあら♪ そういえば、
そろそろお昼に差し掛かる頃でしょうか♪」
「そうだね~♪ 遊びっぱなしだったから
それなりにお腹も減ってるかな♪
ちょっと早いけど、お昼ご飯にしちゃおっか?♪」
「ふむ、そうじゃのう・・・、
そろそろ休憩しても良かろうな♪」
「では、昼食にしましょうか♪
あちらにお弁当を用意しておりますので
一度戻りましょう♪」
「ん♪ じゃあ史くん行こっか♪」
食事の用意が既にできていると聞いて
少年の顔に嬉しそうな笑顔が浮かぶ
しかし気を緩めた瞬間、
そのお腹がもう一度盛大に鳴ってしまう
少年の顔は自然に赤くなり、、
それ以外の三人が一拍遅れて微笑んだ




