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第九話 謳歌 その5
早々に着替え終わった少年は、
部屋を出て女性陣の様子を軽く伺ってみる
会話の内容こそ分からないものの、
楽しそうな笑い声ばかりが聞こえてくるところを見ると
着替えが進んでいるようには思えなかった
多少待っていた程度では終わらないと判断し、
一人で目的の浜辺まで歩き出す
そして扉を開け、アスファルトの地面を通り抜けると、
抑えきれない高揚に身を任せ、
低めの階段も無視して砂浜の上に飛び降りた
着地と同時に体を起こし、
移動中に何度か見た景色を改めて間近に見た瞬間、
少年の口から思わず嬉しそうな声が上がる
太陽の光に照らされ一層輝く砂浜に、
どこまでも広がっていると思えるくらい広い海
浜辺は入り江のようになっており、
周囲は綺麗な木々に囲まれていた
更に言うと、周囲には人の姿など一つも見えず、
何の気兼ねもなく遊ぶことができると言っても差し支えない
思わず水の中へ飛び込みそうになる少年だが、
海狸の言葉を思い出し、
はやる気持ちを抑えて三人を待つことにした




