第八話 看病 その7
「じゃあ、その線でいける?」
「はい、全部問題ありません♪」
「すっごく助かるよ♪ さすがのボクも
ここまではできないからさ~♪」
「いいえ、私としても持て余しておりましたから、
使には良い機会です」
話し合いを終えた二人はどちらともなく立ち上がり、
ふと側にあった時計を見る
「おっと、思ったより時間かかっちゃってるね」
「あら、本当ですね、真狐様たちは
まだお部屋でしょうか」
「う~ん・・・、多分、真狐ちゃんも
史くんと揃ってお昼寝しちゃってるかも・・・、
いっつもそうだし、今日はいろいろあったし」
「であれば、私はこのままお暇させていただきますわ♪
お二人によろしく言ってください」
「うん、看病とか、いろいろありがとうね~♪」
「では、予定が決まればまたご連絡いたします」
「ありがと、またね~♪」
玄関まで歩きがてら話していた二人は
到着したところで別れを告げた
「さて、と・・・、一応二人の様子を見ておこっか」
一つ背伸びをした海狸は、階段を上がり
少年たちがいる部屋の前に立つ
そして、葉っぱを剥がすと
音を立てずに扉を開け、中を覗き込んでみた
(・・・うん、やっぱり寝てるね・・・♪)
(もう少し、寝かせておいてあげようかな・・・♪)
(・・・っていうか、ただのお昼寝で
さりげなく見せつけてくれるね~♥)
ベッドの中で寝息を立てる少年と、
そこへ倒れ伏すように眠る真狐
眠りながらも互いを離さない、
二人の握られた手を見つけた海狸は
思わず笑いそうになっていた
(あの分なら、やっぱり大丈夫だと思う・・・)
(でも、早く仲良くなってもらわないと、
私もそろそろ楽しみたいんだよね~♪)
(待っててね真狐ちゃん、きっと「真実の愛」を
見つけられるようにしてあげるから・・・♪)
(それと史くん・・・、今年の夏は、
忘れられない体験をさせてあげちゃうよ~・・・♥)
心の中でそう呟き、どことなく妖しく微笑みながら、
海狸は扉を静かに閉じる
そして、楽しそうに尾を振りながら
階段を下りて行った
少年の日常は、大きな転換を迎えることになる




