第一話 邂逅 その4
その後、昼食を終えた少年はしばらく頂上を散策し、
あれこれとつまらぬものを夢中になって拾い集め、
片っ端からリュックの中に詰め込んでから帰路に就く
ガラクタでいっぱいのリュックを背負った少年が家に着いたのは、
真っ赤に染まる夕日が沈み始めた頃だった
一声掛けながら家の中に入った少年は
二つの返事が返って来たことで、両親が既に帰宅していることに気が付く
すぐさま台所へ行き、空の弁当箱を母親に渡すと、
弁当が美味しかったことを告げる
そして父親にも挨拶をすると、少年はすぐに自分の部屋に戻り、
リュックに詰め込んだ石ころなどを取り出して机に並べてみて、
ひとしきり手に取っては今日の思い出を反芻し始めた
その後、母親に呼ばれ食卓に着いた少年は、
食事の間中今日の思い出話を両親に話し続ける
山から見えた町の景色、途中にあった寂れた社、頂上で拾った石など、
今日体験した出来事をほとんど全て話していたが、頂上で出会った不思議な
狐のことだけは伏せていた
野生の動物に遭遇したと話せば両親が心配すると考えたのか、
いなり寿司で狐を追い払えたことなど信用してもらえないと思ったのか、
いずれにせよ、少年は狐に関することは何一つ言わなかった