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妖縁奇縁  作者: T&E
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第四話 強敵 後編 その3

「ふぅん、そっかぁ~、キミから見ても真狐ちゃんはやっぱり美人か~、

おまけにそんなはっきり好きって言っちゃうなんてね~♪」


「これ聞いたら、きっと真狐ちゃん喜ぶよ~、

多分真狐ちゃんも、キミのこと大好きだもん」


海狸の言葉に、少年と真狐は、離れていながらも同時頬を赤く染める


(むぅ・・・、本当のことじゃが、他者から言われると

それはそれでこそばゆいものが・・・)


真狐としては何度も口にした少年への好意だが、

他人から言われるとどこかくすぐったいのか、

照れながら頬をかいている


一方少年は、何度言われても好意を示されることに慣れないのか、

真狐が自分のことを好いているとはっきり言われ、照れているようだ


「くすくす♡ 本当のことだし、恥ずかしがらなくてもいいと思うよ~♪」


「二人とも、お互いに好き合ってるみたいだし、

なんだかんだ言ってお似合いだね~♪」


海狸の言葉に殊更照れた少年は、

頬を真っ赤にさせて俯き始めた


「でも~・・・、ちょっと物足りないとか、

もどかしいとか、そういうこと思ってな~い?♡」


そんな少年の隙を逃さず、海狸が顔を迫らせながら質問する


少年は、海狸に言葉の意味を尋ねながらさり気なく体を後ろに逸らした


しかし、海狸によって少年はすっかり壁際に追いやられており、

ほとんど距離を取ることが出来ない


そんな少年に詰め寄りながら、海狸はさらに言葉を続けた


「だって~、真狐ちゃん、おっぱい見せたり、

触らせたりとかしてくれないでしょ~?♡」


「そういうこと、興味ないわけじゃないよね~?♡

恋人同士なんだししてみたいって思ったことくらいあるでしょ~?♡」


妖しい視線を向けながら、少しずつ少年に顔を近づけつつ

質問を続ける海狸


わずかな抵抗のつもりか、少年は両手を前に持ってきて、

海狸を遮るような恰好を取りながら狼狽えている


「ねえ、どうなの~? ちゃんと正直に答えて~♡」


「そういうことしてみたいと思ったこと、

一度たりともないなんて言わせないよ~?♡

男の子なら、興味を持って当たり前だも~ん♡」


「さあ答えて、物足りないとか、もっと色んなことをしてみたいって

思ったことはないの~?♡」


少年の行動など意にも介さず迫り続ける海狸


狼狽えながらも、少年は声を振り絞って否定した


(そうじゃ史陽、わずかたりとも肯定してはいかんぞ!

隙を見せればこいつはここぞとばかりに詰め寄ってくる!)


画面を通し、二人の会話や様子を見ている真狐の応援にも熱が入ってくる


「ほんとに~?♡ どうして~?♡ ボクがパンツなんかを見せようとした時の

反応を見る限り、興味を持ってないはずはないんだけどな~?♡」


「それとも嘘ついてるの~? だとしたらいけないよ~?

正直に答えてくれなきゃ、お仕置きしちゃおっかな~?」


突然表情を変え、恐ろし気なことを言い出す海狸


少年は慌てて邪な考えを持ったことがない理由を

海狸に説明し始めた


「ふ~ん、なるほどね~、真狐ちゃんの呪いを解くために、

「真実の愛」を得るためにそういうこと考えないんだ~♪ 偉いね~♡」


「でも~、ぜ~んぶ真狐ちゃんのためにやってるんだとしたら、

キミには何の「得」があるの~?」


海狸の言葉に疑問を抱き、今度は少年が意味を聞き返す


「そのまんまの意味だよ~?♪ だって、呪いを解くことや、

そのために「真実の恋」を得ること、

何もかも真狐ちゃんの都合だし、協力したところで、

今のところキミには一つもいいことがないじゃない?」


「言ってみれば、キミは真狐ちゃんのわがままに

付き合わされているだけなんだよ~?

それでも全然構わないって言うの~?♪」


(くっ・・・、あいつめ、ここぞとばかりに好き放題言いおって・・・)


ひどい言い方ではあるが、同時に言い逃れのできない

核心を付いた海狸の言葉に、真狐は歯噛みしながら画面を睨み付ける


(じゃが、もしもこれで史陽が迷う素振りを見せてしまったら・・・、む?)


そして再び心配そうに少年を見つめる真狐だが、

少年は、真狐や海狸が予想もしなかった反応を見せた


先ほどまで狼狽えていた少年は、頬を膨らませ、

一転して逆に顔を迫らせながら海狸の言葉を否定する


そして、真狐と共に居て楽しいことはいくらでもあることを

堂々と海狸に言い放った


「そ、そうなんだ~、ごめんね~、真狐ちゃんのことを

悪く言うつもりはなかったの~」


「ただ、キミが不満を感じてないかな~って心配していただけで、

そうじゃないなら別に構わないよ~」


予想外の反応に驚いてしまったのか、今度は逆に、

海狸が狼狽えながら少年に謝罪する


その様子を見ていた真狐は、もはや声を殺すことも忘れ、

大きな声で叫んでいた


「よくぞ言った! さすがわしの見込んだ男じゃ!」


そこまで言った後で、ようやく声が大きいことに気が付いた真狐は、

慌てて自分の口を塞ぐ


しかし、依然として画面の向こうにいる二人が

真狐の声に気が付いた様子はない


(また聞こえなかったとでも言うのか・・・?

どうも妙じゃ・・・)


真狐が訝し気に画面を見ていると、

向こうでは海狸が一度咳払いをしてから改めて話をしていた






「こほん・・・、とにかくキミが真狐ちゃんとの関係に、

何の不満も持っていないということはよく分かったよ~」


「これでも一応真狐ちゃんの友達だし、キミのことも気に入ってるから、

二人の関係をそれなりに心配していたんだ、ごめんなさい」


少年をなだめるために、頭を下げて謝罪しつつ、

失礼な言動の理由も同時に告げる海狸


先ほどの言動は、自分たちのことを考えてくれていたものだと分かり、

少年は慌てて頭を上げるよう海狸に言う


「いいの・・・? ボクのこと、許してくれるの~?」


元々そこまで怒っていたわけではなかったのか、

少年はむしろ短絡的に怒りを露わにしてしまったことを謝罪しつつ、

海狸のことを許すとはっきり告げた


「良かった~、キミ、やっぱりすごくいい人だね~」


「なんだかキミのこと、ますます気に入っちゃった~・・・♡」


少年に許され、海狸は満面の笑みを浮かべたと思えば、

次の瞬間には頬を染めながら艶っぽい視線を少年に向ける


その視線に何かを感じてしまったのか、

少年は慌てて海狸から視線を逸らす


(・・・これで多少は流れが戻ったかな、

あそこから私に目を向けさせようと思ってたのに、

流れを断ち切られるとは考えてなかったよ)


(それにしても、もっと下心とかあるのかと思ってたけど、

真狐ちゃんとの関係は真剣に築いてくれてるみたいだね・・・)


少年に視線を向けたまま、海狸が心の中で呟く


(それだけに残念だよ・・・、

ボクも本気で二人の関係を壊さなくちゃいけないなんて・・・)


(キミが人間である以上、妖怪と結ばれちゃいけないんだ!)


少年が目を逸らしている間に、一瞬だが海狸の目つきが鋭くなる


その瞬間を画面で見ていた真狐は、

不穏な空気を感じ始めた


(まさか・・・、こやつ全力で仕掛けようというわけではあるまいな)


そして、万が一にも嫌な想像が現実にならないよう、

画面に呼びかけて海狸を制止する


「これ・・・、これ、海狸! もう悪戯は良いであろう!

これ以上何をする気じゃ!?」


しかし、真狐が何度声を上げても、二人は全く反応しない


「あやつめ・・・、お互いの声が聞こえるようなことを言っておきながら、

こちらの声は向こうに聞こえておらんではないか!」


「ええい! ならば直接言って止めるまで・・・、わっ!」


少年の部屋へ行こうと真狐が立ち上がった瞬間、

何かに足を引っ張られ、倒れてしまう


「な、なんじゃこれは・・・、足に何かが・・・」


真狐が自分の足を見ると、庭から伸びる植物の蔓が足に絡みついていた


「くっ・・・、海狸の仕業か・・・! まずいぞ・・・、

今のわしに、こんな術を解くほどの力があるかどうか・・・」


足を捕らえた蔓は段々と伸びていき、太ももへ到達する


そしてゆっくりと、捕らえた獲物を逃がさないといわんばかりに、

服の中へ入っていく


「ぐぅっ・・・、これは間違いなく海狸の術じゃな・・・!

いや、そんなことよりも、史陽・・・!」


真狐は画面に向かって少年の名前を叫んだが、

やはりその叫びは届いていなかった

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