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妖縁奇縁  作者: T&E
32/76

第四話 強敵 後編 その1

人の気配がする扉の前に立った海狸は、

部屋に入ってからの流れを考える


まずは部屋の内装を確認し、スマートフォンを置くための

手頃な場所を見つけること


そして適当な理由で気を引いて、

さりげなくそこに置いてしまえばいい


例え気が付かれたとしても、誤魔化す方法はいくらでもある


海狸は少年を誘惑する方法などは一切考えず、

ただ、スマートフォンのカメラを通じて真狐が部屋の様子を見ていること、

その点に気付かれないことだけを注意していた


(よし、さっきの反応を見る限りは、

あんまり鋭いタイプじゃなかったから多分大丈夫・・・)


考えをまとめると、海狸は部屋の扉を何度かノックする


すると予想通り、中から少年の声が返って来た


「史陽くん? 海狸だけど、入ってもいいかなぁ・・・?」


ごく自然に、穏やかな声で少年の声に応答する


当然少年は訝しむこともなく、すんなりと部屋に入る許可を出した


「ありがとう~♪ じゃあお邪魔しま~す♪」


部屋に入ってから行う、一通りの流れを頭の中で再確認しつつ、

海狸は扉のノブに手を掛ける


(待っててね真狐ちゃん、

もうすぐこいつの化けの皮をはがしてあげるよ・・・)


そして、一瞬だけ邪な笑みを浮かべながら、海狸は部屋に入っていく






「わぁ~、いいお部屋だね~♪」


部屋に入るとすぐ、海狸は内装を褒めつつ自然に辺りを見回す


海狸の予想通り、取り立てて注目する点のない、

ごく普通の部屋だった


机にベッド、本棚と、個室にありそうなものが一通りそろっている


(この机の物陰に置いておこうかな・・・)


海狸は机の上に設置されている本棚を近くで眺めつつ、

少年から見えづらい方の手で素早くスマートフォンを設置する


「机の上にあるのは・・・、全部教科書か~、

キミ、結構勉強熱心なんだね~♪」


そしてさりげなく少年を褒めながら視線を向けることで、

少年の目を自分の顔に注目させ、手元には目を向けさせない


案の定、少年は照れ笑いを浮かべながら視線を逸らしたので、

海狸の行動には微塵も気付かなかった


(これで良し、と、じゃあ後はベッドに誘導しますか)


「ねえ、ちょっとお話したいことがあるんだけど、いい・・・?」


海狸は唐突に瞳を潤ませながら、

可愛らしい仕草で少年に要望を伝える


先ほどから何度も騙され、からかわれているにも関わらず、

少年は何ら警戒することなく海狸の要望を聞くことにした


「ふふ、ありがとう~♪ じゃあ・・・、

ちょっと長くなるかもしれないから、

そこのベッドに座らせてもらっていいかなあ?」


この要望も二つ返事で了承すると、

少年はベッドのシーツを少し直して座りやすいように配慮する


「もう座ってい~い? ・・・ありがとう♪

じゃあ、キミもこっちに座ってね♪」


さりげなく少年を壁側に座らせつつ、

二人はベッドに腰かけた






居間で様子を見ていた真狐は、画面の揺れが止まり、

いつも眠っているベッドが映ったことで、

海狸が机にスマートフォンを設置出来たと判断する


(相変わらず手際が良いのう・・・)


そして、海狸が少年を誘う声が聞こえてきたかと思うと、

程なくして二人がベッドへ座る様子が映ったことで、

海狸の誘惑が始まったことを理解した


(ここからか・・・、結局拒み切れず

試すような真似をして申し訳ないが・・・、信じておるぞ・・・)


罪悪感に胸を痛ませながら、真狐は瞬き一つせず

スマートフォンの画面を注視し続けた


(しかし・・・、海狸は何故ここまで躍起になっておるのじゃ・・・?

いつもの気まぐれ・・・、にしては少々執着が過ぎる・・・)


不意に疑問が湧き出たものの、画面の向こうで会話が始まり、

真狐は慌てて画面に注意を戻す

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