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妖縁奇縁  作者: T&E
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第一話 邂逅 その3

その後何事もなく頂上まで歩ききった少年は、

不気味な社のことなどすっかり忘れて、

頂上から見える景色を眺めたり、大声で叫んでみて

山彦が返ってくるかどうか確かめている


一通り楽しんでいると、丁度昼食時であることを思い出したのか、

遊ぶのをやめて近くにあった石の長椅子に座り込み、

背中のリュックから保冷箱を取り出す


中に入っていたのは、中身が傷まないようにという配慮か、

きちんと保冷剤に包まれていた弁当箱だ


山登りをしに行くということで母親に拵えてもらったお弁当を広げ、

手を合わせて食べようと意気込んだ瞬間、少年の背後から草の揺れ動く音がした


驚いた少年が後ろを振り向くと、長く伸びた草の間から一匹の狐が

ひょっこりと顔を出す


少年が持っている弁当の匂いに釣られて寄ってきてしまったのだろう、

思いがけぬ野生動物の出現に戸惑いつつも、

すぐに襲ってくる様子はなかったため、

少年は初めて見る狐をじっくりと観察することにした


当たり前のことではあるが犬と似通っている部分は多い、

だがいくつかの違いも見られる


顔は少し細く、尻尾や耳は犬よりも大きい


更にこの狐だけが特別なのかもしれないが、

よく見れば綺麗な毛並みをしており、泥汚れなどは見られない


そうして少しの間狐の様子を観察していると、

狐は少年が持つ弁当箱を真っすぐ見つめていることに気が付いた


何となく食べ物をやってみる気になった少年は、

良いものがないかと自分の弁当箱を覗いてみると、

丁度良いと思えるものが目に付く


それは前日の夕飯に母親が作ったいなり寿司だった、

残ったものを今日の登山に持って行きたいからと、

母親に頼んで弁当に入れてもらっていたのだ


少年は弁当箱に入っていたいなり寿司を全て掴み、その場に置いてみると、

少し離れて様子を見ることにした


狐は少しの間少年といなり寿司を交互に見ていたが、

やがてゆっくりと歩きだし、いなり寿司に鼻を近づける


ひとしきり匂いを嗅いでみると、安全な食べ物だと判断したのか

器用にも全てくわえ込みそのまま背後の茂みへ姿を消してしまった


少年はしばらくの間狐が消えいった場所を見つめていたが、

戻ってこないと判断して、再び椅子に座り改めて昼食をとることにした

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