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妖縁奇縁  作者: T&E
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第二話 紹介 その11

昼食を終え、真狐と共に食器をかたずけた後、

少年たちは二人でテレビを見ていた


リモコンの使い方を教えるとすぐに覚えてしまった真狐は、

ひっきりなしにチャンネルを変えてみたり、

番組表を表示して面白そうな番組を探してみたりと、

好奇心の赴くままに楽しんでいる


しかし少年は特に見たい番組もなく、

お腹が満たされたことで眠気が来てしまったのか、

大口を開けた欠伸をしてしまった


「おお、眠くなってしまったのか?

ちょうど良い、探求は一区切りにしてひと眠りしようではないか♪」


少年の欠伸に気付いた真狐は、そう言いながらすぐさまテレビを消してしまう


少年は慌てて自分に付き合う必要はないと真狐に伝えるが、

真狐は笑みを浮かべながらリモコンを置いて立ち上がる


「気にするでない、食うたら眠くなるのは人も動物もおんなじじゃ♪

それに朝も言うたがわしは夜行性じゃから、

昼間休むのは何の苦にもならんよ♪」


その言葉を聞き、素直に好意を受け取ることにした少年は、

立ち上がって部屋へ戻ろうとする


しかし、そんな少年の背に真狐が声をかけてそれを制止した


「これ、どこへ行くつもりじゃ? ひと眠りしようと言うたであろう、

早ようこちらへ来るのじゃ♪」


その言葉を聞いた少年が振り向くと、

正座をした状態で膝を軽く叩く真狐が目に映る


どうやら、真狐は再び少年に膝枕をするつもりらしい


少し迷う素振りを見せる少年だが、すぐに向きを変えて真狐の方へ近づく


「うむ、ではここへ寝そべるが良い、寝心地は保証するから安心せい・・・、

と言っても一度経験しておるから必要はないか」


少年は誘われるがままに寝転び、真狐の膝に頭を乗せる


視界に入って来た巨大な胸や、

頭を包み込む温もりと柔らかさに少しだけ胸を高鳴らせつつも、

目を瞑って昼寝に入ろうとした


「おっと、いくら夏とはいえこのまま眠っては腹を冷やしてしまうな、

よし、ちょっと待っておれ」


その言葉が終わらないうちにどこかをまさぐるような音がしたかと思うと、

突然少年のお腹に薄い布がかけられた


少年は目を開けて何がかけられたのかを確認した後、

こんなものをどこから出したのか真狐に尋ねてみる


「ふふ、これはわしの術で作り出したものじゃ、

恐らく今日のうち、どこかでまたわしらの結び付きが強くなったらしくてな、

気が付いたら出来るようになっておったのじゃよ♪」


「どの段階でそうなったのか・・・、などという野暮なことは考えまいよ、

今は休息の時間じゃからな」


風呂場での一件を思い出し、自分の欲望が原因ではないかと焦る少年だが、

そういったものでは呪いは解けないという真狐の言葉を思い出し、

すぐに落ち着きを取り戻す


そうして少しの間、蝉の鳴き声や静かな風の音を聞いていると、

真狐が静かに口を開いた


「のう・・・、頭を撫でても良いかえ・・・?」


唐突な要求であったが、特に考えることもなく、少年はすんなりと許可を出す


「ありがとう・・・、では失礼して・・・」


嬉しそうな声でお礼をいいつつ、

真狐がゆっくりと繊細な手つきで少年の頭に触れ、

そのまま優しく髪の表面を撫で始める


最初は少しこそばゆく感じていた少年だが、

すぐに慣れ、髪に触れる真狐の優しい手つきを感じることにした


そうして幾度となく髪を撫で続けた後、不意に真狐が言葉をかける


「史陽よ・・・、お主に頼みがあるのじゃが、聞いてもらえるか・・・?」


どことなく不安そうな真狐の声に疑問を持ちつつも、

少年は短く返事をして頼みについて聞き返した


「うむ・・・、頼みというのは、

わしに何かして欲しいことがあったら言うてもらいたい、

ということじゃ・・・」


「今日一日、いやまだ半日しかたっておらんがそれでも分かったのじゃ、

お主はわしの頼みを尽く引き受けてくれたり、

様々な場面でわしを気遣ってくれておった・・・」


「無論、それはお主の優しさからくるものじゃということはよう分かっておる、

だからこそ、わしの方からもその優しさに応えたい・・・」


「わしが色々と頼んでおったように、

お主もわしに対していくらか図々しくなって欲しいのじゃ・・・」


「お主の頼みとあらば・・・、

例えそれが乳を見せろなどという頼みであったとしても、

見せて良いと思う範囲までなら見せてやろうではないか・・・」


その言葉に落ち着いてきた気持ちが少しだけ昂ってしまい、

少年は真偽を問おうとしたが

真狐の紡ぐ言葉に遮られてしまう


「ほんの一日二日の付き合いじゃが、

お主が情欲に溺れてしまう愚か者でないことは分かった・・・

つもり・・・、じゃから・・・、遠慮なく・・・・・・」


真狐の言葉が途切れ途切れになっていき、同時に手も動かなくなっていく


異変に気が付いた少年は心配になり、

起き上がって真狐の状態を確認しようとしたが、

ある音が聞こえて来たことで、その心配は必要がなくなった


「すぅ・・・、すぅ・・・」


聞こえて来たのは、静かな静かな真狐の寝息だった


少年に合わせて眠気を堪えていたのか、

今の今まで高ぶっていた気持ちが落ち着くと共に

眠くなってしまったのかは定かではないが、真狐は穏やかに眠っている


少年は口元に笑みを浮かべつつ、真狐に合わせて気持ちを落ち着かせ、

そのままゆっくりと眠りに落ちていった

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