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妖縁奇縁  作者: T&E
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第二話 紹介 その3


「さあ、詳しいことは明日色々話すとして、

今日の所はもう寝ようではないか♪」


昨夜、手を取り合っていた真狐と少年だが、

不意に真狐の方から手を放し、突然就寝を提案してきた


「もう人は眠る時間であろう?

そもそもわしが入って来たときにはもう眠っておったわけじゃし、

流石に眠気がつらいのではないか?」


そう言われた少年は、既に就寝時間を過ぎていることに気が付き、

同時に欠伸が出始める


真狐に起こされてから、非日常的な展開が続いたせいで目が冴えていたようだが、

事態が落ち着いてきたせいか、眠気を抑えられなくなってきたようだ


少年は瞼を擦りながら立ち上がると、少し悩んだ後に窓を閉め、

そのままベッドへ向かう


「妖の時間が、夜がとっくに始まっておるというのに起こして悪かったのう、

何なら、魔除けとしてわしが一緒に寝てやろうか?♪」


一瞬了承しかけた少年だが、すぐに自分が何を言おうとしているのか気付き、

慌てて同衾が必要ないことを伝える


「そ、そこまで拒まれると少し傷つくのう・・・、いや待て・・・?

ああそうか、そういうことか♪」


悲しげな顔になりかけた真狐は、すぐに合点がいったとばかりに頷き、

悪戯っぽい笑みを少年に向けながらこう言った


「さてはお主、この体とくっついてしまったら、

興奮して眠れなくなってしまうのじゃな・・・?♡」


真狐の問いかけに口籠りながらも、少年は頬を赤らめつつ肯定する


「よいよい、女の体に興味を持つのは男として当然のことじゃ、

悪いなんて露ほども思っておらんよ」


「ただお主は少々不慣れすぎるように・・・、まあとにかく気にするでない」


特に責められることもなかったので、

少年は胸を撫で下ろしつつ一人でベッドに入ろうとするが


「これ、女を置いて一人で寝ようとする奴がおるか」


やはり一緒に寝る気なのか、真狐が少年を制止した


一緒に寝ることは出来ないと納得してくれた、

そう思っていた少年は、もう一度断ろうと真狐の方に振り向く


しかし、そこに先ほどまでの真狐はいなかった


「ふふ、どうじゃ? これなら意識する必要はなかろう?」


そこにいたのは、昼間見た大きな狐だった


流石に驚いた少年は、狐に向かって真狐の名前を呼びかける


「うむ、呼んだか? わしが確かに真狐じゃよ♪」


どこから声が出ているのか分からないが、

目の前の狐が呼びかけにはっきりと応じた


やはりこの狐が間違いなく真狐のようだ


「そんなに驚くことかのう? そもそもわしは狐の妖怪で、

人間の時が化けておる姿だと言うたはずじゃが、まあそれはどうでも良いか」


「それよりも、この姿のわしとなら、一緒に眠ることが出来るのではないか?」


また眠気に襲われ始めた頭を動かし、

少年は真狐の提案をどうするべきか少し考える


完全な狐の姿になっている今の真狐となら、

特に意識をすることなく眠れるはず


更に、動物と共に寝るという体験はいままでなかったので、

貴重な体験をすることが出来るかもしれない


少年はすぐに了承すると、そのまま布団を捲り、真狐を手招きした


「ふふふ、随分積極的になってくれたのう、まあそれだけ眠いのじゃろうが」


「じゃが、わしはお主が寝ている側で勝手に丸くなるから、

その布団は主が全部使っておくれ」


既に問答をする気力も残っていなかったのか、

少年は真狐の言葉を素直に受け取り、

そのまま眠りに入ってしまった


「おうおう、すぐに眠ってしもうたか、眠たいのを我慢させてすまなかったのう」


「おっと、こう明るい部屋では眠りにくかろう、灯を消さなくてはな」


「しかし、不思議な光じゃのう・・・、火の灯りではない・・・、

わしが山の中から夜中に眺めていた光の正体は恐らくこれだったのじゃな」


天井に備え付けられた電灯を眺めつつ真狐がそう呟く


「さて、これはどうすれば良いのか・・・、

確か史陽はこの紐を引っ張って灯りを付けておったのう・・・」


電灯からぶら下がった紐を器用に咥えた真狐が

そのまま紐を軽く引っ張ってみると、

部屋の灯りが消え、豆電球が灯った


「おお、上手いこと灯りが消えよったわい、

しかしまだ小さな灯りが付いておる・・・、

もう一度引いてみれば・・・」


もう一度真狐が紐を引っ張ってみると、狙い通り灯りは完全に消え、

部屋の中は完全な暗闇になる


「よしよし、これなら眠れよう」


「さて、わしも側で眠るとするか」


音もなく布団の上に飛び乗ると、真狐は少年の側で丸くなった


「良い夢を見るのじゃぞ・・・、お休み・・・」


そして少年に一声かけると、そのまま目を瞑る


この夜、少年は真狐の毛がとても柔らかいことと、

夏場に動物と共に眠ると非常に暑苦しいことを、

夢の中で嫌というほど味わった

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