第一話 邂逅 その1
季節は夏真っ盛り、舞台はある町に存在する何の変哲もない民家
既に太陽は完全に沈み、辺り一面を暗闇と静寂が包み込んでいるが、
部屋に明かりがついているため、中の様子は外からでもよく分かる
その小部屋の中では、二人の男女が床に座って手を取り合っていた
片方の男は背丈も小さく、少年といって差し支えのない人間である
黒い髪に涼し気な恰好の、どこにでもいる普通の少年と言えよう
一方の女は、普通と形容するには少々無理がある出で立ちをしていた
茶色い髪に、隣に座る少年とは比べ物にならないほどの背丈、
夜とはいえ真夏であるにも関わらず、ゆったりとした着物を
涼し気な顔で着こなし、
更にその胸部には着物の上からでもはっきりと分かるほどの
豊満な乳房が備わっている
だがそれ以上に不思議なのは、頭部と腰に付いている
狐のような耳と尻尾であった
持ち主の感情に合わせて動いているとでも言うのか、
その動きは非常に精密で、どう見ても作り物には見えない
背格好から性別に至るまで、何もかも異なる二人が
少しぎこちなく手を取り合う
この不可思議な組み合わせが出来あがったのは、つい先ほどのことであった