どこでもおじさんは受けが悪い
王都アディルカ。世界を大きく分けて人間界、魔界、天界、海神界の4つある大陸のうち、人間が主に住む大陸の一番大きい首都である。気休め程度の石の門から原則出入りする形を取っており、凶悪犯罪者でもなければ一定の通貨を払えば誰でも行き来は自由なので、人間以外にも多種多様の種族が入り交じる街。
だが、街とは名ばかりで規則性がなく、コンクリートから藁の家まで雑多に並び立っていて、見栄えに欠けるのが最近の王様の悩みだとか。
街も半ば、一際目立つ巨大な石造りの建物が王都に唯一のギルド支部であり、多種多様な民族が日銭稼ぎから国を救うため、あらゆる理由でごった返すのが常。そこで、1人の冒険者が周りからの注目を集めていた。
「だから、何回も言ってんだろう?ぽかぽかが蛔虫を見つけたんだよ!ここからダイナ山に行く麓で、寝てるのを見かけたって!」
「本人からの申請ではない限り、私共の手では確認の有無が出来ませんので。調査依頼に関しましては、彼が戻ってきてから詳しくお話させていただきます」
「もう帰っちまってそれから音沙汰ないんだよ!俺の嫁さんも確認してんだ!それでも信じられないってか?」
そこには、受付嬢に文句を言っているハゲのおっさんこと、芋沢さんが居た。
「…そういうことでしたら一考の余地はございますが、それでも奥様が報告に来ていただけない限りは…Fランクの冒険者の嘘だった、というのもございますので」
「あー、もういいよわかったわかった、Bランクの冒険者様を連れてくるからまた後で来るわ」
使えねえな、と最後に舌打ちと共に吐き散らした後に、ハゲは冒険者ギルドを出たのだった。
本来なら下級の魔物しか出ない山にランクの高い魔物がいた。そんな報告のためだけに、と言えば徒労に聞こえるかもしれないが、芋沢はどうにも拭えない違和感を感じていた。