はいはい魔力魔力
「えっと、なんていうか僕、その魔法の使えない異世界…地球に住んでいたんですよね昨日まで」
「うん?記憶があやふやなのはそのファンタジー理論のせいか?昨日もぽかぽか君は確か友人と魔物狩りしてたんじゃないのかい?」
「え?僕は昨日はずっとゲームしてたんだけど」
どうやらその時点でおかしいらしい。流石にこの16年間、夢を見ていた訳でもないし、確かに存在しないモンスターの討伐ゲームではあったけど魔法なんて使わずに倒すゲームだし。色々とおかしい。
そもそも、僕は昨日帰ってくる時に芋沢さんとは会っていないはずなのだ。なのに友人と狩りに出ていた、と知っているのもおかしい。というか僕の友人関係など知っているはずもないんだが…。
「まあとりあえずお騒がせしました。色々考えてみたいんで今日は帰ります」
「気を付けて帰るのよ?この辺、田舎だけどたまに出る魔物が物騒ですからね」
貴女の方が物騒です。とは言わない。軽く会釈をしてから、極力何も考えないで家まで帰ることにした。
流石に帰りは何にも会うこともなく、無事についたのだが鍵を開けて早々に『エエエエラーーーーー。ままままままま………の……じゅ……ため、3分後に自爆します』と言われた時は焦った。この携帯、どうやら一定時間魔力とやらを補充しないと爆発するしくみらしい。いらんとこで凝るなよ。
けたたましい程のバイブレーションと、端っこがかけたせいか画面がちょくちょく砂嵐っぽくなっているので見にくいがカウントダウンは正常に始まっているようだった。
「魔力ねー魔力。どうせさっきみたいになんか想像してたら出来るんでしょ、はいはい体中に魔力漲らせてますよー」
『魔力の補充が完了致しました。これより自爆モードを解除し個体名:浅井炬燵の更新データ及び現在の状況を把握いたします。追加ダウンロードに関しては追加魔力を再度補充する必要があります』
出来た。けど何を言っているのかさっぱりわからない。なんですか個体名って。僕いつからロボットになったんだろう…ファンタジーじゃなくてSFの世界だったのかもしれない。
『追加ダウンロードを完了致しました』
よくわからないがはいはい魔力魔力ーとやっている間に無事補充も完了したらしい、なんだこのヌルゲー、ちょろすぎる。こんなの僕の世界の住民ならほとんどのファンタジー好きなら通る道なのに。
改めてロックの解除された携帯を見てみると、僕のステータスのようなものが表示されるアプリが入っていることに気付く。シルシル君という名前らしいがどうにもゆるい感じが否めない。
『現在のステータスを表示いたします。
浅井炬燵 (あさい ぽかぽか)
年齢:16
性別:男性
身長:171
体重:53
使用可能属性:火、水(その他現在使用不可)
魔力値600/?????
状態異常有り:メモリーインストール不完全による記憶混濁。魔力当たりによる魔法不完全再現。転送不完全による身体異常(小)。以上の誤作動を状態異常とみなし、次回スリープ時に強制インストールを行いエラーの消去を実行いたします』
そっと携帯を閉じた。