山は暑い
「いやいや魔力ってなんだよいきなりのファンタジーに理解が追いつかないよ…」
だが、どうにもこの携帯の画面にエラー表記が出ているがホームボタンを押しても戻らないし電源を切ろうとしても反応がない。だめだこいつ、早くなんとかしたいけど出来ない。
その後も絶え間なくエラーエラーとうるさいので、いつものベッドから降りて向かいにあるタンスに向けて携帯を投げつけてみた。
『エエエエエラーーーーー。ままままままままままままままりょりょ』
悪化した。
とりあえずもうこの携帯に(愛着はあるが)未練もないので、放置して外に出る準備をする。
適当にタンスの中にあった服に着替え、財布だけ持って玄関を出た。
「暑い」
先も説明したが今は夏も中頃、8月末なのでとても、それはもうとても暑い。何もしなくても汗は吹き出てくるし、喉が即座にカラカラになる。
辺りを見渡すも山だけで、今のところ身の回りの異常事態?は手持ちの携帯だけだった。本当になんだったのか。
「自動販売機で飲み物でも買おうかな、暑くて死にそう」
ここは田舎である。一年前までは都会に家族と住んでいたのだが、よくある離婚事情で親は離れ離れ。僕も高校生なので「父さんも母さんも離婚して離れ離れになるならついでに僕も一人暮らししていい?」と言ったところ二つ返事で了承されたが、とある事情により今の学校には行きたくなかったのでそのまま前々から行きたかった田舎に行くことにしたのだ。それから近くの高校に転入して、昨日も遅くまで友人とゲームをして疲れて帰ってきて眠って起きたらあの携帯の奇行。勘弁して欲しい。
そして歩くこと20分。山の麓の方にコーラだけしかないさびれた自動販売機の元に到着したのでコーラを購入し、ようやく喉を潤すことが出来た。
「あーー。生き返る…死んでないけど」
そのまま半分ほど飲み干し、周りを見てみる。何かいる。とてもデカいなんか気持ち悪い奴がいる。軽自動車を一回りくらい縮めた程度の大きさのなんか気持ち悪いぶよぶよした生き物…?を発見した。
「なにあれ生き物?」
もちろん誰とも会いはしてないので独り言ではあるが、つぶやく以外にこの疑問のはけ口はなかった。
「なんかキモいからコーラかけてやろう」
そして思いつきで行動するのが彼の悪いところであった。