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ばぁば系魔女とクール系青年  作者: 弱虫リリー
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第一話 魔女に拾われた日 

ツイッターのタグ「魔女集会で会いましょう」の完全体の田中さんの漫画を文章化したものです。シリアス風とコメディ風で二通り投稿しています。

追記 こちらの路線で進めていきます。

 原作 完全体の田中  著 弱虫リリー


 僕はどうして大事にされなかったんだろう?

 少年は口から出た小さな白い雲を眺めながら、ふと、疑問に思った。

 しかし、彼の疑問に答える者はいない。代わりに木の上に積もっていた雪が、バサリと音を立てて落ちた。

 少年としてはそれなりにいい子でいたつもりだった。

学校ではそこそこの成績をとり、特に問題も起こさず、家事だってこなした。

 しかし、少年は自らを見る親の目が、なんとなく嫌なものでいっぱいになっているのを感じていた。夜にこっそり、どこかへ出かけているのも知っていた。学校から家に帰ると机の上にお金だけが置いてあり、すでに家にいないときもあった。

 僕よりも大事なものがあったのかな?

 それも今となってはわからなかった。どこかもわからない、山に捨てられた今となっては。

 木々の隙間から覗く曇天の空が、少年の心の写し鏡のようだった。

 少年は歩き続けていた。積もった雪を裸足で何度も踏みしめ、しもやけになっていたが、歩き続けていた。

 気が付くと、木が生えていない少し開けたところに出ていた。

少年は、足元に落としていた視線を上げ、あたりを見渡す。

しかし、目に留まるのは雪化粧した山々と木々だけだった。

 そのあまりの雄大さが、少年にさらに虚無感を与えた。

 これからどうしたらいいのかな。

 ぼんやりと考えながら、少年はただ立ち尽くしていた。

 

 ――バキッ

 

 突然、少年の背後で枝が折れる音がした。

 反射的に振り返った少年の瞳に映ったのは、いまにも雪に溶けてしまいそうなほど白い髪の若い女性だった。

 その女性は少年の前でしゃがむと、

「坊や、こんな山奥で一人かえ?」

 と微笑みながら聞いた。

 女性のイチゴのように赤いその瞳には、少年の知らない、温かいものがいっぱい詰まっていた。

 きれいな人だなぁ。

 初めて見た白髪も、赤目も、少年は驚かなかった。いや、その女性の包み込むような優しい雰囲気がそうさせなかったのかもしれない。

少年はただ、美しいと感じていた。

「もしかして、迷子かえ?」

 再び聞かれて、ハッと我に返った少年は、どう答えていいか一瞬迷いつつも、今の状況を端的に伝えた。

「……捨てられました」

 それを聞くと女性は一瞬驚いたような顔をして、その後、少し悲しそうな表情になる。

「あれま可哀そうに……」

 数瞬考えるようなしぐさを見せた後、女性はぱっと再び微笑み言った。

「ばぁばの家によかったらおいで」

 おこたがあるぞ、と。

 それに少年は、コクリとうなづく。拒否する理由なんてなかった。何より、女性の零す音が暖かく感じた。こんな包まれるような音は初めてだったし、嬉しかった。

 女性は「それじゃ、いこか~」と、自分の手袋を外して少年の手に付けてくれた。そしてもう片方の手袋のつけていない手をを取り、歩き出す。

 つないだ手から伝わるぬくもりが体の中までしみるようで、少年にとってこれも、初めての感覚だった。

 そういえば、お母さんとこんなことしたことなかったっけ?

 ――僕好きだな。これ。

 その感情は少年が初めて抱く、「好意」と言う感情だったのかもしれない。

 ――あ、でもそういえば。

 ただ、それ以外にも少年は抱いていた疑問があった。

 ――この人若そうなのに、なんで自分の呼び方ばぁばなんだろ?


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