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バースデーサプライズ

作者: 氷鬼姫


 「木原先輩!長い間、お世話になりました……。新しい職場でも、頑張ってください!」


 「ありがとう。心雪みゆきさんもお元気で……」



 ――ずっと片想いだった先輩が転職して、想いを打ち明けられないまま別れることになってから、数週間。


 今日は、私の27回目の誕生日である。


 仕事をしながら誕生日を過ごすことにもなれたもので、ここ数年、誕生日祝いをしていない。


 今日も特に予定はなく、ただ黙々とパソコン業務をして、今まさに定時を迎えようとしている。


 「まぁ、独り身では誕生日なんて祝っても虚しいだけだしねー。

  ……よし、今日の業務は終わりっと。」


 できあがったデータを上書き保存して、パソコンをシャットダウンする。


 「お疲れさまでした。」


 「お疲れー」


 「お疲れさまー。」


 「お疲れ様です。お先に失礼します。」


 いつものように挨拶を交わしてから、片付けが終わるとともに席を立ち、帰路につく――。



 「ん?」


 会社の入口を出ると、いつもは見かけない車が止まっていることに気づいた。けれど、自分には関係ないだろうと素通りする――


 「心雪みゆきさん!!」


 と、突然、聞き覚えのある声に呼び止められた。


 「……え?」


 私は思わず足を止め、声のする方へ振り向いた。


 「心雪みゆきさん、ひ、久しぶり!」


 「あ……え……えぇっ!?」


 思わず、変な声が出る。


 そう、振り向いた先には、スーツ姿の木原先輩がいた。


 「あ、お、お久しぶりです!!ど、どうしたんですか!?」


 数週間前に諦めかけた気持ちが蘇る――。そして、落ち着け、私!


 先輩はまるで照れを隠すように優しく微笑み、深呼吸をする。


 しかし、緊張は隠し切れなかったのか、少し震えた声で一気に告げた。


 「み、心雪みゆきさん!お誕生日おめでとうございます!

  す、好きです!付き合ってくださいっ!!」


 「……っ!」



 バラの花束を掲げて深く頭を下げている彼を眺めたまま、私は固まってしまった。


 思考回路が追い付かない。


 心臓はバクバクなって、心臓発作を起こしそうだ。


 長い間、片想いしていたのは私の方だったはず……。


 これは、夢ではないだろうか?


 実はまだ仕事中で、疲れのあまり、居眠りしてしまったのではないだろうか?


 どれが現実?これは、夢?妄想?


 混乱する脳内が、たった数秒を、永遠とも思える時間に錯覚させる。



 そして、これ以上待たせてはいけないと我に返った瞬間、動揺がバレバレの裏返った声で返事をする。


 「あ、あぁ、あ、あの、わ、わ、私の方こそ、ず、ずっと前から、好きでしたっっ!こ、こちらこそ、よ、よよ、よろしくお願いしますっ!」



 少し経った後、彼はほっとしたのか、深い息を吐いた後、ゆっくり顔を上げて、ニコリと微笑んだ。


 「あぁ、良かった。本当、良かった……。」



 「あ、あ、あの、どうして、私を?」



 未だドキドキが収まらず、質問になっていない質問を投げる。


 先輩は既に落ち着いており、ゆっくり話してくれた。


 「……心雪みゆきさんは意識していないかもしれないけど、一緒に働いていた時、僕のミスを直してくれたり、フォローしてくれたりしてただろ?

 最初は、仕事だから、サポートし合うのは当たり前くらいに思っていたんだけど……、他の人と比べて、どうして、こんなにも僕に尽くしてくれてるんだろうと思い始めてさ。

 それからだよ。いつの間にか目で追うようになって、気が付くと、どんどん好きになっていった――。

 でも、ずっと同じ職場で働いていても、またサポートしてもらうばかりでお互いのために良くないし、もっと良い給料の職場に転職して、心雪みゆきさんを支えられるくらい稼げる、強い男になりたいと思うようになったんだ。」


 「木原先輩……」


 彼の気持ちを聞くうちに、徐々に視界がぼやけ、頬を涙が伝う――。


 もちろん、悲しいわけではない。


 彼は続ける――。


 「もし、心雪みゆきさんが良ければ、これからのお付き合い、結婚前提でしてもらえないでしょうか!」


 「は、はいっ!」





―――――――――――――――――――――――――――――――――――




 「……っていうことがあって、私たちは結婚したのよ。一生忘れられないバースデーサプライズだったわ。」


 「わぁ!ぱぱ、ロマンチストだね!」


 「でしょー?うふふ」


 「こ、こら、心雪みゆき、恥ずかしいから、内緒にしてくれと頼んだだろ!」


 「あらー?そうだったかしら?ふふっ。」


 「いいなぁー。ボクもぱぱのようにすれば、大好きな優愛ゆめちゃんと結婚できるかなぁ?」


 「うふふ、そうねぇ。大きくなったら、きっと心太しんたも、ぱぱみたいにかっこよくなると思うから、試してみれば、うまくいくかもよ~。」


 「ほんと?やってみる!」


 「ちょっ!?やめてくれ!!俺の黒歴史を掘り返すな!あ~恥ずかしいっ!」


 「いいじゃないですか。私は心底、嬉しかったんですから。」


 ぱぱ、木原先輩は黒歴史だというけれど、私にとって、かけがえのない一生の思い出。だって、ずっと片想いだった大好きな人と結婚できるなんて、なかなかできないことだから。


 これからも、この幸せが一生、続きますよーに――――。


 

お久しぶりです。

一応、生きてます(笑)

これからも、マイペースに少しずつ、書きたいものを書いていきます。

連載作品の続きを待ってくださった方々、申し訳ありませんが、ご容赦ください。

それでは、おやすみなさい。

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