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【誰もが見上げる果て無き大空。「ファラナルド」と呼ばれるこの国の天空。昼も夜も地域関係なく、しかし魔力によって突如映し出されたとある景色。人物】
「な、なんだ――?」
「空が、歪んで――?」
「何? 何が起きるの?」
【本来は金髪碧眼で長身の美男子だったことでしょう。今はアヘっと目は白目を剥き。口は舌出し涎出し。足は地べたの上で股を露わに中途半端に半開き。その両手で作りたるはVサイン】
「お、おい、アレって――」
「う、そ、だろ――?」
「きゃああああああああああああああっっ!!?」
【誰もが、その人物を知っていました。
誰もが、その生ける伝説の英雄譚を知っていました。
そして誰もが、彼に期待を寄せていたのです】
【…………】
【その日、勇者は主に社会的に死んでしまいました】