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いちばん最後のゲネラルパウゼ  作者: 音ノ間千歌
tacet【ひっそりと】
9/53

tacet.(ひっそりと)

「とりあえず...どうするか」

学生指揮者のりょう先輩が、ミーティングを仕切りだした。

顧問の五十嵐先生は、今日は出張だった。


「カラオケボックス使うとかは?」

「公民館のホールとか?さすがにこんなこと知らないっしょ?」

などと、意見が出る。

すると、おずおずと手が上がった。6年の戸部せあらさんだ。正真正銘の良家のお嬢様。

「うちの経営のホールがこの近くにあるんだけど...。あんまり使う人いないから」

なんて気の利く先輩なんだろう...。かなり尊敬してしまった。

いや、もともとしてます...。

「なら...何とか大丈夫かな?」

「うん。楽器運ぶなら、車とか出せるよ?」

いったい何者なんだろう、この人は...。そう思っていると、楽器管理係の先輩が手を挙げた。

「弦バス、外用の楽器使ってー!あと、バスクラとサックスもー」

「どしたの大渓?」

りょう先輩が、不思議そうに彼女を見る。

「ああ。えっと、いつも使ってる楽器、あれ高いんで、楽器庫にあるんですよ」

「あー、理事長か...」

そう、鍵は理事長が管理している。五十嵐サン曰く、あんな高価なものを、自分で管理するのは、気が遠くなるそうだ。大丈夫かよ、顧問...。


戸部家のホール(仮)に向かうために楽器をおろしていると、運悪く、クラスメイトに会ってしまった。

木下繭里と伊能リコ。噂好きの2人組。

今年の4月ごろに、どこ情報なのか、西塚さんの彼氏がかなりの女たらしだという噂をばらまき、校内その話でいっぱいになったことがあった。案の定西塚さんはマジ切れ。渋谷でその人と遭遇して(女連れで)、大騒ぎになった。

「あれ、マリじゃーん!」

「どうしたの?楽器なんか運んで」

いちばん聞かれたくないことを、お構いなしに言ってくる。

私がうろたえていると、莉緒先輩がやってきた。

「ああ、マリのクラスメイトじゃん。今日は先生が出張だから、家に行くんだよ」

先輩、ナイス。

「へーえ。そうなんですか」

「マリがんばー!!」

そう言って歩いていく2人。莉緒先輩は、

「気を付けてよ、マリ。バレたらヤバいから!!」

そう言って私の手に自分のリードケースをのせて、部室に戻っていった。

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