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いちばん最後のゲネラルパウゼ  作者: 音ノ間千歌
Attack【発端】
8/53

Attack(発端)

真莉、13歳(1年前)の回想の話です。


中等小学校は、私が勝手に作った学校名です(多分。笑)

小4~中3の子たちが、中1~高3までの勉強をする、ということで。

よろしくお願いします。

「リカがいなければ、ソロ吹けたのに」


その言葉を聞いた私は、扉の前で硬直した。

秋山真莉、13歳。国立美空中等小学校の4年生。

1年前の夏。すべてが壊れた日...



「...以上が今年のコンクールメンバーだ」

副顧問の松村先生の声が響いた。音楽室のあちこちから、すすり泣く声が聞こえる。

国立美空中等小学校吹奏楽部。40人ほどの部員の中から、30人がコンクールメンバーとして選出される。

私は4年生ながら、3rdクラリネットとして選ばれた。

先生は続ける。

「この後、クラとアルトサックスとトランペットは、ソロの発表があるから、残るように」

あとはパート練習、と、ほかの部員たちが追い出された。


私と、2ndの5年生、みなみ先輩は、そもそも残る必要がなかった。だって私たちは、1パートを1人で担当しているから、ソロ確定だし...

でも、残れと言われたからには、残らないといけない。

私とみなみ先輩は、顔を見合わせて苦笑した。


そして、このソロパートの発表が、私たちのこれからを、大きく変えることになった。


「まず、クラリネットから発表する。1st、大沼月」

「はい」予想通り、るな先輩が選ばれた。同じくクラ1stのみどり先輩は、当然というように目を伏せた。しかし、泣いたりはしなかった。そもそも自分が1stに選ばれたこと自体で満足だったのだろう。

「2nd、鹿児島南波」 「はい」  「3rd、秋山真莉」 「はい」

と、わかっていてもやっぱり初めてのソロは嬉しい。

「トランペット、九重茉莉花」 「はい」

まつりか先輩は去年3rd。一方、同じく6年のあざみ先輩は、去年は2ndだった。

だからあざみ先輩は、今年は自分がソロだと信じていたのだろう。顔を覆って泣きじゃくる。

残るはアルトサックス。曲の中で一番大きいソロだ。

アルトサックスは、1stに5年のゆう先輩と4年のりか。同じく4年のみほは、2ndだから、ソロはない。(でも残っている)

学年で考えると、ゆう先輩がソロになるのが妥当。いくら経験者といえども、りかに先輩からソロパートを奪わせるような決定をするほど、先生も意地悪じゃない。誰もがそう考えていた。


「最後に、アルトサックス。大沢璃香、以上だ」


先生は、意地悪だった。

りかの頬が紅く染まった。声に出ないのに顔よくに出るな。と、呑気に考えていた。

でも、よく考えたら、とんでもないことだ。

まつりか先輩とあざみ先輩のような、学年内の争いは、よくある。

これは、違う。

明確な上下関係。学年という、壁。りかの演奏は、それをあっさりと壊してしまった。

ゆう先輩は、真っ青な顔で、今にも落ちそうなほど、目を見開いていた。何も言えないようだった。


いやな予感がした。

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