Vivo(活発に)
ある日
私はいつも通り部室へ向かった。
その日は私は日直で、少し遅れてしまった。
「失礼しまーす、すみません、遅れました、」
「おいそれ、どういうことだよっ!?」
私の言葉が、クルちゃんの怒鳴り声でかき消された。
「どういうって、そのまんま...活動停止...」
「だーかーらー、それがどういうことか説明しろっつってんの!!」
部長の新島楓さんの弱々しい声を一蹴するかのように、クルちゃんがさらに大声を張り上げる。
「てゆーか、部長がそんなでいいのー?」
西塚茜さんだ。西塚さんの一言で、周りがさらに騒ぎ出す。
ホント、頼りなさすぎ。 なんでこんなのが部長なの? うちらのコト、バカにしてんじゃないの?
その言葉に、私は顔をしかめた。
「...なら」
楓さんが口を開いた。
「なら、勝手にやってればいいじゃん!」
「か、楓さん!!」
楓さんが私の横を走り抜けていく。
私は迷わずに彼女を追った。何があったのか、わからなかった。
「わぷっ!!」
私の思考は、突然の衝撃で途切れる。楓さんが立ち止まったのだ。
いつの間にか、掲示板に来ていた。
私は、吹部板を探した。
...え?探した??
そう、いやでも目に飛び込んでくるほど派手派手だった吹部板が、ほかの部に劣らないほど地味になっていた。
かわりに、こんな紙が貼ってあった。
吹奏楽部の活動を、当分の間禁止します。
「.........はい?」
「誰かが、コンクールの時に審査員の人たちに高得点をつけるように脅したんだって。そのことが、向こうに伝わって...。私たち、あんま練習してないのに、全国で金とってるから...。怪しいって。関織はお金持ちも権力者も多いから、こんなの簡単にできるだろうって。私、そんなこと、知らないっ!!」
今にも泣きだしそうだった。
今までの楽しかった活動が、こんな風に終わってしまうなんて...。
きっと、そんな風に考えているのだろう。
え、何これ。 だれだよ、そんなことしたの。 ガセじゃないの?ありえんくない?? てか、これからどうすんの?
いつの間にか、部員が集まっていた。そのささやきの数は、私の頭の中に渦巻いている疑問符の数と等しかった。
当分って、いつまで?
定演は?アンコンは?コンサートは?
...これから、どうなっちゃうの??
『私がやめるから、いいんだよ』
あの子の声が、一瞬蘇る。
あの時みたいに、後悔は、したくない。
絶対に、繰り返したくなかった。