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水平線にとどく唄  作者: つるめぐみ
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6.少女

「やっぱり怪我をしているのね。手当てをしてあげるから、動かないでいてね」

 人間がそう言って、箱の中から何かを取り出そうとします。

 それを見たクウは低いうなり声を出しました。近づくなという警告の声です。優竜のクウには人間の言葉はわからないのです。ですので、殺されたくないと必死でした。

「薬を塗るから我慢してね」

 人間が出したものを怪我に塗られたクウは、痛くて声をあげながら尻尾を振ります。

 子どもでもクウは大きな優竜です。力は強く、近くにあった木がクウの尾の力で簡単に折れました。大きな音をたてながら木が倒れます。その音を聞いて建物から、もうひとり人間が出てきました。

「姫! なんと危険なことを。離れてください。それは凶暴な生き物ですぞ」

「違うわ。お父さまに聞いたことがあるし、本を読んだことがあるもの。この子は優竜。凶暴ではないわ」

「しかし、尾のひと振りで木が折れたのですぞ。あなたにもしものことがあったら、おつかえしている私はあなたのお父上に、なんといえばよいのか……」

「では、手伝って。この子が無事に家に帰れるよう手助けします。今から船の準備をして」

 クウは二人の話を聞いて、歌っていた子のほうが強いのかなと感じました。

 なんとなく傷の痛みがすこしひいた気がします。クウは傷に塗ったものは悪いものではない。痛みをすくなくするものなのかなと思って、自分を助けてくれた人間をじっと見ました。

 すると、目の前の人間が笑います。

「私の名前はシャロンっていうの。よろしくね」

 可愛らしく、スカートの両すそを上げながら、あいさつをする少女はそう言いました。

 シャロンという言葉が、なぜかクウの頭の中で響きます。

 ――この子の名前はシャロン。

 今まで争い続けていた優竜と人間が言葉をかわし合う。

 クウとシャロン。二人の物語はそんな奇妙な出会いからはじまったのです。

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