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水平線にとどく唄  作者: つるめぐみ
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2.人間

 ポッカリと空に浮かんだ満月の夜。

 海藻を食べてお腹いっぱいになった優竜たちは家に帰ります。

 クウは、ひとりでは怖くて眠れません。それなので、いつも、お母さんの隣で丸くなって寝ます。

 そんなクウにお母さんが話しました。

「私たちが子どもの時にはね。人間という生き物に、たくさんの仲間たちが殺されたの。だから、人間には絶対に近づいては駄目よ」

 お母さんの話を聞きながら、クウはこわくて震えます。

 人間とはどんな生き物なのでしょうか。一度も見たことがないクウはお母さんに訊きました。

「人間って、どんな生き物なの?」

「私たちより小さな生き物よ。けれど、私たちの体を切り裂く刃物や体を貫く鉛の玉を持っているわ」

「どうして人間は僕たちを殺すの?」

「私たちの骨を使って、いろんな道具をつくるからよ」

「食べるとかじゃなくて?」

「食べることもあるけど、たくさん殺される理由とは違うのよ」

 お母さんは首を上げると、遠く水平線に浮かんでいる島を見ました。

「あの島には人間がいるから絶対に行っては駄目よ」

 クウは長い首を縦に動かして「うん」と返事をしました。

 人間に会ってしまうと、この島の場所を知られて、仲間たちまで殺されてしまいます。

 ――人間はこわい生き物。

 僕たちを食べて、骨を道具にしてしまう生き物。

 クウは考えながら、すこしずつ眠くなってきて目を閉じます。

 お母さんの心臓の音と、打ち寄せる波の音がクウの子守唄になっていました。

 ――人間はこわい生き物。

 クウは強いお父さんがいるなら大丈夫と安心していました。

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