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◆第十二週 五日目 風源日◆
本日も日が昇る前に森を散策し、何か変わったところがないか確認して回る。
そして日が昇り帰宅した後は、軽く汗を流す程度に皆を走らせる。
適当に身体が温まったところで休ませ、皆を4つのグループに仕分けていった。
現在、このこのコミュニティには51人(匹?)が暮らしている。
まずトップの俺と、俺の恋人である朱髪さん空髪さん。
居候のラミーナと、客人のエルフちゃん。
家族であり部下?でもある、御菜江と御沙樹。
家族であり弟子?でもある、アクリスとエリアス。
家族であり召使い?でもある、バグフェとバグファン。
――計11名。
コボルト達は――
長老2匹。
戦士♂5匹。
戦士♀2匹。
子供が2匹(♂♂)。
――計11匹。
ゴブリン達は――。
ゴブ幸くんとゴブ姫ちゃん。
長老4匹。
戦士♂4匹。
戦士♀3匹
子供5匹(♂♂♂♂♀)。
――計18匹。
バグベア達は――
長老0匹。
戦士♂6匹。
戦士♀1匹(進化中)。
子供が1匹(♂)。
――計8匹
枠外として、心が壊れている《混沌の民》の娘が3人。
尚、スライムまで数えると桁が1つ増えてしまうので除外している。
この計51人から長老衆と子供、枠外娘3人、エルフちゃんを除いた27人を、以下の様に分けてみた。
※G:ゴブリン
※K:コボルト
※B:バグベア
※L:ラミア
【地ノ軍】――通称:本隊(計8名)
隊長:バグリナ (B♀ ※進化中)
副長:蔵ノ信 (K♂)
軍員:倭ノ介 (K♂)
:C (G♂)
:V (G♂)
:バグゼブブ (B♂)
:バグザック (B♂)
:バグール (B♂)
【水ノ軍】――通称:魔法部隊(計7名)
隊長:ゴブ姫ちゃん (G♀)
副長:F (G♂)
軍員:御魅津 (K♀)
:御夢音 (K♀)
:α (G♀)
:β (G♀)
:γ (G♀)
【火ノ軍】――通称:遊撃部隊(計4名)
隊長:俺 (悪魔)
副長:ラミーナ (L♀)
軍員:朱髪さん (混沌の民♀)
:空髪さん (混沌の民♀)
【風ノ軍】――通称:奇襲部隊(計8名)
隊長:ゴブ幸くん (G♂)
副長:伊ノ吉 (K♂)
軍員:伊ノ宗 (K♂)
:伊ノ隆 (K♂)
:K (G♂)
:バグブロ (B♂)
:バグダム (B♂)
:バグナエル (B♂)
種族問わず似たような傾向にある戦闘タイプを集めて固めてみた。
今後の成長を期待して雌一同はゴブ姫ちゃんに預けて魔法の特訓を行ってもらう。
一匹だけ雄ゴブリンが混じっているが、彼は例の武闘大会で俺と戦ったゴブリンで、色々と器用だったので魔法も使えるようになってもらいオールラウンダーとして育ててみようと思う。
本音は、女だけが集まると女性的な何かで色々と良からぬ問題が起きるような気もしたので、生贄として我慢強い若い男の子を捧げてみた。
俺の部隊だけ自棄に数が少なくしかも意図的な編成になっているが、これは致し方が無いことだ。
一応、ラミーナの次に強い朱髪さんと空髪さんだったが、流石に俺から引き離してモンスター達の中に混ぜる事も出来ないし、何より戦闘力のバランスを考えると出来る限り俺の部隊は少ない方が良い。
別にイチャイチャしたいからでは……。
あと他に、俺の部隊の直下部隊に子供達だけを集めた予備隊員を配属している。
別に無くても良いのだが、子供達はこういう事が大好きなので、やる気を出させるために作ってみた。
【月ノ予備隊】――通称:GKB8(計8名)
隊員:御沙樹 (K♀)
:御菜江 (K♀)
:アクリス (G♀)
:エリアス (G♀)
:バグフェ (B♀)
:バグファン (B♀)
:エルフちゃん (エルフ♀)
:δ (G♀)
【星ノ予備隊】――通称:STARS(計7名)
隊員:瀬ノ定 (K♂)
:蔵ノ秀 (K♂)
:D (G♂)
:H (G♂)
:T (G♂)
:Y (G♂)
:バグウォー (B♂)
余談だが、ゴブリン達は名前を持っておらず仕分け時に困ったため、この際なのでパパッと名付けてみた。
アルファベット一文字に呼び名を付け、実際の本名はこのアルファベット一文字の前にGを付ける。
例えば、GF――ゴブリン・ファランクスというのが正式な名前。
但し例外としてアクリスとエリアスだけは俺の家族なので、このGは除く。
アルファベット一文字も持たない。
何故、急に軍編成をしたのかという質問には、朝食を振る舞うと共に簡単に説明していった。
いきなりではあるが、これから遠征に出かけようと思う。
目的は――以下、省略。
遠征と言った瞬間にほぼ全員が沸き立ってしまい、以降はまるで聞いてくれなかった。
とりあえず士気があがったので、そのままの勢いで出発。
家族と子供達、老人衆をダンジョンに残し、意気揚々と森の中を進軍していった。
結局、俺だけソロ軍になってしまったが、もともとそのつもりだったのでまるで問題なし。
一応、訓練も兼ねているので、本隊である【地ノ軍】を中心に俺が直接指示を出し(現在隊長不在の為)、モンスターを発見した時には彼等を中心に狩っていく。
重装備のバグベア達を前面に出し、武士型のコボルト2匹が攻撃を担当、ゴブリン2匹は臨機応変に動かせる。
後方には【水ノ軍】を配置し、まだ魔法を使える者はいないため弓などの武器で遠距離支援を任せ、【風ノ軍】は本隊から近づかず離れずを維持したまま気配を消して森の中を進む訓練を俺とゴブ幸くん主導で行い、いち早くモンスターを発見して本隊に伝令を出したり、敵の数が少ないときには時々暗殺紛いの事もさせた。
そんな感じで暫く森の中を進み、目的地に辿り着いた後は暫く休憩して鋭気を養わせる。
一時的に軍の指揮権をゴブ幸くんに委ねて軽く指示を出し、皆をその場に残して俺は単身、交渉の地へ赴く。
今回は非常に危険な仕事になる予定なので――俺にとっては楽な仕事なのだが――俺の合図が無い限り絶対に襲い掛かるなと言明してある。
もし問題が起きても、ここ数日鍛えた逃げ足があれば恐らく逃げ切れる筈。
物事が悪い方向に向いていない事を祈りながら、俺は誰も待っていない目的地――樹の上に大きな繭がぶら下がっている場所へと到着した。
それから数時間後。
もしかしたらすっぽかされたかなと思いつつ、日が落ちるまでチクチクと縫い物でもしながら待ち続けていると、ようやく相手が姿を現した。
三日前と変わらない姿のままの女戦士。
まずは軽い挨拶を交わし、そこでふと思い付いたのでさっきからずっと作り続けていた絹糸のミサンガをプレゼントしてみる。
防具的価値はないが女戦士は大層喜んでくれて、すぐにその場で身に着けてくれた。
かつては無骨で幅広のブレスレットがあった手首に、陽光にキラキラ輝く絹糸のミサンガが付けられると、やはり女戦士も女性という点で何か思う所があったらしく、暫く手首のミサンガを眺めて感慨に耽っていた。
好感ポイントを稼いだ後は酒盛りを始める。
ただ酒を売り買いする関係では味気ないし、俺は女戦士とはこれからも友好を深めていきたいと思っている。
そして仲良くなった後は――クックックッ――おっと、つい悪魔の笑みが零れてしまった。
今宵は良い月だ。
さぞ楽しい夜になることだろう。




