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デモンズラビリンス  作者: 漆之黒褐
第三章
67/73

3-19

◆第十一週 七日目 闇源日◆


 生き残っているバグ族のうち、いつも鎧姿で顔を見せてくれなかった一匹――例の武闘大会で俺が戦った者――が、このたび『存在進化』に入った事が判明した。


 本日もとても安らかな笑みを浮かべて眠りに就いた2人を家に運んでいる途中、ふと目に入った異様な物体。

 土と柵と鎧が混じり合ったとても不気味な混沌の塊がバグ族が寝泊まりしている一角に存在しており、急遽バグベア達を叩き起こして確認させたところ、間違いないという回答が返ってくる。


 バグ族には長老が生き残っていなかったので、丁度良いので、そいつが目が覚めたら種を仕切らせるよう言っておく。

 俺が直接指示を出すよりも、同じ種の仲間が取り仕切る方が色々と彼等もやりやすくなるだろう。


 ただ、もう少し彼等と話をしてみると、別の問題点が発覚した。

 それは、今回『存在進化』する個体が実は雌であるということ。

 いや、別に彼等は雌が種のトップに立ち命令してくるのは別に構わないらしいので、これは男女差別という問題ではない。


 問題は、種で唯一の雌が進化の準備に入ったことで、彼等は暫く子作りが出来なくなったという事だった。

 種の中で単身抜きんでて強くなった彼女が子を宿すのは、あまり良い事ではない。

 最大戦力でありかつ種族を率いている者が頻繁に身重の状態になっては色々と問題があると彼等は主張する。

 だから……その後の言葉は語るまでもないだろう。


 実は大変気まずかった。

 何故なら、俺の腕にはまだ朱髪さんと空髪さんが抱かれていたからだ。

 バグベア達の瞳はとても冷たく彩っており、例えどの様な弁明をしたところで通じそうになかった。

 先に2人を家に寝かしてくれば良かったか。


 追い詰められた俺は、善処する……という言葉すらも口に出せる筈もなく。

 一言「分かった」とだけ言ってその場を離れた。


 家に帰ると、今度は御沙樹の冷たい瞳が待っていた。

 2日連続で朝帰りした俺達3人に、もう間違いなく家族全員がそれを悟っていた事だろう。

 ただ、御沙樹の「こ・ん・や・は・わ・た・く・し・も」という言葉だけは聞き逃せる筈もなく。

 本日も御沙樹限定で特別訓練。

 現在2徹中の俺に無駄な体力を使わせるなとミッチリ身体に叩き込んだ。


 たっぷり汗を流した後、仕事に向かおうとすると復活していたゴブ幸くんに呼び止められる。

 嫌な予感を覚えつつ彼の後を付いていくと、やっぱり嫌な事が待っていた。

 バグベア達に伝えた言葉がもう全員に知れ渡っていたのだ。


 まぁ全員がこのスライム牧場で暮らしているのだから、噂は一瞬で広まるか。

 俺と朱髪さん空髪さんとの関係も皆が知っていた。

 というか、しっかり覗き見されていた。


 うん、覗き見していた奴は後で殺そう。


 それは兎も角。

 もはや逃げ道を塞がれた俺は、仕方なく亜人女性3人との子作り許可を出した。

 但し、幾つかの決まり事を守る様に約束させる。


 余談だが、覗き見していた奴(ゴブ幸くん)はどう足掻いても俺から許可は出せないので、除外する。

 というか俺にそんな勇気はない。

 ゴブ姫ちゃん(こいびと)にお伺いたててくれ。

 即行で×と罰がくだった。


 では、解散――しようとしたところ、待ったがかかる。

 後で諍いが起こると嫌なので、まず最初に俺が彼女達を抱いてくれと言われた。

 このコミュニティのトップである俺が最初に抱いておけば――遠征組が既に抱いているが、彼等は全員死んでいるので無効になっているとのこと。あれ、ゴブ幸くんは?――彼女達の所有権は間違いなく俺だと皆が認識し、奪い合いが発生しなくなる。

 このルールは最長老が最長老である前からあるこのコミュニティの伝統であり、出来ればそれを守って欲しいと。


 だが、俺には朱髪さんと空髪さんという恋人がいる、だからその申し出は受けられない……と言おうとしたのだが、既に2人への根回しは終わっているから問題無いと先回りされてしまった。

 何だかここにきて色事関係の外掘りが着々と埋められている様な気がする。

 首謀者はゴブ幸くん……ではなく、その横でニコニコと微笑んでいるゴブ姫ちゃんか?

 一男性としては真に嬉しい事このうえないのだが、何となくゴブ幸くんが不憫に思えてくるのが不思議だった。


 とりあえず郷に入っては郷に従えという事で、彼女達3人の最初の相手は俺が担当した。

 家に帰り事情を説明した後、3人を運び出し個室に連れ込む。

 覗かれるのは当然嫌なので入口を簡易ドアで塞ぎ、更に防音処理を施したあと、彼女達の身体の準備と雰囲気作りも兼ねてスライム達をけしかける。


 暫くスライムプレイを眺めて楽しんだあと、丁寧に彼女達を抱いていく。

 心が壊れているからなのか、それともスライムローションがちょっと効きすぎたのか、彼女達は思いのほか行為に積極的で、まるで快楽を貪る様に自ら動いていた。


 いや、なかなかに凄かった。

 スライムがまさかあんな事を……いや、それよりもスライムを混ぜると肌に艶が出て彼女達の魅力がまた一段と……スライムが休ませてくれなかったのは流石に……凄すぎて思わずスライム最強伝説と叫んでしまった。

 基本の一対一はいつになったら出来るのか。


 いや、それよりこのスライム達を使っての行為は秘密にしておいた方が良いかもしれない。

 欲に溺れやすい彼等がもしスライム達を使って彼女達と楽しみ始めると、快楽に溺れて死ぬまで楽しみ続けてしまう可能性が高い。

 朱髪さん空髪さんとの情事も凄かったが、今回のはそれを軽く上回る程に物凄かった。

 むしろこっちに帰って来れたのが不思議なぐらい。


 あまり長く個室に籠もっているといらぬ噂を立てられ朱髪さん空髪さんの機嫌を激しく損なう恐れがあったので、適当なタイミングで切り上げる。

 連続の行為は禁止し、また一度抱いた後には十分なインターバルをあけるように言い含めているので、以前いた女性達の様にボロボロにされる事はまずないだろう。

 便利なスライム達がいるので、事後には身綺麗にさせる事も出来る。

 綺麗好きで悪食な彼等には汚物も立派な栄養源。

 ただ、心が壊れているのに快楽に対してはしっかり反応するのが少し気になったが、まぁそこはスライムと一緒だからと無理矢理に納得しておく。


 3人娘はそのまま部屋に残し、彼女達の世話係に任命した御菜江達を呼ぶ。

 これから彼女達はそれぞれ個室に移され――これから俺がその専用部屋を作る訳だが――そこで毎日を過ごす事になる。

 何が正しくて、何が異常で、何がいけない事なのか、もうよく分からない。


 ただこれだけは言える。

 もう匙は投げられてしまったのだと。


 流石に疲れていたため、その日の夜は何をする事もなく眠りに就いた。






◆第十二週 一日目 月源日◆


 貝殻(ベッド)に入った時には3人だったのに、起きてみると4人だった。

 恋人になった朱髪さん空髪さんの他に、エルフちゃんがまた潜り込んできて俺の首に腕を巻き付けまた締めている。

 今度はヘッドロック。

 この奇妙な寝相はいったいどこで学んだのか。


 今日の朝食は、珍しくそのエルフちゃんが用意してくれた。

 まだ採集にはいけてないので、本日も朝から魔物の肉一点のみ。

 ただ焼くだけの調理。

 それなのに、口に入れた瞬間吐いた。


 絶望的に不味い。

 口に入れた瞬間、泥臭い血の味と何とも言い難い肉汁の脂っこさが口の中を駆け巡った。

 噛むとゴムの様な弾力で歯が押し戻され、また生温くヌメッとした肉汁が口内に広がり舌に絡みついてくるという不快感。

 昨日食べた肉と全く同じものだとは到底思えなかった。


 ふと周囲を見ると、驚いている視線が八つ。

 それと冷たい視線が一つ、ニコニコと微笑んでいる視線が一つ。

 犯人は間違いなく後者2つのどちらかなのだが、フリルのエプロン姿で調理している姿を眺めていた俺には分かる。

 これはニコニコと微笑んでいる者――エルフちゃんが間違いなく犯人だと。


 何故だろうか?

 何となく、いや確信的に、笑っているエルフちゃんが不機嫌に見える。

 一昨日からずっと冷たい視線を向けてくるラミーナが不機嫌なのは理由も含めて十分に理解しているのだが――俺がラミーナの誘いを拒んで、その後すぐに朱髪さん空髪さんと致した事に大変ご立腹している――エルフちゃんが機嫌を損ねる理由が全く分からない。


 小首を傾げながらエルフちゃんと仲の良いバグフェに目で訴えてみると『さぁ? 分かりませんわ』と言われ、天真爛漫なアクリスに視線を向けるとちょっと困った笑顔を返され、ならば忠義に厚い御菜江に助けを求めると『親方様、骨、拾う』と意味不明の言葉。

 その隣にいる御沙樹からは『つ・ぎ・は・わ・た・く・し』とこちらは無視だな、空髪さん朱髪さんはアクリスと同様に困った表情で静観姿勢、御転婆エリアスはリリーの餌やりに夢中で、何故か執事姿のバグファンに至ってはガン無視された。


 暫く悩んだが、やはり全く分からなかったので、仕方なくそのまま今日は朝食抜きで仕事に出かける事に。

 なのにエルフちゃんが当然の様に肩車してきて、起きているのに俺の髪をムシッムシッと。

 仕事中いくら話し掛けてもエルフちゃんはニコニコ笑ったままで、非常に不気味だった。


 昼食時に朱髪さん空髪さんが初めての手作り弁当を届けてくれると、あろうことかエルフちゃんはそれを掻っ払って食べてしまった。

 何故だ。


 悩みながらも仕事を続けているとゴブ姫ちゃんが通り掛かったのでそれとなく相談しようとすると、エルフちゃんに口の中へスライムを放り込まれた。

 3時のオヤツだそうな。

 当然すぐに吐き出した。


 そのままお腹を空かしたまま夜まで働き続け帰宅。

 一日中、俺の上にいたエルフちゃんが「お股が痛いです……」と言っていたが、それは自業自得。

 夕食を食べようとしたところでまたスライムドレッシングをかけられそうになったので、そこは何とか死守した。

 横取りするのは兎も角、それは流石に洒落にならない。


 ほとほと困り果て俺の苛立ちが表に出始めると、今度はラミーナが俺の背中に抱き付いてきて蛇状の下半身でギリギリと締め上げてきた。

 ただ、それはいつもの事だったので、むしろそれで俺は少し落ち着いてしまう。

 噛み付かれたり爪を立てられたりするのもやっぱりいつもの事なので、逆効果。

 ご立腹中のラミーナに手加減の二文字はなく、以前の様な甘えてます的な攻撃ではなかったが、エルフちゃんからの無言のプレッシャ―に比べれば随分可愛く思えてしまう。

 解決策も分かりきっていたので、ラミーナは全然怖くなかった。


 最近、その方面に関しては随分と慣れて丸くなってしまった俺だが、流石に恋人と子供達の目の前でイチャイチャし続ける訳にもいかず、ラミーナを力尽くで引き剥がす。

 引き剥がす際に耳元でごにょごにょと何事かを囁き、ついでに小指同士を絡めて指切りするとすぐにラミーナは大人しくなった。


 別に睦言の約束をした訳では無く、「スライムが……」な話をうんちゃらかんちゃらと言っただけなのだが――指切り云々はあっち側の知識なので、ただの思わせぶり――それだけでラミーナはあらぬ事を勝手に妄想し始め自滅。

 まぁそのうち相手をするのは吝かではないので、落ち着いた頃にでも朱髪さん空髪さんに相談してみようと思う。







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