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◆第二週 二日目◆


 実は昨日から日付をカウントしている。

 それまでも一応はカウントしていたが、半信半疑だった。

 しかし今は天井にポッカリと空いている穴から差し込む光で昼夜を区別し、無人島遭難者よろしく壁を傷付けて確認している。


 ……線が十本くらい増えていた。


 犯人を餌にして今日の食材を釣る。

 ただ池に浸からせるよりも血を流させた方がモンスター達も発見しやすいだろうと気付き、有言実行。


 クズハもフォル(はんにん)も『気付かれたっ!?』という顔をしていたので、これが本来の釣り方らしい。

 俺の場合は右腕から何故だか良い出汁が取れるみたいなので、たぶん問題ないだろうという事で傷付けられなかっただけである。


 ちなみに思い付いた理由は、フォルが抵抗してきた際に魚の骨(フルーレ)で反撃してきたので、叱る際にちょっと強く頬を叩きすぎて鼻血を出させてしまったからだ。

 フォルも冗談のつもりだったと思うが、危うくクズハに切っ先が掠るところだっため、少しきつめにお仕置きした。

 こんな所はまだ7歳児なんだなぁと思う。


 (ポンド)なのに湖蟹(レイククラブ)というモンスターの甲羅を盾代わり、キラーフィッシュの骨を武器代わりに装備したフォルが、陸に上がってピチピチ暴れる釣果(キラーフィッシュ)と激しいバトルを繰り広げる。

 今までは武器も防具もなかったのでまるで戦いにならなかったのだろう。

 意外にもフォルはやる気だった。

 クズハに良い所を見せたいという思いもあったのかもしれない。

 何故今まで魚の骨が胃袋を満たしてくれるだけでなく武器としても使える事に気付かなかったのかと思ったが、それだけ食う物に困っていたのだとクズハの説明を聞いて納得する。

 それに以前はここまで元気な状態ではなかったとか。


 エラ呼吸でしか酸素を取り込めないキラーフィッシュは、それでも暫くの間は酸素が保つのか、陸上でも意外に善戦していた。

 胸びれと腹びれと尾びれを器用に使って目的の場所目掛けて飛び跳ね、頭突きもしくは背ビレの鋭さを以てフォルを攻撃する。

 時々、ギザギザの鱗で削るような荒技も見せていた。


 対するフォルは、狼獣族が得意とする素早さを活かし、キラーフィッシュの攻撃を避け、隙あらば魚の骨をキラーフィッシュの身に突き刺していた。

 とはいえ魚の骨はそれほど強度は高くなく、数度刺せば先端が欠けて使い物にならなくなる。

 そこは数で補った。


 まさに闘牛ならぬ闘魚の様相を見せ始めたキラーフィッシュの可哀想な惨状に、クズハが思わず「かわいそう」という言葉をつい口走ってしまったのも無理からぬ事だろう。

 フォルの方もキラーフィッシュの攻撃を全て避けきれずに少し怪我をしていたが、本人が単独で撃破したいというちょっと格好付けたお願いをしてきたので、俺達は出来る限り手出しせずに見守っていた。

 威嚇や挑発で意識を散漫にさせる事ぐらいはしていたが。




◇◆◇◆◇




 十数分にも及んだバトルはついに決着が着き、勝者が雄叫びをあげる。

 狼の遠吠え。

 こら、敵を呼ぶな。

 どちらかというとキラーフィッシュが酸欠で自爆した気もしないでもないが、そうなるまで必至に頑張ったフォルにお疲れ様と言っておく。


 雄叫びの後に力尽きて地面にぐでっとなってしまったフォルの身体を綺麗にするため、池の水で洗う――という理由を適当にでっち上げて、もう一匹モンスターを釣る。

 今度はクズハの番だな……と言いながら振り返ると、そこにクズハの姿は影も形も無かった。

 微妙に勘が良いらしい。

 仕方なく自分で仕留める。


 敵は人魚でも入れそうな巨大貝だった。

 釣り糸に引っ掛けられて釣られるなら兎も角、自らバシャバシャと泳いでくるなと言いたい。

 御前、本当に貝か?

 いや、モンスターだから常識は通じないか。


 貝柱が美味そうだ。

 じゅる。




◇◆◇◆◇




 動かなくなったキラーフィッシュと巨大貝とフォルをホクホク顔で安全な大部屋に運び、早速実験(ヽヽ)を開始する。

 確かめたかったのは、俺の右腕。

 二日前、あれほど衰弱していた2人が、俺の右腕を舐めただけで一気に快方へと向かい一晩で元気一杯になったというのは異常すぎる。

 どういった原理が働いているか確認する必要がある。

 否。

 原理はどうでもいいから、どこまでの効果を持っているのかを確認しておきたいというのが本音だ。


 飢餓を救う栄養がある事は分かっている。

 体力を回復させる効果があるのも知っている。

 ならば、怪我を回復する効果はあるのか、その回復速度と影響力はどの程度なのか。

 それを確認するのに、ちょうど怪我をしているフォルはまさに打って付けだった。


 欲を言えば実験体はもう一体欲しかったのだが……まぁ俺も鬼ではないので今日の所は見逃してやろうと思う。

 悪魔だけどな。


 まずは死体が生き返るか試してみる。

 いや、フォルが血を流しすぎて死んでしまったと言っているのではなく。

 キラーフィッシュと巨大貝で試すだけである。


 汲んできた池の水に右腕を浸けたスープをキラーフィッシュの口の中に流し込み、巨大貝の中身にかけて暫く待つ。

 何も起こらなかった事に安堵。

 流石に死者蘇生効果まであったら身の危険が格段に跳ね上がるので、一生をこのダンジョンで過ごす覚悟をする必要があった。


 では本命のフォルに指を吸わせる。


 何も起こらなかった。

 怪我が回復しないどころか、フォルの体力も回復する兆しがまるでなかった。

 ふむ……出汁がきれたかな?


 その後はクズハを呼んでフォルを介抱させ、食材の解体とアイテム製作に取り組んだ。

 巨大貝の名前はビッグパールシェルというらしい。

 残念ながら中に真珠は入っていなかった。


 朝食は〝ビッグパールシェルの貝柱焼き〟。

 レモンが無性に欲しい。

 というか、食べても大丈夫なのだろうか?

 毒、持ってないよな?


 調理中、クズハとフォルにそっと貝柱の切り身を軽く炙ったものを与えて様子を見る。

 二人は美味しそうに食べていた。

 暫く観察。

 二人が首を傾げていたが、適当に誤魔化しておく。


 ……ふむ。

 問題ないようだ。

 では、いただきます。


 昼はフォルが仕留めた〝キラーフィッシュの刺身〟……といきたかったが、綺麗な水がないうえに生は非常に危険だという事に今更ながら気付き断念。

 焼き魚ならぬ〝焼きキラーフィッシュ〟にする。

 昨日既に生で食べてしまっているが、過ぎた事は諦める。

 何も無い事を祈ろう。

 もし何かあっても、俺は悪魔だからきっと大丈夫だ。


 夜はレイククラブを焼いて食べる。

 〝レイククラブの炙り焼き〟と〝レイククラブの石焼きステーキ〟。

 焼き物ばかりが続く。

 調味料がないので、早くも次の食材が欲しいなと思い始める今日この頃。

 食を充実させるにはどうしたものかと少し頭を悩ませた。


 塩が欲しい。






◆第二週 三日目◆


 簡易ベッドの上で爽快な目覚めを迎える。

 食の充実も大切だが、家具の充実も大切なのだと身に染みた。

 これほど違うとは……。


 ビッグパールシェルの貝殻は、中身を抜き取ったらそのまま俺達が寝るベッドへと早変わりした。

 大きさが丁度良いだけでなく、貝殻を閉じれば保温も出来るという優れもの。

 後は柔らかい敷き毛布でもあれば言う事は無いだろう。

 今までは少し寒い場所に野晒しで寝ていたのだから、この快適度の違いに2人は物凄く喜んだ。


 ただ、目を覚ましたら湯たんぽのように抱き付かれているのは昨日と変わらなかったが。

 クズハは兎も角、フォル(おとこ)に抱き付かれても全く嬉しくない。

 せめてもう少しモフモフ度があれば……いつかフォルは狼男になってしまうのだろうか?


 本日はダンジョン探索に洒落込む。

 食う物には困らない事が分かったし、随行する2人の装備も多少良くなったからだ。

 身一つで十分戦える俺には必要ないが、フォルとクズハは装備が布の服だけではあまりにも心許なさすぎる。

 如何に俺が強くとも一人(ソロ)では限界があるし、かといって戦力にならない者を守ってばかりでは疲れる。

 だから2人にも最低限、身を守れるだけの装備と、ダメージを与える事が出来そうな装備を身に着けてもらった。


 武器にはキラーフィッシュの大骨から作った骨棍棒(メイス)小骨剣(フルーレ)数本。

 身体を守る防具には、キラーフィッシュの鱗を繋げて身体に巻いた魚鱗の鎧(スケイルメイル)

 それと、フォルには昨日も使ったレイククラブの甲羅盾(ケリペイスシールド)を持たせている。

 前線に立ってもらう予定はないが、敵が複数現れないとは限らない。

 俺が助けに入るまでその装備で自分の身は自分で守るようにと言っておく。


 この《宝瓶之迷宮アクエリアス・ラビリンス》の大きさは、そのダンジョンがある国がスッポリ入ってしまうほどの想像を絶する広さを持っているらしかった。

 いや、それは流石に広すぎるだろうという俺のツッコミは半ば予想していたのか軽く流され、2人は自分達が知っている情報を色々と俺に教えてくれた。


 それによると、どうやら国中にある個々の小規模ダンジョンが奥で別のダンジョンに繋がっており、そのダンジョンの奥で更に別のダンジョンに繋がり……というのが延々繰り返され、調査の結果、一つのダンジョンである事が判明したらしい。

 誰かが意図的に掘ったのか?という疑問には解答が見つからず。

 地上の距離とダンジョン内の距離を測定してもまるで一致しないらしく、このダンジョンは異なる次元空間上に存在しているものとされていた。


 このダンジョンのような理解しがたい規模もしくは難易度のダンジョンはこの大陸には少なくない数が存在しているのだとか。

 また、《宝瓶之迷宮》などという大層な名が付けられてはいるものの、このダンジョンの上層は比較的難易度の低いダンジョンの集合体であり、同列に扱われている他の《黄道十二異界(ゴールドダンジョン)》に比べると危険度は天と地の差があると言う。

 ならば何故同列に扱われているのかと聞くと、このダンジョンの地下第5層に誰にも撃破出来ない凶悪な魔物が住んでいるからだという答えが返ってきた。


 地下第4層までは初級レベルの冒険者PTでもギリギリやっていけるレベルの難易度なのに、何故か第5層には災害級のドラゴンが。

 しかもそのドラゴンがいる部屋を突破しないと、まだまだ下に続いていると分かっているこのダンジョンの奥には進めない。

 つまりそのドラゴンがいるせいで、このダンジョンの攻略難易度は最頂点に位置していた。

 聞けば、他のゴールドダンジョンにも似たような、というかそれ以上の化け物がいるらしい。


 ちなみに、先があると分かっている理由は、ドラゴンが後から住み着いたからだとか。

 その豆知識は今必要ないだろうと言って本題に戻させる。


 蟻の巣のようにも見える洞窟内で安全な通路はまずないと言っていい。

 だが、ある道だけはそれなりに安全が確保されていた。

 その道だけ定期的に聖水を巻いて、モンスターを寄せ付けないようにしていたという。


 していた……つまり過去形。

 少し前まで2人がお世話になっていた神官が、何故かその道だけ聖水を巻いて安全を確保していたという。

 今その人は?と聞くと、2人は揃って首を横に振る。

 自分達が死にかけた時を境に見ていない、と。

 恐らくモンスターに襲われてもう生きてはいないだろう、そういう事はこれまでも良くあった、と2人は言う。

 思わず右腕をチラッと見てしまった。


 他に人がいたのか?という質問には、例の穴からたまにゴミやら人やらが落ちてくるという答えが。

 落ちてくる人はゴミの様な人間が多いらしいが。


 そのごみのような人達の行方は2人の顔を見ただけで聞かなくともすぐに分かった。

 2人が何故ここにいるのかという疑問も、俺の中でより正解に近づく。


 そうか……二人はゴミだったんだな。

 などとボソッと呟いてみたら、物凄く怒られた。

 場を和ませようとしただけなのに。


 お前ら、暗いよ。

 もう少し笑え。




◇◆◇◆◇




 クズハの【狐火】が発する炎光を頼りに洞窟内を慎重に進む。

 ゴミのクズハ……単なる冗談だったのに、ちょっとなんか頭について離れない。

 クズハの名前が悪い。


 それは兎も角。

 聖水の効果がもう怪しいという事が分かったので、例のスタート地点を目的地とするのは止めて、活動拠点の近くを重点的に調べる。

 そう言えば俺もモンスターの一種なのに聖水は効かないんだな、という新たに追加された疑問にはいつも通り考えないようにしておく。


 ダンジョン内は、予想以上に危険な場所だという事が分かった。


 一つ目の別れ道を曲がった先にあった部屋ではスライムを発見。

 回れ右をしてその先の調査は後回しにする。


 次の別れ道を曲がると行き止まり。

 だが、そこにはなんと宝箱が存在した。


 嬉々としてフォルが開ける。

 すると、突然中からギザギザの歯が現れ、フォルがっ!?


 ……。

 ……。

 ……。


 レイククラブの甲羅盾で間一髪防御したフォルは九死に一生をえた。

 気のせいか、キラーフィッシュと死闘を繰り広げていた時よりも動きが良かった気がしたが、鍛治場の馬鹿力ということで納得しておく。

 チッ。

 クズハ(おんなのこ)と二人きりの生活が出来ると思ったのに。


 いや、俺は別にロリではないので、そんな事は欠片も思っていない。

 むしろ想っているのはフォルの方だろう。

 同じ年頃の可愛い女の子が側にいて男が惹かれない訳がない。

 今のはもし仮に俺が宝箱を開けていた場合のフォルの気持ちをトレースしてみただけである。


 期待を裏切るようで悪いが、現実には早々思っていたような状況は訪れない。

 おお、人食い箱がこの世界にもいるのか――という俺の期待はあっさり裏切られ、実は底の抜けた宝箱と獲物を待っていたミミズだった。

 紛らわしい真似をするな!という俺の怒りが炸裂し、ミミズはその人生を終えた。

 クズハ曰く、ラビリンスワームというのが正式名称なのだとか。

 あと、煮ても焼いても食べられない、という残念な情報も。


 ――いや、もしかしたら悪魔の俺なら食べられるかも?

 念の為、地面から引っ張り出して部屋に運んでおいた。

 解体したら鉱石とか入っているかもしれないしな。


 紛らわしい宝箱を破壊し地面に開いた穴を埋めた後、そんな調子で周辺調査と遭遇戦を繰り返していく。




[ベビちゃんはスキル【逆さ好き】を対象よりスティール]




 シザーバットというはぐれコウモリは闇の中から急襲してきた。

 クズハの【狐火】で照らせる範囲は狭く、しかもそのクズハを優先して狙ってきたので辺りが闇に包まれしまった時には少し焦ったものである。

 しかも相手はコウモリなので、超音波を使ってこちらの位置を正確に特定出来る。


 これは早くも仲間を失う覚悟をしなければならないか!?

 ――と思ったが、よく考えたら俺には【空間視】という超音波にも負けないスキルを持っていたので、シザーバットが勝ち誇ったように一番小さい俺へと襲い掛かってきたところをカウンターで迎撃してやった。

 手に入れたスキルの使い道はあるのだろうか?




[ベビちゃんはスキル【逃げの一手】を対象よりスティール]




 次に襲い掛かってきたウォーラビットは、漢字にすると戦兎になる。

 瞳が紅く闇の中では仄かに輝いており、また好戦的。

 しかし逃げる時には脇目も振らずに一目散。

 体当たりが強烈で、キラーフィッシュの攻撃を正面から受けても耐えていたフォルがウォーラビットの突進攻撃を受けてよろめいていた。


 だがその攻撃後の隙をついてクズハが骨棍棒でガツっと。

 それだけでは終わらず、逃げようとしたウォーラビットの先に回り込んで更に一撃。

 その後は動かなくなるまで滅多打ちして、最後に小骨剣をブスッと突き刺して息の根を完全に止めた。

 ……実はフォルよりも強い?


 ちなみにその頃俺は、もう1匹いたウォーラビットと交戦していた。

 毛皮を手に入れられる事が余程俺は嬉しかったのか、後で2人から俺は不気味な笑みを浮かべて戦っていたと聞く。

 前世では無表情だと言われていたのに、どうやらこの新しい顔は随分と正直者らしい。




[ベビちゃんはスキル【擬態】を対象よりスティール]




 例の池とは別の水場を発見したので、早速何が釣れるか池に入ろうとしたところ、クズハに止められた。

 どうやらこの池には最初からミミクリーアクアリウムという水草モンスターがいて、池に入った瞬間、足を絡め捕られて水中に引きずり込まれるらしい。

 つまり過去にその犠牲者がいたという事だ。


 さしもの俺も水中に引きずり込まれたら勝ち目は薄い。

 しかしその水場は【狐火】で照らしてみると、拠点近くにある湖よりも水質が綺麗で、水底にいる水草モンスターの姿もハッキリ見る事が出来た。

 どうやらこの池は別の水源へと繋がっている様で、この水草モンスターがここで水を浄化してくれているようだ。


 ここは思い切ってこのミミクリーアクアリウムを倒し、この水場を確保する。

 骨棍棒を水の中に入れ、ミミクリーアクアリウムを挑発。

 予想通り骨棍棒に水草(うで?)を絡めてきたので、3人で頑張って引く。

 綱引き合戦は苛烈を極めた。

 だが1分も頑張っていると、ミミクリーアクアリウムはブチッと千切れて身体の一部が陸へと引き上げられた。


流石はモンスター。

 陸に上がっても身体が引き千切られてもまだピンピンしており、しかもやたらと強くて中々に白熱した戦いとなった。

 しかもクズハとフォルが水草に捕獲され、盾代わりに使われる始末。

 柔軟でしなやかで強靭な草の身体に俺が得意とする格闘術はとても相性が悪く、かといって単独でミミクリーアクアリウムの身体を引き千切る力も持ち合わせていない。

 かなり面倒だったが、あまり慣れていない小骨剣を使って一本一本突いて無力化していった。


 時々先端が2人の身を掠め、そのたびにヒット音(ひめい)が聞こえてくるので、少し楽しくなって後半はわざと掠めていたのはここだけの秘密だ。


 陸に引き摺り上げた半身を片付けた後、水底に残っている方を骨棍棒でつんつんつついてみるも反応なし。

 どうやら本体の方を引き摺り上げる事に成功したらしい。

 他にモンスターがいる様子もなし。

 フォルとクズハに残っている部分を引き上げさせた。

 俺が入ると新しい敵を呼んでしまうしな。


 その日は流石に疲れたので探検はそれで終わりにし、ウォーラビットの毛皮を剥いで肉を食べた後はすぐに寝た。

 魚介類が続いていたので、〝ウォーラビットの焼き肉〟は非常に有り難い。

 味付けも何もなかったが、肉汁がじゅわ~っと出てくるだけで涎が出てくる。

 それだけで御飯一杯はいけそうだと思った。

 ああ、御飯が恋しい。


 明日もウォーラビットを狩ろうと心に決める。

 毛皮ももっと欲しいし。






子狼「狐火、便利過ぎない? 魔法じゃ無いんだよね?」

子狐「うん」

悪魔「……じゅるっ」

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