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デモンズラビリンス  作者: 漆之黒褐
第三章
56/73

3-8

 ボーリングのピンの様に蹴散らした後は、それはそれは悲惨な状態だった。

 思わずやり過ぎたと思った程だ。


 体重が軽い者達は天井や壁に突き刺さり。

 その逆で、重装備に身を固めていた者達は中途半端に空中を浮遊した後、地面に叩き付けられ、四肢が曲がってはいけない方向に曲がっていた。

 直撃を免れたものでも、すっ飛んできた仲間に会心の一撃を食らい虫の息。

 運良く何の被害も受けなかった者も、その後丁寧に殴っておいたのは余談である。


 人間ボーリングを楽しんだ後は、一箇所に集める。

 意識がまだ残っていた者は絶っていく&【ライフスティール】。

 そのうえで治療を行い、まだ見ぬスキルがないか【ライフドレイン】。




[アルちゃんはスキル【悪食】を対象よりスティール]

[アルちゃんはスキル【雑食】を対象よりスティール]

[アルちゃんはスキル【統率】を対象よりスティール]

[アルちゃんはスキル【指揮】を対象よりスティール]




 残念ながら、これだけ上位個体が揃っているというのに、ほとんど重複しているものばかりで新規スキルはあまり手に入らなかった。


 【統率】【指揮】はホブゴブリンリーダーや一部の者が持っていたが、ほとんど熟練度が入らなかった事からして、元々あまり成長していないのだろう。

 それに対し【悪食】【雑食】はほぼ全員から手に入ったので熟練度が一気に上がった。

 だがあまり役立てたいと思う様なスキルでは無いな。


 ただ、彼等の胃がどうして丈夫なのかはこれで理解する。

 あと、『存在進化』するまでこのスキルをスティール出来なかったのは、俺の種族がまだ低かったからだと思われる。

 下位種族である最長老がコッソリ女達に手を出そうとしたのでお仕置きしたら【悪食】をスティール出来たので間違いない。


 ちなみに【強精】【強姦】といったスキルを持っていなかった事にホッとしたのは秘密だ。

 いや、後者は間違いなく持っているのだろうが、恐らく俺の方が熟練度が高いのだろう。

 外で豚野郎どもを殺った際に手に入れてしまったしな。


 む……そう考えると、こいつらより豚野郎どもの方が経験豊富なのか。

 つまり、それだけ悲惨な目にあっている女性が多いという事になる。

 この件は少し頭の中に留めておくとしよう。


 お仕事終了。

 この集落を任されている?者として、秩序を乱そうとした輩の排除は恙無く完了した。

 周囲がドン引きしている事に気が付いたが、最近ちょっと慣れてきたのでスルー。


 朱髪さんと空髪さんも呆気にとられていた。

 ああ、そう言えば2人にはまだ俺の実力は見せた事が無かったか。


 今現在の俺の実力は誰も知らないだろうが、ちょっと前の実力であればこの集落にいる者達は知っている。

 予想通り、ちょっと耐性がついてきた彼等の方が我に返るのは早かった。


 まだ放心していた2人に近づくと、軽く逃げられた。

 地味に傷付く。


 入れ替わる様にラミーナが抱き付いてきた、というか蛇の下半身で巻き付いてきたが、まぁ悪い気はしないので彼女のやりたいようにさせておく。

 他の者ならその締め付けだけで軽く死ねるが、俺の身体は頑丈に出来ているので問題なし。

 むしろその締め付けがちょっと気持ち良いぐらいだ。


 俺を殺そうとしてきた遠征組の面々は牢屋に直行。

 少し頭を冷やして貰おう。

 殺されなかったがだけマシだと思ってくれると嬉しい。


 ――と。

 そこで最長老が何やら叫び始めた。

 これで名実共に俺がこのコミュニティのトップ、何か異論がある者はおらぬか、と。


 異論の声は上がらなかった。

 異論は無かったが、質問があがった。


 発言者は、例の2人のうちの片割れ。

 遠征組でありながら日和見を決め込んでいた者達、その男の方。


 たぶんゴブリン。

 ゴブリンなのだが……やたら顔が整っているので少し自信がない。

 ゴブリンなのにイケメンという異常な存在だった。


 彼の質問は2つ。

 一つ目は『最長老、彼に賭けてました?』という質問。

 これは最長老に向けたものだった。


 最長老が笑う。

 笑い続ける。

 笑いが止まらないようだった。

 どうやら俺の知らない所で何やら賭けをしていた様だ。

 相変わらずだな。


 問題は、次の質問。

 それは俺に対しての質問だった。


 質問の内容は、ここでは触れないでおく。

 しかしその質問を聞いた瞬間、俺の顔が複雑な表情を浮かべてしまった事は間違いない。


 その俺の表情を見て、彼は何かを悟った様だった。

 彼の隣にいた雌ゴブリンは、最初ハテナマークを浮かべていたが、すぐに何かに気付いて驚きの表情へと変わっていた事も問題だ。


 出来ればこのままただの悪魔として生きていきたかったのだが。

 どうやら俺は、これまで考えないようにしていた事に対して正面から向き合う必要があるらしい。


 この問題は棚上げにしておく。

 この場で話し合うべき事でもないしな。

 2人もそのつもりの様で、それ以上は何も言ってこなかった。


 その後、捕らえてきた女性達は一度俺預かりという事で手出し厳禁と俺は宣言した。

 とはいえ、目の前に御馳走がぶら下がっているのにお預けというのは、流石に不平不満が募るだけである。

 それでなくともずっとお預け状態なのだから、いつ彼等が暴走するか分かったものじゃない。


 鬱憤を発散させるため、少し懐苦しいが食糧の備蓄を解放し、遠征組の帰還でも何でも良いから祝い事をでっちあげてとりあえず騒いどけと指示を出しておいた。

 あとは最長老に丸投げしておく。

 アクエリアンシャークという高級食材があるので、きっとそれで何とかなる筈。


 ここの所ずっと苦しんでいたのだろう、祭りと聞いてはしゃぎ始めた3種族を横目に、俺は捕らえられた女性達を家へと運んでいく。

 一人では無理なので、子供達にも手伝わせる。

 朱髪さんと空髪さんは先に家へと帰し、風呂を沸かすよう頼んだ。

 空髪さんは【清浄】と【火弾】の魔法を使えるので、たぶん大丈夫だろう。


 家に女性達を連れ込むと、まずは彼女達の拘束を解く。

 そこで気が付いたのだが、どうやら女性達の一人はあの《森の民(エルフ)》らしかった。


 耳が長く、しかも物凄く顔が整っている。

 美人という言葉では足りないぐらいの、怖いぐらいの美貌だった。

 そのエルフだけは汚されていなかったので、もしかしたら今日のメインディッシュとしてとっておかれていたのかもしれない。


 まぁそんな事はどうでもいい。


 次に、身なりを整えさせる為に、彼女達をスライム牧場(ヽヽヽヽヽヽ)へと連れて行った。

 そこでいったい何をするのか?

 もちろん、彼女達をスライム塗れにさせる為だ。


 暫く描写出来ない光景が展開された。


 スライム達が彼女達の身体に魔の手を伸ばし、全身をくまなくねぶっていく。

 当然、俺は眼を背け続けた。

 これは間違いなく18禁行為であったために。


 年頃の娘さん達がスライムの餌食になっている様子をじっくりと見る訳にはいかない。

 俺は腐っても紳士だ。

 途中、意識を取り戻した彼女達の口からピンクな声をあげはじめたが、これが一番手っ取り早い方法なので、俺は心を悪魔にして事が終わるまで待ち続けた。


 実は、《粘液生物調教士見習い(スライムテイマー)》という職業を得てから出来る様になった事がある。

 それは、名の如く、スライム達へと簡単な指示が出せる様になった事だ。


 元々、俺は何故かスライムに好かれる性質だったという理由もあるだろう。

 【スライムの加護】を持っている事も起因しているかもしれない。

 もしかしたらさっき手に入れたばかりの【統率】【指揮】も若干ながら効果を発揮していると思われる。


 スライムは、別名ダンジョンの掃除屋とも呼ばれていた。

 彼等は、あらゆるものを取り込んで熔解/吸収し、自らの栄養と変えていく。

 食べ残しであろうと、衣服だろうと、例え汚物であろうと、溶かして分解して自らの糧とする。


 但しそれには時間がかかる。

 彼等の酸はあまり強くない。

 自らの体内に取り込めない大きさの物には、その溶解力は更に弱くなる。


 つまり、人間大の物は容易には溶かす事は出来なかった。


 そこに加えて、俺はスライム達に彼女達の身体――髪や毛も含む――は絶対に攻撃しないように命令した。

 攻撃対象ではない物に対して、酸は更に弱くなる。


 後は待つだけ。


 暫くして、彼女達は身を汚していた汚物や垢といったモノをスライム達によって舐めとられ、身綺麗となった。

 衣服も溶かされたので、生まれたままの姿を曝す事になったが。

 恍惚とした表情を浮かべていたり、ツヤツヤの肌となっていたのは想定の内。

 俺でもあれは気持ち良いと思ってしまうものだからな。


 最後の締めくくりとして、子供達へ風呂に入れるよう指示する。

 流石に俺自身の手でいれるのはやめておいた。

 美人エルフまで混じっているので、直接触れてしまうと我慢出来そうにない。

 欲望に流されないよう、ずっとスキルや魔法の事を考えていた俺を褒めておく。


 後の事は子供達と朱髪さん空髪さんに任せて、俺とラミーナは祭り会場へと戻った。

 祭り会場に着くと、何やら皆すでに出来上がっていた。


 酒があるらしい。

 しかも大量に。

 大人も子供も全員が顔を赤くし、酔っぱらっていた。


 同じく酔っぱらっていたラミーナに進められるまま、俺もその酒を飲む。

 程々に味わいがあって滑らかな口当たりだった。

 甘口か。

 少々後味が悪かったが、アルコール度数はそれなりだろう。

 それはほぼ全員が酔っぱらっている事からして分かった。

 酔っぱらっていなかったのは、例の上位種雄ゴブリンぐらいか。


 久しぶりの酒だったので、ついつい飲み過ぎてしまった。

 前世では未成年だったのに?というのは御愛嬌だろう。

 俺は酒に強いので問題無い。

 いや、問題はあるか。


 それにしても。

 あれだけ食糧難に陥っていたというのに、何故に酒だけ大量にあるのか?


 不思議に思い、手近にいたバグベアへと質問する。

 この酒はいったいどうしたのか、と。


 聞いた瞬間、俺は思わず吹きだした。


 なんてものを飲んでいるんだ、こいつらは!

 やばい……まるまる一匹分ぐらいは飲んでしまったかも。


 もはや手遅れ。





























 スライム酒だった。










★スライム酒の作り方★


①スライムを適当な容器に入れます。


②スライムにたっぷりと栄養を与えて太らせます。


③スライムを適度に温め、分裂しようとしたところで沸騰させます。


④蒸気を集めて蒸留し、冷やします。


⑤作業④で出来たスライム水を、作業②の餌様に使います。


⑥作業②~⑤を繰り返します。


⑦分裂しなくなったら、核を取り除けば完成。


※核は適当な水に浸けていれば、新たなスライムへ成長します。


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