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デモンズラビリンス  作者: 漆之黒褐
第二章
40/73

2-25

 絶対の自信を持って放った奇襲攻撃だった。


 死と地獄が蔓延する世界で、あらゆる気配――地を踏む音、草を揺らす音、呼吸の音、風を遮る音、炎の炙られ焼ける肌の音、戦意、闘気、殺意、鬼気など――を極限まで薄め続け、世界と同一化し続ける、所謂〝絶〟の極致。

 その一瞬まで、俺という存在は確かにヤツの脳裏から完全に消えていた。


 必殺の攻撃を繰り出した時にも、予兆すらヤツには感じさせていない。

 視界に入っているにも関わらず、俺の存在を微塵も認識していなかった。


 死角から無音歩法で近づき、風よりも静かに宙を舞い標的へと迫る。

 ヤツが最後の標的と交差するタイミングを狙い、その心臓目掛けて必殺を叩き込む。


 まともな生物ならば、その必殺技――紫水流(しすいりゅう)隠殺技(おんさつぎ)影門(えいもん)絶牙(ぜつが)――を避けられなかっただろう。


 だが、本体とはまるで異なる感覚を有していたヤツの蛇尾は、まだ俺の知らないこの世界の神秘なる能力を発揮してか、世界と同化していた俺の気配を寸前で察知し、主たる本体へとその情報を伝えた。

 本来ならば機動を変える事の出来ない空中という場所で、しかし翼というカードを持っていたヤツが、瞬間的に膨大な力を発し爆ぜる様に飛び退く。

 その動きで世界が


 パンッ!


 と鳴き、同時に生じたエネルギーの傍流が俺の身を襲う。


 だがそれでも一瞬遅く、急所にこそ届かなかったが分厚い剛毛を突き破り、悪魔の左腕が血肉に沈む。

 心臓こそ掴めなかったが、傷付ける事が困難である筈の強靭な肉体は穿たれた。

 その一瞬後の強引な高速機動で傷口が広がり、鮮血が飛び散る。


 グルァァァァァァァァァッ!?


 胸肉をゴッソリと奪われたヤツが咆える。

 だが、その咆哮は怒りに染まっているのみ。

 痛恨の一撃を与えられたという認識は欠片も含まれていない。


 この程度のダメージは、ヤツにとっては掠り傷程度のものなのか。

 それを証明するかのように、傷口から流れ落ちる血が見る間に止まり、再生し始めた。


 先程までとは一転して、血走る双瞳。

 ダメージを受けたという怒りがヤツの中で増幅され、全身の筋肉が弾けんばかりに増大されていく。

 脳内麻薬が大量分泌され、身も心も戦闘モードへと移行。

 それに伴い、傷口の再生速度も劇的にあがる。


 何も無い空中に着地したヤツの感覚が研ぎ澄まされていくのが分かった。

 虫螻を狩る道楽者の思考が、獰猛なる肉食獣のそれへと切り替わっている。

 殺意が溢れ、その全てが俺へと叩き付けられる。


 それは実に心地好い殺気だった。


 久しく感じていなかった生。

 死の淵にあるという感覚。

 強敵を前にして、俺の心身が歓喜し震え上がる。


 先に動いたのは、果たしてどっちだったか。


 悪魔の俺がいた空間が、幻獣たるヤツの爪牙に薙ぎ払われ、大気が悲鳴をあげる。

 刹那の間に零距離へと至り、その刹那以前に反応した俺の手套(カウンター)が無防備な翼を斬り裂く。


 完全なる見切り。


 しかしその一瞬後には、強靭なる体躯が重力と慣性をほとんど無視して回転。

 凄まじ勢いを伴った爪牙が再び俺の身に迫り、防御した右腕に直撃する。


 ジャイアントスパロウ・ビーの尾針すらも容易く破砕する剛撃は、しかし俺の右腕を破壊するには至らなかった。

 まるで金属と金属が衝突したかの如き耳障りな高音の音色が響く。


 力と力のぶつかり合い。


 しかし俺の身体の方が耐えられず、呆気なく弾き飛ばされる。

 想像以上の威力だった。


 衝撃を地面に逃しつつ、威力の一部を返そうとしたのだが、圧倒的な力で押しきられた。

 敵の強さを上方修正し、戦術を組み直し、勝率を再計算する。


 焦土と化したエリアから突き抜け、背後にあった大樹にぶつかると同時に受け身を取る。

 間髪入れずその場から退避。


 その一瞬後に、大樹はヤツのタックルを受け、バキッと折れ飛ぶ。

 尋常ならざる理不尽の暴力。

 明らかにオーバーキルの力全てが、ただ俺を殺すために振るわれていた。


 右に左へと腕が振るわれ、そのたびに強風が巻き起こり、木々が千切れ飛んでいく。

 四足歩行から二足歩行へと変わり、俺の背丈の5倍もある巨体から振り降ろされる一撃必殺の雨霰を、高速で思考を巡らせつつ確実に回避していく。


 意外にも正確無比なその連撃は、一瞬でも立ち止まれば俺の身に確実な死を呼び込んでくる。

 頭上から迫る剛撃を躱すため横に飛び退くも、ヤツの思考は俺の一挙手一投足を正確にとらえており、すぐさま対応してくる始末。

 最初の奇襲攻撃以降ずっと、俺の攻撃ターンはやってこなかった。


 数秒で無数の木々が砕き倒され、退路の確保すら難しくなる。

 その数秒でヤツの胸の傷はほとんど塞がり、新しい皮膚の上に毛が生えていた。


 一撃が全て必殺、反応も予想以上に速く、そして厄介すぎる再生力。

 そんな化け物が、瞳を赤く染め上げ一心不乱に俺の命を狩り取ろうとしてくる。


 絶体絶命の窮地。

 にも関わらず、俺はいつの間にか口元に笑みを浮かべていた。


 ガァァァァァァァァッ!!


 それを嘲りととったヤツが、一層に力を込めて大薙ぎに腕を振るった。

 その一瞬の隙をつき、懐深くに飛び込み膝裏へと上段回し蹴り(ハイキック)――体格差がありすぎて中段(ミドル)にすらならない――を叩き込む。


 二足歩行に慣れていない獣の足は容易く膝が折れ、体勢が崩れる。

 落ちて来た顎へと向け、遠心力を乗せた天翔蹴。

 続けて旋風脚で腕を蹴り飛ばし、そのまま空中後ろ回し蹴りを頭部へと叩き込む。


 左腹を蹴り、迫り来た腕をサマーソルトキックで迎撃。

 更に腕に絡み付き腕十字固めの後、肘撃ちを叩き込み骨を砕く。

 砕き折った腕を捻り、合気術で体勢を崩し相手の自重で肩の骨を外す。

 更に腕を捻り、最後に腕の付け根に斬脚を放ち切断。


 ――■■■■さんのなんちゃって腕破壊術その4。

 ――その派生技、菫術(きんじゅつ)(禁術)・最源流技、破断(はだん)(かいな)


 実戦で使うのはこれが初めてだったが、予想以上に上手くいった。


 だが、ただの化け物ではないヤツの強靭な生命力は、腕をもぎ取られようが聊かも戦意に陰りは無く。

 苦痛の咆哮すらあげず、ヤツは健在の腕を振るってきた。

 腕一つを失ったというのに、それでもヤツにとっては取るに足らないダメージという訳か。


 戦利品の腕を盾に鋭爪を受ける。

 ただのモノと化した腕に爪が突き刺さり、血が飛沫く。

 その視界の中で、憤怒する獣が大きく口を広げた。


 咆哮……いや、違う!

 ヤツの口腔(こうくう)が一瞬で灼熱色に染まり、其れの兆しを見せる。


 背筋に戦慄が走った。

 これまでの観察から、この先何が起こるのかを察し、正面から緊急待避。

 その一瞬後。


 ゴゥッ、と吐き出された業火が、交差する2本の腕を巻き込み、その軌道上にあった全てを灰燼に帰す。


 俺の頭部ほどもある口腔から放たれた火焔弾が、木々を消し炭に変え、地面を削り取っていく。

 自らの腕さえも犠牲にして、炎は触れるモノ全てを一瞬にして焼き尽くしていく。


 轟々と燃える太陽は、そのまま数十メートルもの距離を高熱の炎渦で薙ぎ払い、森に少なくない被害を与えていった。

 その余波だけで、直撃を免れた木々は激しく燃え上がり、黒煙と紅炎をあげる。

 闇が落ちた世界を、赤く染め上げる。


 高熱によって炙られた地面の一部が融解。

 その無慈悲な暴力に巻き込まれた虫や草木は、跡形もなく焼滅。

 それは、これまで見てきたどの一撃よりも強烈だった。


 急激に温度が上昇した大気が肺を焼く。

 僅かにでも回避が遅れ炎の渦に巻き込まれていれば、間違いなくその部分はあらゆる抵抗を許さず消し炭にされるというのは分かっていたが、その認識を以てしても今のは威力が桁違い過ぎて冷や汗しか出てこない。


 あれほどの高熱を、いったいどうやって口の中で作り出し、そして火傷無しでいられるのか不思議でならなかった。

 それをほとんど溜め時間無しで放てるというのは、あまりに無茶苦茶すぎる技だろう。

 直撃すれば苦しみを感じる暇無く逝けるというのが唯一の救いか。


 肺を焼くと同時に、大量生成された一酸化炭素などの有毒物質で不可死のダメージが身体に蓄積されていく。

 その事にいち早く気付いた身体が、いつの間にか呼吸を停止。

 危うく窒息死しそうになった。


 …………ォォォォォォォォオオオオオオオオオオオッ!


 くだらない死因に頭の中で苦笑しながら、肺の中に残っていた全ての空気を使って咆哮をあげる。

 残念ながら火焔の弾は吐き出せないが、それまで抑えていた戦意を吐き出す。

 〝静〟の気から、〝動〟の気へと切り替える。


 グルゥゥァァアアアアアアアッ!


 その俺の気魄に呼応してか、ヤツも咆える。

 新しく生やした2本の腕で、地を低く疾走する俺を迎え撃つ。


 ヤツの振るうまだ毛の生えていない新腕の一撃と、俺が振るう俺の物ではない右腕が激しくぶつかり合う。

 比較する事すら烏滸がましい程の体格差がある者達が、真正面から衝突する。


 勝敗は、言うまでも無い。

 ――本来ならば。


 ヤツの新腕が、俺が放った一撃に耐えきれず、破砕する。

 その理解出来ない結末に、ヤツは驚きの感情を瞳に浮かべた。


 幾ら急増の腕とはいえ、その一撃は鉄すらも容易く砕く剛腕。

 だが、所詮はそれだけだ。

 人が長き時の間に培ってきた武技は、ただの剛撃など容易く越える。


 例えば水。

 あれほど柔らかなモノでも、超圧縮し打ち出せば岩をも砕くハンマーとなる。

 超高速で打ち出せば、鋼鉄をも切るカッターとなる。


 水でさえ、その扱い方で地上最強の物質へと変化する。

 その逆も然り。

 ただの水面に撃ち込まれた銃弾は3センチも潜らず真っ平らにひしゃげて跳ね返される。


 この身体は、自在に動く水の塊。

 水に可能な事は、水の塊であるこの身体にも可能。


 その可能を現実のモノとしたものが、武技〝理合〟。

 またの名を――紫水流活殺術、玄武鱗(げんぶりん)


 攻撃の威力を高めるのではなく、動の気で肉体を一瞬のみ極限まで活性化させ強化する技。

 ■■■■さんとの戦いにおいて、ただ撃ち負けない事を目的として習得した技の一つ。

 その真価は、相手の攻撃が強ければ強いほど発揮する。


 砕けた肉と骨と皮と血が飛び散り、再びヤツは腕の一つを失う。

 だが驚愕を浮かべた顔はすぐに憤怒の色へと戻り、復活していたもう片方の腕が斜めに振り降ろされる。

 その爪撃を脚撃で往なし、跳躍。


 再び紅蓮の炎がヤツの口腔に満たされ、地獄の業火が解き放たれる。


 爆散する大地。

 その上空に待避した俺の回転踵落としがヤツの頭部を強打し、その反動を利用して飛び越えヤツの体躯を爆風の盾とする。

 自ら吐いた轟炎で焼かれる気分は、さてどんなモノだろうか。


 二乗された怒りを瞳に灯した化け物が、探す素振りを一切見せず俺へと振り向く。

 視線だけであらゆる生物を殺してしまいそうなほどの迫力がそこにはあった。


 睨め付けてくる鋭い眼光は合計4つ。

 第三第四の瞳が――尾から伸びた蛇の瞳が常に俺の姿をとらえているのは分かっていたので、俺は驚く事も、ましてや怯む事も無い。


 ガァァァアアアアアアッ!

 ゴォォォオオオオオオッ!


 怒りの咆哮に咆哮を返し、睨め付ける鋭い眼光に眼光を返し、再び互いの距離が零へと帰る。

 俺が2割も距離を縮めない内に、ヤツは残りの距離を踏破する。


 猛獣の鋭牙が俺の身を喰らい殺そうと迫る。

 その歯牙に噛み付かれるよりも一瞬だけ早く身体をよじり回避。

 ガチンッというギロチン刃が鳴音が森の木霊した。


 噛み付き攻撃は回避したものの、その突進まで躱す事は叶わず。

 10トントラック並の衝突が俺の身に降りかかる。


 咄嗟に腕をクッション代わりにするも、その威力は予想通り受け流せるような楽なものではなく、アッサリと腕の骨が砕け散り、弾き飛ばされた俺の身は錐揉みしながら宙を舞った。

 その馬鹿げた威力で内臓に骨が突き刺さり、血が気道を逆流し、空中で血の雨を吐き散らす。


 その飛び散った鮮血の一部が空中で突然揮発。

 直感が危険を察知。

 大ダメージを受けたばかりなのに、どうやらヤツはそれでは満足しなかったらしい。

 無事であった両足を強引に振り回し回転軸を変え、その灼熱の猛威の軌道上から辛うじて待避する。


 一瞬後、眼前を真っ赤な炎が通り過ぎていった。


 一歩間違えば、俺は焼滅していた。

 俺をその巨躯で盛大に引いて尚、ヤツはそれで満足する事無く、身を翻して真紅の太陽で攻撃したのだ。


 だがそれは俺とて同じ事。

 致死にも劣らぬ大ダメージを受けた所で、敵が追撃の手を緩めてくれるなどとは思っていない。

 それはあまりにも甘すぎる考えだ。

 着地する瞬間を狙って更なる追撃を放ってきたヤツの突進を、血色に染まる視界の中で正確にその軌跡を読み取り、脚で力を受け流した。


 威力が威力だけに完全に受け流せる筈も無く、再び俺は宙を高速回転で錐揉みする。

 受け流した脚の骨が容易く砕かれた。


 が、今度は意図して飛んでいるため姿勢の制御は容易い。

 小さな火焔弾が無数に飛んで来る。

 その全てを空中で回避。


 無茶な空中機動をするたびに身体が悲鳴をあげて苦痛を脳へと伝えていく。

 身体のダメージは深刻。

 だが、それだけだ。

 耐えきれない程ではない。


 まるで壊れた人形のように十数メートル程の距離を飛びつつ炎の弾を回避した後、丸い焼滅の痕を幾つも残す大樹へと横向きに着地。

 弾かれるように横へと跳び、その先にある細木へ移動。

 その細木へ脚をかけると、細木はメキメキと鳴って大きく(しな)った。


 元に戻ろうとする細木の力を利用し、より高く太い木へと向けて弾かれるように移動。

 足首を引っ掛け大木の周りを旋回し隣の木へ。


 その一瞬後、ヤツの身体が先程方向転換に利用した大木を木っ端微塵に吹き飛ばした。


 再度、木を旋回軸に利用して方向転換。

 勢いそのままヤツの背中の先にある心臓へと向けて槍の如き脚突を放つ。


 脚槍の刺突は、しかしヤツの背中を浅く削るのみ。

 翼の一枚も削り取る事に成功し、その傷口から(おびただ)しい量の血がゴバッと飛沫いたが、驚異的な再生能力を持っているヤツにとっては十分無視出来るダメージだろう。

 バランスを失い身体を傾けながら落ちていくも、ヤツの瞳からは欠片も戦意は失われていなかった。


 空中に着地したヤツ目掛けて跳び、元の形を取り戻した右腕で追撃の一撃を放つ。

 ヤツはこの右腕が理外のモノだと見たのか、迎撃する事無く回避を選ぶ。


 だが、俺にとっても理外のモノである右腕がそれを許さない。

 ストレートに振り抜いた腕がゴムの様に伸び――ドゴンッ、という轟音と共にヤツの顔面を殴り飛ばした。


 …………。

 …………。


 一瞬の静寂が森に訪れる。

 頬に綺麗な一撃が入りヤツの身体を殴り飛ばしたのだが、俺にとってもヤツにとってもそれはさしたるダメージではなかった。

 しかし、流石にそれは想定していなかったので、殴った方も殴り飛ばされた方も一瞬呆けてしまったのだ。


 思い出した様にヤツが姿勢を取り戻し、大地に着地する。

 それに若干遅れて俺も着地。


 すぐに両者は再び互いへと向けて疾走する。

 お互いに大きな隙を生んでしまったあの瞬間は、綺麗サッパリ頭の中からは消し去った。

 但し、そういう事も起こるのだ、とだけ頭に入れておく。


 刻一刻として悪化していく環境。

 この近辺を取り巻いている自然破壊の元凶は、間違いなくヤツから繰り出される攻撃の数々だ。

 口炎はおろか、腕の一振りで大樹は折れ、大地は大きな爪痕を残す。


 それでも俺が倒れる事は無い。

 周囲一帯が地獄の炎で満たされ酸素が急激に消費されようとも、悪魔のこの身はそれを歯牙にもかけない。

 強力無比な一撃が入ろうとも、悪魔のこの身は動きを止める事無く俺の命令に従い続ける。

 俺は初めて、この悪魔という身体の理不尽さを知った。


 だが、所詮は理不尽に留まる程度。


 謎な方法で生命エネルギーを生み出していようとも。

 筋肉や骨を無視した理屈に合わない肉体構造をしていようとも。

 目の前にある強者が持つ圧倒的な膂力と、防御不能の口焔と、羨ましい程の再生力に比べると、それは些細なものでしかなかった。


 これは、勝てる戦いではない。

 実力差は歴然としている。

 万に一つも勝てる要素は見えてこない。


 しかし、その事が堪らなく嬉しかった。

 勝てない者へと挑むこの無謀さが、俺に生きているという実感を与えてくれる。


 ――さぁ、その圧倒的な力で俺を殺してくれ。

 完膚無きまでに殺し尽くしてくれ。

 この俺に敗北の味をまた(ヽヽ)教えてくれ。


 だが勿論、俺に死ぬ気などない。

 俺はその死に対し、全身全霊で抵抗させてもらう。


 だから御前も俺を失望させてくれるな。


 グルゥゥアアアアァァァアアアアアアアアアアアッ!

 ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!


 いつまでも殺せぬ俺という雑魚に、憤怒の咆哮をあげる幻獣の王。

 久方ぶりに味わう絶望的な力の差を前に、声高な笑声をあげる悪魔の子供。


 互いの望みを叶えるために――両者のどちらかが死ぬまで、この死闘は終わらない。




[リトちゃんはスキル【強精】を対象よりスティール]

[リトちゃんはスキル【強姦】を対象よりスティール]

[リトちゃんはスキル【大興奮】を対象よりスティール]

[リトちゃんはスキル【肥満体質】を対象よりスティール]

[リトちゃんはスキル【毒針一刺】を対象よりスティール]

[リトちゃんはスキル【蜂毒生成】を対象よりスティール]

[リトちゃんはスキル【蜂毒耐性】を対象よりスティール]

[リトちゃんはスキル【幻獣王の威圧】を対象よりスティール]

[リトちゃんはスキル【幻獣王の咆哮】を対象よりスティール]

[リトちゃんはスキル【幻獣王の突進撃】を対象よりスティール]

[リトちゃんはスキル【幻獣王の爪連撃】を対象よりスティール]

[リトちゃんはスキル【生命力/魔力変換】を対象よりスティール]

[リトちゃんはスキル【魔力/生命力変換】を対象よりスティール]

[リトちゃんはスキル【欠損再生】を対象よりスティール]

[リトちゃんはスキル【痛覚遮断】を対象よりスティール]

[リトちゃんはスキル【停滞思考】を対象よりスティール]

[リトちゃんはスキル【天涯孤独】を対象よりスティール]

[リトちゃんはスキル【南森王の資格】を対象よりスティール]







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