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デモンズラビリンス  作者: 漆之黒褐
第二章
37/73

2-22

◆第八週 三日目 水源日◆


 昨日はあんな事があったばかりなので、外へ狩りに出かける気は起きなかった。

 それ以前に雨だったので、今日は危険過ぎる。


 安全策を取って、今日は家でまったり過ごす。


 毒で亡くなった女性達から手に入れたスキルの中に【薬鑑定】というものがある。

 鑑定系のスキルは早い段階で手に入れたいと思っていた。

 しかしいざスキルを手に入れても、薬に対して詳しい知識が無ければ、手に入れた薬を正しく使う事が出来ない。

 場合によっては勿体ない事をしてしまう可能性もある。


 故に今日は、もう少し薬の知識について詳しくなろうと思った。

 昨日の件もあるし、回復系の手段は多い方が良いだろう。


 実はダンジョン内ではランダムで宝箱が発生する。

 宝箱発生条件は、恐らくだが『何処かで宝箱が空けられた』瞬間に、『周りに誰もいない何処か』に『法則性無し(ランダム)』で発生するのだと思われる。


 宝箱を空ける者は誰でも良いらしく、それがモンスターだろうが早い者勝ち。

 なので、宝箱に出会えるかどうかは純粋に運による。


 これまで俺は3回ほど宝箱に出会った。

 もちろんそれはトラップを除外する。


 手に入れたアイテムは、後からスキル【薬鑑定】で判明したものもあるが、順に


 ――〝【ロウ】ポイズンドリンク〟。

 ――〝【ロウ】パラライズカプセル〟。

 ――〝【ロウ】ライフポーション〟。


 といったものである。


 一番仲の良いコボ族の最長老に聞いた所、最初の〝ロウ〟という言葉はその薬の等級(グレード)を意味しており、〝ロウ〟はその中で最も劣悪な部類なのだとか。


 つまり俺が手に入れた薬は全て最下級の劣悪品。

 しかもそのうち2つは毒と麻痺という状態異常を発生させるもの。

 敵に対して使うのは当たり前だが、効力が低すぎるので恐らく役に立たないだろう。


 まぁ最上層で手に入ったアイテムだしな。

 そんなものだろう。

 特に〝【ロウ】パラライズカプセル〟は、宝箱の中に申し訳程度にちょこんとカプセル1錠が置いてあったので、滅茶苦茶寂しく感じたうえに危険ドラッグ感が半端なかった。

 一瞬、叩き潰してやろうかと思ったぐらいである。


 薬系のアイテムのグレードは9段階。

 一番下のグレードから順に【ロウ】【ノーマル】【ハイ】【エクス】と続き、それ以上は最長老も知らないらしい。

 それ以上のグレードは一般に出回る機会も少なく、当然ながら高額。

 このダンジョンで手に入るのは良くて【ノーマル】までなので、長老も【ハイ】以上は見た事がないらしかった。


 あと、その薬が何であるかを知るためには専用のスキルや魔法が必要であるため、一般的には色ラベルを付けた何かに入れて取引が行われているという。

 確かに見た目じゃ判別出来ないのでそれは当然だろう。

 〝【ロウ】ポイズンドリンク〟も、見た目にはただのドリンクだしな。

 ああ飲まなくて良かった。


 色のグレードは、順に赤、黄、青、緑と続く。

 取引の際には〝赤のライフポーション〟とか、略して〝赤ライポ〟とか呼ばれている。


 何でそんな事を知っているのかと最長老に聞くと、どうやら最長老は昔、遠征のついでに〝夜の街〟へと何度か繰り出した事があるらしかった。

 夜の街って……そこは普通に街と言えば良いだろうに。

 まぁ目的は聞くまでもなく何だったかハッキリしたので、それ以上は突っ込まない事にする。


 ちなみに最長老は3種族の言葉だけでなく、亜人や獣人達が使っている言語も喋れるらしい。

 試しにフォルとクズハの間で使っていた〝標準亜人言語〟で喋ってみると、突然のことで最長老は少し驚いたが、すぐに同じ言葉で返してきてくれた。

 うーむ、異世界は本当に謎だな。

 俺は言語が何であろうが、母国語でずっと喋っているのだが。

 きっとスキルが自動翻訳してくれているのだろう。


 【標準亜人言語】なんてスキルは持っていないとか、フォルとクズハは獣人なのに何で亜人の言葉を使っていたのか等、色々と釈然としないものがあるが、今は関係無いので置いておく。


 うむ、最長老の話はタメなった。

 これできっと俺も薬を作れる様になるだろう。

 何しろ俺は《調合士見習い》を持っているしな。


 早速、最長老に薬の素材になる薬草を幾つか分けてもらって薬を作ってみる。


 そこで発覚。

 薬草を鑑定できない。


 薬草は【道具鑑定】【薬鑑定】では鑑定出来ないのか……。

 名前とレシピさえ分かれば後は簡単だと思っていたのに、どうやらこの世界はそこまで甘くは無いらしい。


 仕方なく、草の形や特徴も教授してもらう。

 間違って毒薬を作ってしまっても困るしな。


 ――あぁ、完成品の薬なら回復薬だろうが毒薬だろうが【薬鑑定】で分かるのか。

 その事に気付いたのは、その日の夜の事だった。






◆第八週 四日目 星源日◆


 我が家の拡張作業も大方終わったので、そろそろ本格的に俺の村(ヽヽヽ)の改造作業を行おうと思う。

 何故なら、村の大広場は――武闘大会を行ったあの広場だ――このダンジョンに入ると必ず通る事になっているからだ。

 多少の分岐路はあるものの、その先は全て行き止まり。

 敵がダンジョンに入ってきたら、間違いなく村は戦果に包まれるだろう。


 普通の洞窟なら、外敵が入ってきた時点で総力戦になる。

 しかし、此処は普通の洞窟ではない。


 あまりに広大で知られる《宝瓶之迷宮》の一欠片。

 その拡張性は無限大。

 つまり、洞窟を上手に整備すれば、入口から入ってきた敵は村に寄る事無く奥の階層へと向かう事も不可能ではない。


 ここで問題となるのは、壁が無限大の幅を持っていることか。


 普通の洞窟ならば、単純に壁を掘っていけば迂回路を作れる。

 だがこのダンジョン内ではそれが出来ない。

 その代わり、一度迂回路を作っておけば、村は今まで通り無限大に拡張できる。

 更に付け加えるなら、将来的に巨大な都市となっても、初期の段階から都市拡張計画をしっかり練っておけば、街の端から端まであっと言う間に行き来する事も可能となる。


 ワープゾーンを都市の中に作りたい放題だ。

 そんな箱庭ゲーム、面白すぎるだろうが。


 ――というような将来構想を密かに妄想しつつ、掘削が得意なコボ族と労働力源であるゴブ族達を言葉巧みに説得。

 蟻のようにせっせと働かせる。


 この計画の犠牲となったバグ族は暫く野宿してもらう事になるが――最も集落が狭く、ダンジョンの入口から奥に向かう通路の間に位置していた――迂回路が完成した暁には、真っ先に彼等が住む居住区を作ると約束してあるので問題無い。

 元々彼等も現在の住処を非常に狭く感じていたらしい。

 ならばコボ族に依頼を出せば良いじゃないかと思う所なのだが。


 これまで3種族は別に仲が良い訳では無く、表面上は敵対関係にあった。

 いくらバグ族に財政的な余裕があったとしても、彼等の繁栄を後押しする拡張工事の依頼をコボ族が簡単に引き受ける訳がない。

 なので、俺のこの強権の行使は、バグ族にとって実は渡りに船だったとか。


 なるほどなるほど。

 つまり、俺は締め出しをしたバグ族に対して悪いと思わなくても良いわけだ。

 そういう事なら、バグ族にもせっせと働いてもらわないとな。

 丁度水源日も過ぎた事だし、ダンジョンの奥で食材の確保と、労働者達のための炊き出しをしてもらおうか。


 拒否権?


 ある訳がない。

 俺は悪魔だぞ?


 いやはや【支配の呪縛】【人鬼族統括】【集団行動】が揃うととっても便利だなと思う今日この頃である。







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