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デモンズラビリンス  作者: 漆之黒褐
第二章
23/73

2-8

 儂、コボルトの最長老ぉ。

 これでも二十と余年を生きておる、このコミュニティで一番長生きしとる爺ぃじゃてぇ。

 数ばかりおるゴブリンの爺ぃどもよりも、力が強いバグベアの爺ぃどもよりも、儂は長生きしておるぅ。


 そんな儂が一番楽しみにしとるのは、月に一度開催されるこの武闘大会ぃ。

 その中でも特に好きなのは、たまぁに決勝の舞台に放り込まれる哀れなる生け贄が無惨に死んでいく様じゃてぇ。

 滅多にない事じゃが、たまぁぁぁに亜人や獣人が迷宮に迷い込んできおるぅ。

 そいつらを捕まえて、身包みを剥いで放り込むんじゃぁ。

 そして殺されたそいつらの肉を皆でつまみながら、その月のリーダーを決める戦いを観戦するのが何よりの楽しみなんじゃぁ。


 じゃから、今月は本当に運が良いのぉ。

 今月は諦めておったのじゃが……まさか前日になって生け贄が現れるとは思っておらんかったぁ。

 しかも現れたのは3人じゃぁ。

 しっかり生かしておけば、来月も、またその次の月も楽しめるんじゃぁ。


 そんいやぁ、前にも3人同時に捕まえた事があったなぁ。

 あの時は結構な被害が出たんじゃが、ゴブリンどもが数に任せて突っ込んでった御陰で何とかなったんじゃったかなぁ?

 そのあとゴブリンどもは暫く使い物にならんかったが、その分よけぇに儂等かバグベアどもにリーダーが回ってきたからよぉ覚えておるぅ。

 たまぁにそういう事があるから、長生きしてみるもんよぉ。


 ちなみにぃ、儂等が行っておる武闘大会というのは、実は儂の発案で始まったものなんじゃぁ。

 いつまでも皆が啀み合って数が増えんかったからのぉ。

 好い加減疲れた儂は、彼奴等んとこ行ってちょっとばかし骨を折ったんよぉ。


 定期的に祭りを開催して、日々の鬱憤を晴らすと同時にその月のリーダーを決めんか、となぁ。


 儂は彼奴等の言葉も喋れたしのぉ。

 それにのぉ、その頃儂は自分の強さに自信があったんじゃぁ。


 あれからもう何年経ったんじゃろうのぉ。

 懐かしいのぉ。


 ……っとぉ。

 昔を懐かしんでおる間に、ようやく三部族のトップが出揃った様じゃぁ。

 今月も粒ぞろいじゃのぉ。

 皆強そうじゃぁ。

 残念なのは、先月この場で凌ぎを削った者達は、遠征に出ていて今はおらん事じゃのぉ。

 まぁ良いかぁ。

 こういう場合は、遠征から帰ってきおったら新旧で対決する事になっておるからのぉ。


 さぁて、今月は誰が勝つんじゃろうのぉ。

 速度に秀でた儂等コボルトの一族かぁ。

 力に優れ、自慢の防具に身を包むバグベアの一族かぁ。

 はたまた、久しぶりにゴブリンの一族から現れた麒麟児が勝利をもぎ取るのかぁ。

 本当に楽しみじゃぁ。


 おぉ、哀れな生け贄が出てきおったぁ。

 赤黒い肌じゃのぉ。

 いったい何の種族じゃぁ?

 でも小さいのぉ。

 あれじゃ喰う所が少ないのぉ。

 でも随分と活きが良さそうじゃぁ。


 あぁ、まずは賭けをせんとなぁ。

 儂はあまり賭け事は好きじゃないんじゃが、慧眼の儂が賭ける事で皆がより楽しめるよぉじゃからのぉ。

 儂が賭ける事でオッズが変わるんじゃよぉ。

 それで先に賭けておる者達が色んな顔を浮かべるんじゃぁ。


 今回は誰に賭けるかのぉ。

 無難なのは儂の種族じゃのぉ。

 それが一番、オッズへの影響が少ないんじゃぁ。

 勝負が見えん時なのか、それとも自信がある時なのか、皆は困った表情を浮かべるんじゃぁ。


 おやぁ?

 今回バグベアから出てくる輩は、最近特に力を付けてきたと言われておるあやつかぁ。

 まだ早いと思っておったのじゃが、そうかそうかぁ。

 精進しておったんじゃなぁ。

 これはもしかするともしかするかもなぁ。


 あれがゴブリンの麒麟児かぁ。

 なるほどのぉ、確かに麒麟児と言われるだけあってなかなかに良い身体をしておるぅ。

 力も速度もまだまだに見えるが、恐らく技術では誰も適わなんじゃろうのぉ。

 しかし他の者に勝てるかのぉ?

 この決勝だけは1対1じゃないからのぉ。

 じゃが、要注意じゃぁ。


 どうするかぁ。

 どれも甲乙付け難しじゃぁ。

 悩むのぉ。

 悩んだときは大穴じゃぁ。


 勝つ見込みのない者に賭けるのが一番じゃぁ。

 その方が楽しめるぅ。


 決めたぁ。

 あの生け贄の赤黒いヤツに儂は賭けるぅ。

 しかも今日は一点張りじゃぁ。

 超大穴になけなしの小遣い全部を賭けるぅ。


 ありゃぁ、何故か儂の勘がそう言っておるぅ。

 何故じゃぁ。

 分からんぅ。


 皆が驚いておるぅ。

 お金を捨てるのかと聞いてくるぅ。

 ついに耄碌したかと言っておるぅ。

 儂もそう思うと答えたら皆に笑われたぁ。

 儂も笑ったぁ。


 儂は馬鹿じゃぁ。

 じゃが勝負は時の運じゃぁ。

 万が一にもそういう事があるかも知れんぅ。


 そうこうしている間に試合が始まったようじゃのぉ。

 まずはいつも通り、誰が最初に生け贄と遊ぶかじゃぁ。

 ふむぅ。

 どうやらまずはバグベアの輩がアレと遊ぶようじゃのぉ。

 重たい鎧をガシャガシャと鳴らしながら悠々と近づいていきおるわぃ。


 って、あぁ?

 そういえば試合開始の合図を儂はまだ言っておらんぞぉ?

 (はや)りおってからにぃ。

 仕方ないのぉ。


 死合い(ヽヽヽ)開始じゃぁっ!




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