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デモンズラビリンス  作者: 漆之黒褐
第二章
20/73

2-5

インフルエンザに罹患してしまった……。ぐふっ

◆第五週 五日目 風源日◆


 うん、今日はちょっとじめじめっとした風が気持ち悪いな。

 それに風がせいでちょっと肌寒くも感じる。

 なるほど、これも源日の影響か。

 今日の散策&狩猟は、この風を追って行動してみた。


 最初、この風は例の天井に穴が開いた部屋の方からやってきていると思っていたのだが、どうも違うらしい。

 らしいというのは、風を頼りにし過ぎて地形の特徴を覚えるのを疎かにしてしまい、ちょっと迷子になってしまったからだ。

 いや、たぶん戻れるぞ?

 2人ともそんなに心配しないで欲しい。




[リトちゃんはスキル【集団行動】を対象よりスティール]

[リトちゃんはスキル【恐慌伝染】を対象よりスティール]

[リトちゃんはスキル【疫病早熟】を対象よりスティール]




 何だか地面や壁が乾いたものに変わってきたな~っと思っていたところ、敵集団に襲われた。


 その数、多すぎて不明。


 見た目から鼠の類だというのは分かったが、モンスターなのでやっぱりちょっとでかい。

 そんな彼奴等(きゃつら)が、分岐路で一方からチューチューと走って来た。


 ウォーラビットから手に入れた【威圧】と、レイククラブから手に入れた【シャキン!】、この2つのスキルを使ってみた。

 【威圧】によるちょっとしたプレッシャーと、意味不明の【シャキン!】によるほんの少しの驚き。

 いや、まさかこの2つを使ったら、鼠達がちょっと驚いただけでそれが集団全体に伝わり軽いパニック状態に陥るとは思わなかった。


 ただ、パニック状態に陥った鼠達を仕留めていくと、更にパニックは酷いものになり、鼠達の行動は全く予期出来ないものに代わってしまうという更に困った事態に。

 そのせいで思わぬダメージを受けてしまった。

 真正面から同じベクトルで向かってくるなら動きは読みやすいが、本人達もよく分かっていない方角に突然方向転換するので、味方同士で衝突し合って弾き跳んだりして物凄く読み辛い。

 それだけでなく、使い慣れていない【空間視】がある分、俺の頭の中に送られてくる膨大な情報によって思考がかき乱されてしまい処理が間に合わず、見えている筈の真正面からの突進すら回避に失敗してしまう始末。


 先にフォルとクズハを後方に下げておいて良かったと思う。

 防御を固めているフォルは兎も角、あの荒れ狂う鼠の群の中に身を置いていたらクズハは死んでいた可能性が高い。

 【疫病早熟】なんてヤバいスキルを持っていたしな。

 鼠なので疫病は友達の様なもの。

 危険すぎる。


 俺もたぶん『存在進化』していなかったらやばかった。

 いやほんと、一匹一匹は格下でも、数の暴力はやはり酷いと思う。

 戦いはやはり質より量だなと痛感させられた。


 あと、この戦闘中に手に入れたスキルを見ても、少しヤバイ気がする。


 【集団行動】は恐らく、集団で行動すると何らかのボーナスが付くのだろう。

 もしかしたら仲間もその恩恵を受けるかもしれない。

 あとたぶん、きっと多ければ多い程良い筈だ。


 問題は残りの2つ。


 【恐慌伝染】は鼠達を見ていて何となく分かった。

 言葉通り〝恐慌〟が〝伝染 〟するなら、これはパワーアップするスキルではなく、味方に対して悪い影響を及ぼす弱体化スキルだ。

 もし俺が恐慌状態に陥ったら、一緒に行動しているフォルとクズハもその感情が伝染して恐慌するという事である。

 その逆も然り。

 嫌なものを手に入れてしまった。

 封印しておこう。


 そして最も厄介なのが【疫病早熟】。

 疫病の運び手とも呼ばれる鼠が持っているスキルとしては随分と厄介な事この上ない。

 それを俺は手に入れてしまった。

 これは、俺にあまり出歩くなという神の忠告か?

 それとも早く死ねと?


 兎も角これで俺は疫病の被害者になりやすく、そして加害者にもなりやすくなった訳だ。

 早いところこのスキルに対抗できるスキルを手に入れなければと思う。

 という訳で封印。

 君の出番はまたいつか来ると思うので、それまで静かに眠っていてくれ。

 出番がない事を切に願う。


 そんなこんなで、なんとか窮地を乗り切った訳だが。

 流石にその鼠――デイジーマウスを食べる気にはなれなかった。

 まぁ当然だろう。

 もしかしたら疫病を持っているかもしれないしな。

 怖くて食べられない。


 死体は一箇所に集めてクズハの【狐火】で燃やした。

 放置したままだと腐敗して疫病の発生率が急激にあがるし。

 この洞窟に住んでいる他のモンスターが綺麗に片付けてくれるなどという期待は持たない。


 何故か洞窟内は綺麗だが、その理由を考えてはいけない。

 考えてしまったら、それと出会うフラグが立ってしまう。

 だから俺は絶対に考えない。


 ――うぞっ。


 !?






◆第五週 六日目 地源日◆


 昨日、地質が変わった付近を重点的に調べる。

 その結果、どうやら階層が変わったらしい事に気付いた。


 この《宝瓶之迷宮アクエリアス・ラビリンス》は、複数のダンジョンがあちこちで繋がりあっている特殊なダンジョンである。

 なので、地質が変わるとダンジョンが変わったという事になる。

 もちろん全てのダンジョンの地質が異なる訳ではない。

 それはあくまで判断材料の一つだろう。

 今回は運良くそのような場所に俺達は至ったという訳だ。


 《宝瓶之迷宮》のダンジョン階層は、分かっている部分だけで言えば第5階層まで。

 基本的にダンジョンからダンジョンに移動すると、階層数も増えるか減るかする。

 例えば先程まで俺達がいた階層が仮に第3階層とするなら、新しく足を踏み入れたこのダンジョンの階層は、第2階層か第4階層となる。


 階層は数字が小さくなればなるほど地上に近づく。

 第1階層の次は地上。

 つまりこの《宝瓶之迷宮》の出口となる。


 階層が変わるという事は、若干ながら出現するモンスターの種類も変わる。

 それを証明するかのように、幾つかは初めて見るモンスターだった。


 壁の一角に不自然な生え方をしていた、ちょっと切れ味の鋭い種を飛ばしてくる植物系モンスター、カッターシード。

 大型には違いないがラビリンスワームより幾分か小さいミミズの親戚、リトルウォーターワーム。

 出っ歯がとてもキュートだが戦闘力はウォーラビットにも引けを取らない、シャープトゥースラビット。


 あと、色が違うスライムもいたが観察放棄して即撤退。


 それ以外にもラビリンスピルツやモスビートル、レイククラブ、キラーフィッシュと言った見慣れたモンスターも現れたが、逆にそれ以外のモンスターとは遭遇しなかった。




[リトちゃんはスキル【投擲】を対象よりスティール]




 カミソリ刃みたいな種を飛ばすカッターシードは、安全圏内からクズハに【狐火】を飛ばしてもらい注意を惹き付けた後、頃合いを見計らって本体を壁から引きずり出す。

 予想通り壁の中に球根の様な丸い物体が埋まっており、その本体を踏み潰したら大人しくなった。

 ただ本体が死ぬと草全体が一瞬で枯れてしまい、倒した後で集めようと思っていた種も一緒に枯れてしまっていたのはちょっと残念。

 この種は使い捨てナイフの代わりに使えそうなのに。

 次に出会った時は種を撃ち尽くすまで待ってから仕留めようと思う。




[リトちゃんは魔法【水飛沫】を対象よりスティール]




 何故か出現時に水が飛び散るエフェクトを発生させていたミミズもどき。

 その登場シーンは、これまでに出会ったどのモンスターよりも格好良いものだった。

 なにそれ、ちょっと欲しい。

 という訳で、ちょっと面貸せや。


 あのエフェクトがいったい何であったのか、それはスティール結果により判明する。

 いや魔法かよ、と思わず心の中で突っ込んでしまったのは言うまでもない。

 ただそれ以上待っても他の魔法を使ってくる訳でもなかったため、これといって苦戦する訳でもなくあっさり撃破した。


 初めて魔法を手に入れたのだが、なんだかなぁ……。




[リトちゃんはスキル【特攻】を対象よりスティール]




 最近脱兎の如く逃げまくってくれていた兎の別種が現れた時には思わず過剰反応してしまい、全力で殺ってしまった。

 何かをさせる前に一瞬で間合いを詰め、必殺の突きで息の根を止める。

 即死だった。


 だが、一匹入れば十匹はいるという例のアレのように、すぐに同族を見つけたので今度はしっかり手加減して戦う。

 幸いにして同じ兎でもスタコラサッサと逃げる事はなく、向かってくる奴を一匹ずつさばいていくだけだった。

 単体の戦闘力だけで言えばウォーラビットと良い勝負。


 つまり雑魚。


 次々とやってくる兎達の相手はフォルとクズハに任せ、俺は後方にて毛皮の剥ぎ取りに精を出す。


 そんな感じで遭遇するモンスター達を屠ってレベル上げに興じていると、フォルとクズハから敵が弱い気がするという感想を聞く。

 初見の敵は兎も角、これまでも何度か戦ってきたモンスター達の強さが、今まで戦ってきた敵よりも手応えを感じないのだとか。

 それはもしかしたら昨日手に入れたばかりの【集団行動】の影響が早くも出てきたのかな、と思ったのだが、どうやら2人の意見は違うらしい。


 自分達が強くなったというより、敵の動きが稚拙になっていると。


 ふむ、それこそ【集団行動】の影響のような気がしないでもないが、まずは2人の意見を尊重して敵の動きに注視してみた。

 あ、やっぱり弱くなってる。

 武の道において2人よりも遙か先をいっている俺が言うのだから間違いない。


 3人の意見が一致したのだから、これは間違いない。

 というよりも、2択しかないのだから当たり前か。

 どうやら俺達は運良く上の階層に来たらしい。


 階層が変われば敵の強さも変わる。

 下の階層に行けば行くほど敵は強くなっていく。

 その逆で敵が弱くなったのだから、つまりそれは俺達が上の階層にいるということ。

 道理で入手できるスキルが少ない訳だ。

 納得。


 となれば、拠点をこちらに移すべきだろう。

 俺達の目標はこのダンジョンから出る事。

 住み着くかどうかは別として、まずは外の世界に俺は出たい。

 2人も外に出て街で住みたいと思っている。

 ならばより入口に近い場所に拠点を移した方が効率が良い。


 そんな訳で、早速拠点として使えそうな手頃な場所を探し始める。

 そしてこれまた運が良い事に、程なくして俺達は綺麗な水場のある部屋を見つけた。


 すぐに拠点へと戻り荷造りを始める。

 引っ越したばかりでまだあまり散らばっていなかったので、準備にはさほど時間がかからなかった。

 頑張って作った風呂までは持って行けない事はちょっと残念だったが、それはまた作ればいい。




[リトちゃんはスキル【暗視】を対象よりスティール]

[リトちゃんはスキル【吸血】を対象よりスティール]

[リトちゃんはスキル【闇の気持ち】を対象よりスティール]

[リトちゃんはスキル【蛇毒生成】を対象よりスティール]

[リトちゃんはスキル【蛇の眼】を対象よりスティール]

[リトちゃんはスキル【這い寄る】を対象よりスティール]

[リトちゃんはスキル【光好き】を対象よりスティール]

[リトちゃんは魔法【光喰】を対象よりスティール]




 引っ越し移動中に時間帯が夜になり敵の強さが増したが、構わず強軍。

 同階層ではナイトバットやナイトヴァイパー、引っ越し先の階層ではナイトスウォームなどの夜行型モンスターに初遭遇し少し肝を冷やした瞬間もあったが、無事に目的地まで辿り着く事が出来た。


 今まで夜は睡眠一択にしていたのだが、どうやら正解だったらしい。

 特にナイトヴァイパーは強く、最初の頃の俺では倒せたかどうか。

 どうやら夜になると難易度が跳ね上がる仕様はこの世界でも同じの様だ。


 目的地に辿り着いたらすぐに貝殻(ベッド)に入って寝た。

 いや、だから何で2人は俺のベッドに潜り込んでくるんだ?


 狭い……。



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